表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

127/387

127 グラスウルフ

 E級ポーションの活躍で、ニコラの中の門番は忠実に職務を果たしたようだった。


 しばらくするとセリーヌやデリカも帰ってきたので、移動を再開することになった。本当は草原でお昼寝でもしたいところだが、ギルド依頼遂行中なので仕方ないね。



 一時間ほど馬車を進め、そろそろ遠くの方に山なんかも見え始めた頃、俺の空間感知に何かが引っかかった。馬を包囲しながら追走する形で何かが近づいてきている様だ。


「セリーヌ」

「ええ」


「これってなんだと思う?」


「そうね。魔素の反応があるから魔物なのは間違いないんだけど……。この辺りで草原に住む魔物と言えば、グラスウルフの可能性が高いわね」


「グラスウルフ?」


「草原に穴ボコを掘って、それをねぐらにしている狼系の魔物よ。集団で追い込むようにして襲ってくるから、一か所だけじゃなくて全体を見ながら警戒しないと駄目よ」


「前にラック兄ちゃんに聞いたコボルトと同じ様な動きなんだね」


「へえ、その時はどうしたの?」


「囲まれる前に全部遠くから倒したよ」


「あいつらは木々に潜みながら近づくから、言うほど簡単なことじゃないんだけど、あんたならやりかねないわね……」


「ニコラが索敵してくれたお陰だけどね」


「そういやニコラちゃんはそういうことが出来るんだったわね。ほんととんでもないちびっ子たち……と、そんなこと言ってる場合じゃなかったわ」


 セリーヌは頭を振り、俺に指示を与える。


「今回も近づく前にやっちゃいましょ。万が一馬が襲われちゃったら、こっちの移動手段が無くなるわ。このまま移動しながら、近づいてくる前に一気に倒すわよ」


 遠距離攻撃が確定したので、どうやらデリカの出番は無さそうだ。デリカもそれを察したのだろう。


「それじゃあ、このまま真っ直ぐ走らせたらいい?」


「ええ、急がせる必要はないわ。一定のスピードを保ってくれたほうが、こっちも当てやすいから」


「分かったわ」


 人がジョギングするくらいの速度を維持したまま馬車は進む。少し緊張したようなデリカの返事を受け、俺とセリーヌは馬車から周囲を見渡した。


 囲いがないタイプの荷台なので、見晴らしはとてもいい。まだ視界には入ってこないようだが……。


 ――見えた。


 右に六匹、左に五匹。灰色に茶色が混じったような毛色の犬型の魔物だ。大きさは結構デカい。遠目なので分かりにくいが二メートル近くはありそうだ。首をこちらに向けながら、伺うように少しづつ近づいてきている。


「やっぱりグラスウルフね。右側は私がやるわ」

「分かった」


 左側は俺担当らしい。少ない方を回してくれたことに密かに感謝する。


『ニコラ、一応感知漏れがないか調べておいてね』

『了解です』


 そう言ってる間に、セリーヌが魔法の(ワンド)を左手で掴んで縦に構えた。右手を矢を引くように動かしながら詠唱の鍵になる言葉を言い放つ。


炎の矢(ファイアアロー)


 セリーヌの目の前に現れた炎の矢は、すぐさまグラスウルフに向かって飛び去る。


「ギャンッ」


 一瞬で炎に包まれたグラスウルフは短く声を上げると、その場で転がるように倒れ込んだ。そしてセリーヌは続けて二射、三射と次々と当てていく。百発百中一撃必殺だなあ。すごい。


 ――おっと、見学している場合じゃなかった。俺は担当の五匹を見据え、ストーンバレットを念じる。ヌシのエーテルを獲得した影響だろう、今までよりも早い速度で弾丸が次々と作られていく。


 こちらも向こうも移動している上に目標まではまだまだ遠い。セリーヌみたいに上手く当てられる自信がなかったので、初心に立ち返りヘタな鉄砲でも数を撃とう。


 点ではなくショットガンさながら面で当てるように、縦三列横三列の弾丸の固まりを横並びに複数配置すると、声と共に一斉に発射した。


石弾(ストーンバレット)


 横長の長方形のように面になって浮かんでいた弾丸がグラスウルフに向かって飛んでいく。五匹全てを射程範囲に捉えたつもりだったが、当たったのは四匹。


「ギャウン!」


 即死はしていないようだが、ストーンバレットはグラスウルフの足なり胸なりを吹き飛ばした。とりあえずこれで馬車を追ってはこれないだろう。


 ストーンバレットを回避したのか、俺が外しただけなのか、残る一匹は仲間の惨状を見るや否や、単独で馬車に向かって走りだした。今までの探るような速度ではなく――


 ――なんだかすごいスピードでやってきてるんですけど!?


石弾(ストーンバレット)!」


 ドンッ!


 あまりの移動速度に驚いたが、真っ直ぐに駆けてきただけなので今度は当てやすかった。一撃でグラスウルフの頭と周辺の土を吹き飛ばし、グラスウルフは声を上げる間もなく絶命した。


 しかし気がつけば一瞬の間に随分と接近を許している。うへぇ、焦ったなあ……。


「ご苦労さま。どうせなら最初の一発目で全滅させたかったわね。突進してきたグラスウルフがもし二発目も避けていたら、一気にこちらに迫ってきてたかもしれないわよ」


 セリーヌの声に振り返る。どうやらさっさと終わって、俺の方を見学していたようだ。


「そうだね。思ったよりも全力疾走が速くてびっくりしたよ」


 さすが魔物である。前世の動物くらいのスピードを想定していて甘くみていた。


「魔物は見た目だけじゃ測れない強さがあるからね。常識に囚われては足をすくわれることにもつながるわ。色々と想定しながら行動することね」


「はーい」


「よしよし、それじゃあ素材回収にいきましょうか。私の方は丸焦げだけど、あんたのほうは売れそうよ」


 セリーヌが俺の頭を撫でながら、頭を無くしたグラスウルフを指差した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女
~そして俺は彼女専用の魔力供給おじさんとして、突如目覚めた時空魔法で地球と異世界を駆け巡る~』

タイトルクリックで飛べます! ぜひ読んでくださいませ~!

書籍発売中!「異世界をフリマスキルで生き延びます。~いいね☆を集めてお手軽スキルゲット~」もよろしくお願いします!

↓クリックで特集ページに飛びます。
i000000

「異世界で妹天使となにかする。」一巻二巻発売中!
Kindle Unlimitedでも読めますよ~。ぜひご覧になってください!
コミカライズ一巻発売中! ただいま「ニコニコ静画」にて連載中です!


↓クリックで二巻書報に飛びます。
i000000

i000000
↑クリックで一巻書報に飛びます。

Twitterはじめました。お気軽にフォローしてくださいませ。
https://twitter.com/fukami040

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