極上のプレゼントはあなたのために
日が暮れ、銀座の街が暗くなり始めた頃。
佐々木國則は店の前に立ち、OPENの札をCLOSEに裏返した。
「すみません、佐々木さん」
背後から声がした。振り返ると、茶色いロングコートの男と、黒い帽子を深くかぶった女が立っていた。男の顔に見覚えがあり、佐々木は記憶をたどる。
「あぁ、えーと東雲様ですね」
数か月前に来店した、モデルのような男だった。
「はい。完成した靴を取りに来たんですが、日を改めた方が宜しいですか?」
東雲は相変わらず端正な顔つきをしていたが、以前より鋭い目をしていた。
「いえ、大丈夫ですよ。連絡先が繋がらなくて困っていたので良かったです。どうぞ中へ」
佐々木は扉を開けて案内した。
「お連れ様もどうぞ」
黒い帽子の女に声をかけると、東雲が代わりに答えた。
「あぁ、彼女は人と話すのが苦手でして。外にいたいようです。どうか気を悪くしないでください」
女は小さく会釈をしたが、声は出さなかった。
「そうですか、靴をお持ちしますので、こちらへどうぞ」
佐々木は椅子を指さし、東雲を座らせた。
――昴は店を見渡し、胸を躍らせていた。
「お持ち致しました、こちらになります」
佐々木は靴の入った袋を差し出した。
「確か、ご友人にお渡しされるんでしたよね?」
「えぇ。喜んでくれますかね」
東雲は白い歯を見せて笑った。
「自分のために選んでくれたっていう気持ちが嬉しいんですよ」
佐々木も笑顔で返す。
「そうですか」
東雲は左手で靴を受け取った。
「このプレゼントを渡す、“友達”の話をしても?」
「えぇ、是非」
「知り合ったきっかけは...そう、互いの“芸術”が交じり合ったから」
「ほう」
面白い言い方をするな、と佐々木は思った。
「名は確か...」
東雲は考えるふりをしてから、佐々木をまっすぐ見た。
「佐々木國則」
はっきりとした口調だった。
「はい...?」
意味が分からず、佐々木は東雲を見つめた。
東雲の瞳は凍るように冷たかった。
「これは、私からあなたへのプレゼントです。佐々木國則さん...」
東雲は高ぶる声を抑えるように、ゆっくりとそう言った。右ポケットから銃を取り出し、佐々木に銃口を向けた。
「このままだと死にますが、私に命乞いでもしますか?」
東雲はひどくこの状況を楽しんでいた。
佐々木が声を出そうとした瞬間―
彼はいつの間にか地面に倒れていた。
遠くで聞こえる男の高笑いも、意識が薄れるにつれ遠ざかっていった。




