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「辺境領は中央と気候が違うため、生産される果物が微妙に味に違いがあります。私、マーガレットが辺境領の果物のおいしさについて説明させていただきます」
地毛とは違う色のかつらをかぶり、偽名を名乗るリリーが、辺境地産の食べ物をアピールしていました。
年に一度開かれる王国交流会。中央広場には各領地の出店がしのぎを削り、自領の特産品を多くの人に知ってもらうチャンスを逃すまいとしています。
一時的に作られた演説会場には、常に満員の観客がいて、制限時間十五分で自領の魅力を言葉で伝える大会が行われて、大人気イベントなのでした。
中央から追放された元聖女のリリーは、変装し、その大役をやりきったのでした。
王国交流会を取り仕切るのは、モリシア伯爵令嬢の班。モリシア伯爵令嬢をトップにして、王国の仕事をこなす伯爵令嬢達のグループ。毎年の運営経験の蓄積と、余裕を持った運営計画、的確に指示を出していくモリシア伯爵令嬢に、きっちりと仕事をこなす部下の伯爵令嬢達。トラブルも特に発生せず、順調に進んでいく。
そんな中、運営本部の仮設テントに、一人の少女がモリシア伯爵令嬢を訪ねてきた。
「お忙しいところにすみません。でも、どうしてもお願いしたいことがあります。私の姉も、モリシア様の手伝いを許していただけませんか?」
やってきた少女は、モリシア伯爵令嬢の部下のルサ伯爵令嬢の妹だった。
「私の姉は地味で、モリシア様に忘れられてこの運営に呼ばれなかったのも無理もないです。でも、姉にとってモリシア様は憧れの人で尊敬していて、今日モリシア様のお手伝いができるのを楽しみにしていて、でも、呼ばれなかったことで落ち込んでいて」
早口でまくし立てるルサ伯爵令嬢の妹を、なだめるモリシア伯爵令嬢。
「落ち着いて。ルサ様のことは忘れるはずがありません。いつも、書類仕事で助けてもらってます」
「では、やっぱり名門ではない家柄のせいですか?」
「何を言っているのです。あなたの家は積極的に王国にとって有益になる提言をし続けてくれてるじゃないですか。特に、あなたのおじいさまの提唱した、王国内の流通整備は、現在の基盤になっているほどです。いつも忙しいルサ様に、休みをとってもらっただけですよ」
「でも、毎年、新人はここの運営に参加させているはずですよね?」
「あー。そこらへんで気がつかれちゃいますね。わかりました。正直に言います。ルサ様に来られると恥ずかしいので、今日は休んでもらいました」
「やっぱり、姉のような地味な人間がそばにいたら、モリシア様の品位が落ちますよね」
「待って、待って。今、誤解したでしょう。ごめんなさい、誤解される言い回しだったわね。ルサ様がいると恥ずかしいと意味ではなくて、私が勝手に恥ずかしい感情を抱くだけです。説明が難しいですので、あなたにも参加してもらいましょう。夜の交流会に」
「夜の交流会?」
「はい。公式には、今やっている交流会だけですが、夜にも交流会があります。あっ。夜の交流会と言っても、いやらしい要素はないですよ。えっちなことはしないです。仮設演説場を解体する前に使用するには、夜しかやる時間がないだけの話で」
「は、はい。わかってます。わかってますとも。け、健全な夜の交流会ですよね」
「辺境領主のダイファン様は、まだ十四歳の子供でありながら、必死に領主に相応しい行動をしようとがんばっています。その魅力について、この私、リリーが説明させていただきます」
変装も追放された聖女の建前も脱ぎ捨て、リリーは演説会場で熱く語り始める。
昼と違い、観客達も熱気を隠さず、掛け声などがあがる。
「ダイファン様は、優しくて気弱な少年ですが、辺境領主として強くあらねばと殻をまとってます。普段、自分のことを私と言ってますが、ときおり僕と口にだしてしまい動揺してしまうところが、とても素敵です」
昼のようななるべく多くの観客に理解してもらいたいとの話し方ではなくなり、リリーは喋りたいことだけを喋る。だが、うけはこちらの方が格段にいい。
制限時間が来て、リリーの次に演説場に立ったのは王国騎士団の副団長。
「みなさんは観賞用の武器の存在を知ってますか?実際に戦いに使用する武器とは違い、壁などに飾り観賞して楽しむものです。実戦で使うものとそっくりの形のものも多いですが、今回私がおすすめしたいのは、現実に使うものとはかけ離れた造形の物達です。たとえば、宝石などを埋め込んだ短剣。強度を無視し、振り回しただけで折れてしまうが、置いて動かさなければ迫力満点の大剣。機能美とは正反対の、過剰な装飾をつけくわえていく美学。私は仕事において、無駄を省くことを徹底しなければなりません。その反動なのか、私はプライベートでは、これらの無駄を重ねていく美しさに惹かれるのです」
副団長の次は、魔法省のトップ。世間では、冷静沈着いつも無口で無表情の、氷の魔女で通っているが、年に一回はっちゃけることを知っている人は知っている。
「男の魅力はお尻です。お尻こそ!」
ルサ伯爵令嬢の妹は困惑する。
「これはいったい?」
「昼の交流会では、自領の生産品をアピールしてましたが、夜はひたすら自分の好きな物を語る会です。こっちの方がうけがいいですが、地方領地の活性化の目的から外れるので分けたのです。すみません、私の番が来たので、お話はあとで」
モリシア伯爵令嬢が、演説台に立つ。
「私の働いている部署に新人が入りました。その新人は責任感が強く、真面目で気遣いをしてくれます。私、モリシアが、この十五分の短い時間で、その新人のルサ伯爵令嬢の魅力を語れるだけ語り尽くさせていただきます」




