猫とロボ
柳田が起動スイッチを入れると翔太と優太が入っている2体のロボットがゆっくりと動き出す。
柳田:「よし、二体共上手く起動できたようだな」
翔太と優太はまだ完全に目が覚めていない様子で、寝ぼけたように辺りを見回している。
柳田:「翔太、優太、身体の具合はどうだ? 何か違和感とかは無いか?」
猫ロボットの身体に入っている翔太が声に気付いて柳田の方を向いた。
ブリキ君に入った優太の方はまだ寝ぼけている様子だった。
翔太:「あれ? 柳田? ここは? 俺、確か小さい玉の中に吸い込まれて
気持ち良くて寝ちゃってたと思ったんだけど・・・」
柳田:「ここは私の研究室だ
今、お前が入ったタマシーキャッチャーを別の身体に取付けたところだ
異常が無いか少し動いて確認してみてくれ」
柳田に言われて翔太が自分の身体を眺めてみる。
翔太:「!!! あれ? 俺・・・・猫になってる!? 何で?」
柳田:「いやー、丁度いい身体が無くてな
とりあえず以前作った猫のロボットに入れてみたんだ」
”ま、しょうがないよね” という表情で
柳田は頭を掻きながら説明する・・・しかし
翔太:「えぇーっ! 俺、猫のままなの!? 嘘だろ、やだよそんなの!」
翔太は全力で不満を訴える。
柳田:「いや・・・ほんの数日だから、すぐ新しい身体を作るから」
必死に宥めようとするが
翔太:「やだ! 何で猫型なの? せめて人型にしてよ!」
翔太からの予想以上に激しい反発を食らいたじろぐ柳田。
その様子を少し離れた位置から面白い物を見るような目で小道が見ている。
そして意地の悪い笑みを浮かべながら
小道:「ほーら、やっぱりこうなった」
小道は本当に楽しそうだ。
その隣で同じく様子を眺めているカリン。
カリン:「猫だって可愛くて良いのにねー」
カリンに悪意はない。
柳田:「・・・・・くっ」
勘兵衛と古橋は柳田と目を合わせようとしない。
すると騒ぎに気付いて、寝ぼけていた優太も目を覚ました。
優太:「うーん、どうしたの兄ちゃん大声で騒いで」
柳田に抗議していた翔太が、目覚めた優太の方に目を向ける。
翔太:「お、お前・・・・優太、なのか?」
優太:「うん、そうだよ何驚いてるの?
ってなんで猫から兄ちゃんの声が―――」
翔太:「いや、それよりお前自分の身体を見てみろ」
優太:「え? 身体?」
そう言って優太も自分の身体を眺めてみる。
優太:「・・・・あれ? 俺ロボットになってるー!」
柳田:「あ、あーそれはだな、 優太はロボットになりたがっていると
勘兵衛が言っていたんでな、前に作ったロボットの身体に
お前を入れてみたんだが・・・・どうだ、その身体は?」
勘兵衛:「おい、なぜそこで俺の名前を出すのだ」
なんとか責任の一端を勘兵衛に押し付けようと姑息な説明をする柳田。
その説明を聞いて、しげしげと自分の身体を観察する優太。
・・・・そして
優太:「んー、なんか思ってたのと違う、あんまりカッコ良くない」
古橋:「ですよねー」
柳田:「うるさい、お前は黙ってろ」
古橋:「・・・・・」
翔太が力なく項垂れて小さく言葉を吐き出す。
翔太:「でもお前はまだマシだよ優太、俺なんて猫だからな・・・」
そう言われて優太が改めて翔太の方に目を向ける。
優太:「ホントに兄ちゃん猫になっちゃったんだ・・・何で?
兄ちゃん猫になりたかったの?」
翔太:「そんなわけないだろ! 気付いたらこうなってたんだよ
柳田に違うのに替えてくれって言っても
この身体しかないって言うし・・・
新しい身体が出来るまではこの姿でいないといけないんだって」
優太:「じゃあ俺もしばらくはこの姿なの?
