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唐突な最後

さて話はゴブリン王の帰還のクエスト形式だ。

このクエストの肝は『ゴブリン砦の攻略とゴブリン王の相手を別々のパーティーで行える』という点だ。

小さなギルドが幾つも寄り集まって攻略してもいいし、大きなギルドが単一ギルドで攻略しても問題ないのだ。

ゴブリン砦の攻略にも報酬が出る為、中規模ギルドでも攻略できる便利さもあったりする。


さて、問題のゴブリン王であるが、他のレイドイベントとはかなり違っている。

なんとボスであるゴブリン王がランダムに選出されるようになっているのである。


ゴブリン王は、何種類かのパターンが存在し、それぞれ能力や戦い方が違っているのである。

例えば守護戦士の能力を持ち、HPこそ高いものの、攻撃力が低い為、弱体化を重ねることで簡単に倒せるゴブリン王。

例えば召還獣で戦うのだが、射程距離の長さを生かせずぶち倒されるゴブリン王。

例えばゴブリン王なのに暗殺者の能力を持ち、バラバラになったパーテイーを1人1人暗殺していくゴブリン王。

例えば回復魔法が得意な為、プレイヤーからのヘイトが以上に高くなり、MPを吸い尽くされてなぶり殺しにされるゴブリン王。

例えば味方が巻き込まれることも構わず範囲魔法を連発してくるゴブリン王。


もし96名全員で集まって攻略したとしよう。

相手が範囲魔法を連発するゴブリン王の場合、全員が一斉にダメージを受けてしまう。

逆にバラバラに行動する場合、暗殺者ゴブリンに一人一人殺されていくという状況になってしまう。

あるゴブリン王を攻略できる戦法が別のゴブリン王には無効というのはよくある事なのだ。


しかし逆を言えば、戦法を変えていけばどのチームにも攻略の可能性は残されていると言う事だ。

このあたりがゴブリン王の帰還の人気の秘密であった。


しかし、ゴブリン王はわりと力押しで倒せる相手なのである。

厄介な相手と言われる暗殺者タイプのゴブリン王も移動力低下バフを与え続ければ、ヒットアンドウェイができずに倒されることになる。

それ以外にも対策が必要なのだが、ゴブリン王はあまりリアクションスキルを持っていない。

猛攻を仕掛けていればいつかは倒されることになるのである。


そんなこんなで、<ゴブリン王の帰還>攻略は定期イベントとして、中堅クラスの冒険者のネタになっていたのであった。


猫まんまのギルドホール。

『玉三郎がいない?』

『そうなんだよ、いつもこの時間だったら来ていたのに………。』

いつもそこにいたリーダーの玉三郎がいなくなっていた。

それだけで、メンバー達は不安になり始めていた。

『きっと、パソコンが急に壊れて買い替えている最中なんだよ!!』


「……今日未明、××市のマンションで火事が起こり……。」

チャットをしながらラジオのニュースを聞いて過ごす。

「……死亡したのは○○○○さん………。」

………チャットを続ける。

「放火と言う報告もあり………。」

………まだまだチャットを続ける。

「……では次のニュースです。」


『……来ないなぁ。』

『どうしちまったんだ?』

それは歪みだった。常にネトゲの世界でしか出会っていなかった為に、彼の正体を誰も知らなかったのである。

信じたくはなかった、玉三郎の正体が○○○○だと言う事を。

きっとパソコンが壊れただけで、数日したら『すまなかったな』とやってくることを。

『………ゴブリン王の攻略はやめにしますかにゃ。』


次の日も、そのまた次の日も玉三郎は来なかった。

まとめ役がいなくなり、ギルド退会者が次々と現れた。

ギルド猫まんまが消えたのは何時なのか誰もわからない。

まとめ役がいなくなったときともいうし、最後のメンバーが抜けたときとも言われている。


『……にゃん太。俺もこのゲームやめるよ。玉三郎さんがいてくれたから俺はここまでやれたんだけど、流石にこれ以上は無理なんだ。』

『そうですかにゃ。』

一人去り二人去り……次々とメンバー達は去っていく。


『さみしくなったにゃ。』

もはや数名しか残っていないギルドホールで、にゃん太はそう呟いた。

『………一度本当に出会っていればよかったよな。』

ギルドマスターが来なくなったことによるギルド崩壊珍しい事でも何でもない。

ただ、ここまでゆっくりとした崩壊はそれこそ玉三郎への信頼だったのだろう。

『玉三郎はリアルで何かの事件に巻き込まれて死んだ。』

と言うのはそうでなければ玉三郎が<エルダー・テイル>を止めるはずがないという思いの裏返しだからだ。


リアルとネトゲこの二つの世界の付き合いについては、色々と問題視されているところである。

リアルでも会うべきだと意見がある一方で、リアルとネトゲを分けておきたいという意見もある。

双方に言い分があり、それらの問題についての根本的な解決法がないというのが問題である。


桁外れの廃人ともなると、『ギルドの為にリアルの仕事を止めろ』などと言う所もあるらしい。

『それなら、武器だけおいてギルドを止める。』みたいな反発があったり、このあたり色々とした葛藤があったのだがそれは割愛する。


幾多のギルドがバラバラになり新たなギルドが生まれ、そして歴史は流れていった。


そして、次のアップデートが始まった。

次々回ぐらいにシロエ達を登場させようかなと思います。

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