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【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


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275 俺の石

 さっそく交換条件を履行してもらうべく、俺はディールと共にポータルクリスタルの元へと向かうことになった。トーリ宅前にいた者も全員付いて来るようだ。そりゃあ気になるよね。



 程なくしてポータルクリスタルに到着した。残暑の頃は涼しげに感じた水晶の大木だったが、この寒々とした空の下では見ているだけで余計に寒さを感じてしまう。俺は思わず防寒具の襟元をぎゅっと寄せながら、ディールに誘導されるがままポータルクリスタルの正面に立たされた。


 ディールは俺の手を掴むと、もう片方の手をポータルクリスタルの幹に添えて何やら呪文を呟く。


「シュルト……ポルタ……デム……」


 しばらくそのまま呪文を聞いていると、それぞれディールが触れている箇所がポウッと光を帯びて、まるで同調しているかのように点滅を繰り返し、そして彼が呪文を止めると同時に光はフッと消えてしまった。


 それを確認したディールは俺とポータルクリスタルから手を離し、ポータルクリスタルを囲むように見学していたセリーヌやトーリたちに向かって声高らかに宣言する。


「登録はこれで完了した。これより子供はシュルトリアの名誉村民である!」


 両手を広げ仕事をやり終えた顔のディールと入れ替わる形で、俺はポータルクリスタルに近づく。


「ありがとうございます。それじゃあさっそくやりますね」


 するとディールは後ろに下がりながらも思案顔で顎に手を添えた。相変わらずイケメンなので、こういう仕草も様になるなあ。


「……ふむ。我らが秘宝を一日でも早く手に入れたいという子供の気持ちは分からぬでもない。しかしな、気持ちが焦るとマナの伝達率は著しく落ちるものなのだ。止めはせぬが、今日はうまくいかずに失敗することになるだろう……。だが気落ちすることなく、その経験を明日に活かすがいい」


 勝負だなんだと言いながらも、ディールは俺の心配をしているようだ。こういうところがあるから、俺はこの人のことを嫌いにはなれないんだよなあ……。でも今日はごめんねと心の中で先に謝っておく。


 俺はディールに頷いて見せると、一応アドバイス通りにリラックスを心がけることにした。二度、三度と深く、深く、深呼吸をして肩の力を抜き、余分な力が入っていないのを確認してからポータルクリスタルの幹に手を添える。


 そして体内の魔力を十分に練り込むと、俺の一番得意な属性――土属性のマナをポータルクリスタルに向かって流し込む。最初はゆっくりと……うん、どうやら問題なく俺のマナを受け入れているようだ。


 よし、それじゃあ一気にいこう。土属性のマナ……全開!


 滝から水が流れ落ちるようなイメージで大量のマナを注入する。瞬時にポータルクリスタルにマナが浸透するのを感じ、魔力供給の時には見たことないような現象が起こった。


 ポータルクリスタル全体が黄色に輝き始めたのだ。最初は土のような色だったが、徐々に明るさを増して輝き、まるで黄金の大木が光を放っているように見える。


「なっ……これは!?」


 ディールの呟きが聞こえるけれど、それよりも今はマナを注ぐことに集中しよう。俺がマナを注げば注ぐだけ、ポータルクリスタルがグングンとマナを吸い取っている。あまり気を散らしてはいられない。……なるほど、これが魔力供給ではなく直にマナを送る感覚か。


 大量の魔力の消費といえば共鳴石が思い当たるが、あちらは一定量のマナを吸われていくような感覚だった。それに対してこちらはマナを注いでいくと上限無しに、まるで乾いたスポンジが水を吸い込むかのようにマナが吸われていくのだ。



 そしてそのままマナを送り込んでいると、頭上に見える水晶の枝からにょきにょきとポータルストーンが生えてきているのが見えた。あれが俺のポータルストーンだろう。


 あのポータルストーンのある方向を意識して、更にマナを込める――


 ――ポトンッ


 ポータルクリスタルの黄金の輝きをキラキラと反射させながら、ポータルストーンは俺の目の前に落ちてきた。


「んなっ!?」

「あははは!」


 ディールの驚いた声とセリーヌの笑い声が周囲に響く。だけどこれで終わりじゃない……!


 俺は休むことなく、そのまま土属性のマナを注ぎ込み続ける。


 水晶の枝に再びポータルストーンが生えたのを確認した。そして同じようにポータルストーンに向けてマナを注ぎ込むと――


 突然、魔力の枯渇を感じた。さすがに調子に乗りすぎたかな、と少し後悔したところでポータルストーンはポトリと地面に落ちてくれた。俺の背後からディールの震えた声が届く。


「ふ、二つ目だと……」


 その声を聞きながら、俺はマナを注ぐのをゆっくりと止めた。よく分からないけど、きっと急ブレーキを掛けるのは身体に良くないだろう。それに合わせて黄金に輝いていたポータルクリスタルも徐々に光を失い、やがていつもの水晶の大木へと戻った。


 俺は二つのポータルストーンを拾い上げ、頭上に掲げる。光に照らすと黄色に輝いてとても綺麗だ。


 ……うん、どちらも土属性のマナを内包しているし、ほんの少しだけ土属性のマナを込めて反応を見ると、すぐ傍のポータルクリスタルとの繋がりを感じることも出来た。これは間違いなく精製に成功しているのだろう。


「――おっと」


 一歩踏み出したところで体がふらつく。さすがに一気に魔力が抜けると体調にも影響があるみたいだな。すると近くで見学していたニコラが駆け寄ってきた。


「お兄ちゃん、大丈夫~?」

『一個で十分な気がするんですけど、二個取る必要ってあります? そんなに欲張るからヘトヘトになってるんですよ』


『まぁついでだしね。はい、これあげる』


 俺は二つ目のポータルストーンをニコラにポンと手渡した。


『おそらくなんだけど、俺と似た魔力を持つお前なら、これを使えるんじゃないかな?』


 一瞬ポカンと口を開けたニコラだったが、すぐにポータルストーンに目を移すと軽くマナを通して確認を始めた。


『……そうですね、どうやら使えそうです。えっと……。ありがとうございます』


 ニコラはポータルストーンをポーチにしまい込むと、ぷいっと顔をそらし、近づいて来ていたセリーヌの腰に抱きついた。


「ふふっ、さすがに一度に二個も作るとまでは思わなかったわ。すごいわね~、マルク」


 セリーヌは俺に近づいてしゃがみ込むと頭をひと撫でし、きゅっと軽く抱きしめてくれた。相変わらずセリーヌの匂いは落ち着くし、柔らかくて暖かいなあ……。


 なんだか本格的に力の抜けた俺はその場にしゃがみ込むことにした。するとセリーヌは俺の耳元でそっと囁く。


「お疲れ様。後の事は私に任せてね」

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― 新着の感想 ―
[一言] お兄ちゃん優しい!
[良い点] 一瞬でポータルストーン作れるならすきなタイミングで里帰りできるね
[一言] ポータルクリスタル無理やり孕ませて連続出産させるなんて... マルク「へっへっへ。こいつ(魔力)が好きなんだろ?遠慮なく味わいな」 ポータルクリスタル「んほおおおお産まれりゅうううう」
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