なんか動くとギシギシ音がして落ち着かないんだけど・・・」
柳田:「二人共ホントにすまん、すぐ使える身体がそれしか無くてな
急ピッチで新しい身体を用意するからしばらくはそれで我慢してくれ」
翔太:「嫌だって言ってもどうにもならないんでしょ」
諦めたように翔太が言う。
柳田:「まぁ、そうだな・・・・」
翔太:「じゃあ、仕方ないよね、その代わりできるだけ早く
新しい身体を作ってよね」
柳田:「そうだな頑張るからな、お前達の意思も確認せずに
勝手なことをしてすまなかったな」
翔太:「もういいよ、俺もちょっと怒り過ぎたし・・・」
柳田:「優太もごめんな」
優太:「うん、でも俺はそんなにこの身体嫌じゃないよ」
柳田:「そうなのか? さっきはカッコ悪くて嫌だみたいに言っていただろ?」
優太:「確かにあんまりカッコ良くないけどさ、それでも一応ロボットだし」
柳田:「そうか、優太はホントにロボットが好きなんだな」
優太:「うん!」
何とか二人に機嫌を直してもらえて安堵する柳田・・・そこへ
小道:「なんじゃ、もう一件落着かの?
もう少し楽しめると思ったのに残念じゃ」
意地の悪い笑みのまま小道が近付いてくる。
小道:「しかし、やっぱりゴネられたのぅ
最初から素直に説明しておけば良かったものを」
柳田:「・・・もう良いだろ、何とか納得してもらえたんだから」
小道:「そうじゃの、くくくく」
一層意地悪く笑う小道。
柳田:「ホント、いい性格してるなお前」
柳田:「いやいやそれほどでも」
二人のやり取りを見て、今まで猫になったことに気を取られ
周りが見えていなかった翔太が小道に気付いた。
翔太:「あれ? 小道? 何でここにいるの?」
小道:「なにやら面白そうな予感がしての
お前達に渡した札を使って来てみたんじゃ」
翔太:「そうなの? あれって俺達の方からしか
呼べないのかと思ってたけど違ったのか」
小道:「そうじゃな、我の方からも好きな時に行き来出来るぞ」
翔太:「じゃあ、俺達もいつでも遊園地に行けるのか?」
小道:「実体が無ければ我が許可した者なら自由に往来できるんじゃが
実体のある者は我と一緒でないと無理じゃな」
翔太:「そうか、じゃあ今の俺達だと無理なのか・・・」
柳田:「おい、ちょっと待て、その話からすると小道と一緒なら
私達も一瞬であの遊園地まで移動できるかのように聞こえるんだが?」
小道:「そうじゃな、ここに居る者達くらいなら全員運べるな」
衝撃的なことをさも当然のように答える小道に対して
驚愕の表情を浮かべる柳田。
柳田:「うそだろ・・・・お前、何でもありだな」
小道:「お褒めに預かり光栄じゃ」
古橋:「それなら、あの悪霊がまた来たら、すぐ先輩に対処してもらえますね
いやぁ、助かるなぁ」
柳田:「お前は黙ってろって言っただろ」
古橋:「・・・はい、すみません」
小道:「今日は翔太と優太に渡した札を使って来たが
二人が外出していてもここへ来られるように
直接この部屋に我の紋を刻んでおこうと思うんじゃがどうかの?」
柳田:「紋を刻むって、一応ここは賃貸物件なんでな
壁や床を彫ったり傷つけたりされるのは困るんだが」
小道:「そんなことはせんよ、人の目には見えない
我の紋を記しておくだけじゃ」
そう言って懐から一本の筆を取り出すと、小道は壁に向かって何かを描き始めた。
虹色の墨で図形のようなものを描いているが、すぐに消えてしまいどんな図柄なのかまでは確認できない。
柳田:「本当に人の目には見えないんだな
霊感の強い私でも全く見えないぞ
勘兵衛、お前は見えるか?」
勘兵衛:「ああ、確かに何かの紋章のような絵が見えるな
中心には文字も書かれているようだが
達筆過ぎて俺には読めん」
小道:「これでよし、紋を刻んだからの、あとは我がお主等に許可を出せば
我と一緒にさっきのお化け屋敷まで一瞬で移動出来るぞ」
柳田:「そ、そうか、さらっととんでもないことを言ってるが
確かに問題が起こったとき現場にすぐ駆け付けられるのは有難いな」
(ん? 有難いのかな? 出来れば私は
これ以上この件には関わりたくないんだが・・・)
小道:「そうじゃろう、そうじゃろう
では十分楽しんだのでな、我はそろそろ帰るとするかの
翔太と優太の新しい身体が完成した頃にまた来るでの
ではさらばじゃ」
そう言って小道は紋を刻んだばかりの壁の中に消えて行った。
古橋:「なんか今日一日でいろんなことが起こり過ぎて
全く付いて行けてないんですけど・・・」
柳田:「心配するな、私もだ」




