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転生者なんて負け組だ  作者: 荒野旅人
第三章 ヴァラキア編

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転生者の権利

「ダンカン、そなたは転生者の権利について知っているか?」

俺達は魔王様との会合が終わった後、半神レネの私室に集まった。

と言っても、ンダギ、ブロウは体がなまると言って練兵場に行ってしまい、フレッドも弓の練習がしたいと二人について行った。

毎日、弓を引かないと感覚が鈍るらしい。

エミィはブラドに住む親戚のもとに顔を出してくると言って行ってしまい、俺とソニアの他はヴィーラ、アラン、ディアリンだけだ。

そんな中、半神レネが開口一番に発した質問は俺には意味が分からなかった。

「転生者の権利?なんでしょうか?」

「そうか。知らぬか…そなたはやはりただの転生者ではないのかもしれぬな。」

『転生者の権利』だって?

聞いたこともないぞ?

俺は転生者なんてただの負け組で、何か特別な権利があるなんて思ってもみなかった。

「ジャン王は知っておったがな。」


そうだ。

ジャン王も転生者だった。

あの古城址でノルデル伯に教えられた。

娘であるソニアでさえ、それまで知らなかったことだ。


「ジャン王によると転生した際に『転生者の権利』のことを知ったとのことだ。後から誰かに教えられるのではない。転生した時には知っていたと。」

俺は知らないぞ?

「そなたが転生した際には知らされなかったのか?」

だから知らない。

俺は前の世界で死に、気付いたらこの世界で生まれていた。

その間の記憶なんてない。

何の予備知識もないまま、こっちの世界で生まれた。

転生したと気付いた時は驚くばかりで、何もかもわからない状態だったんだ。

「恐らく転生者なら転生の際に必ず知らされることだと思われるのだが…少なくとも私はこれまで数人の転生者と話したことがあるが皆、知っておった。それでもそなたは知らぬのだな?」

何度聞かれても知らないものは知らない。

俺の周りには俺以外に転生者なんていなかった。

転生者ってのは本当に珍しいんだ。

だから他の転生者から話を聞いたこともない。

「知りません。」

『転生者の権利』ってなんだよ?

話しぶりからして半神レネは知っているようだ。

「その『転生者の権利』とはどのようなものなのですか?」

「再度、転生できるという権利だ。」

「なんですって?」

「転生者はこの世界で死ぬと再び元の世界で人生をやり直せるというものだ。」

「そんなことができるのですか?」

「ジャン王に聞いた話では彼も前世は悔い多き人生だったそうだ。だからこの世界で自分を鍛えなおして、元の世界に戻って人生をやり直す際、次こそはうまくやって見せると言っておられた。」

なんだって?

もう一度、前の世界で人生をやり直せるだと?

「それも前世と同じ人生を望むところからやり直せるとも聞いた。」

そんな便利なことができるのか?

俺は今まで思い出したくなかった前の人生のことを考えた。

いつからやり直す?

今なら、あの時こうすれば良かったと思えることが数多くある。

前世の死に際、自分の人生を振り返り、何度思ったことか…

こんなの問題集を解く前に回答を渡されるようなものだ。

どう考えたって次はうまくいくに決まっているじゃないか。

あの最低の人生をやり直せるんだ。

誰だって、人生に多少は悔いがある筈だ。

それを都合の良い時に戻って、やり直せると聞いたら嬉しいだろ?


俺はこちらに転生して、今度の人生こそうまくやろうと努力して、空回りして、故郷を失った。

でも、今、俺は知った。

人生はもう一度やり直せる!

しかも、前の人生で!

有頂天と言うのはこういうことを言うんだろう。

俺はまさに有頂天だった。

前の世界の人生を自分の好きなようにやり直せる!


俺はこの時、周りのことも忘れて、人生をどうやり直すかばかりを考えて、隣でソニアがどんな顔をしているかなんて気づきもしなかった。

そのくらい、半神レネに聞かされた『転生者の権利』に夢中だったんだ。


「レネ様?」

ソニアの声は低く暗かった。

俺はその声にふと我に返った。

「先程、魔王様はお父様のことを恩恵(ギフト)たり得なかったと仰られたわ。どういう意味なの?」

思えば、ソニアも複雑だ。

幼い頃に逃げてきたソニアを引き取り、保護し、育てたのはこの半神レネだ。

だから普段はレネのことを『お父様』と呼ぶ。

しかし、本当の父親ジャン王の話をするときはややこしくないように『レネ様』と呼ぶんだ。

ソニアがジャン王のことを話す時は、本当の家族を皆殺しにされた幼い時の記憶に触れざるを得ない。

それはソニアにとって辛いことに違いない。


「ジャン王はメルコル様のある願いを断られた。」

「ある願い?それは何?」

「メルコル様は『転生者の権利』を譲ってくれとジャン王に頼んだのだ。」

「?」

『転生者の権利』を譲るってどういうことだ?

「レネ様、それはどういうこと?」

「転生すると言うことは即ちこちらの世界で一度死ぬと言うことだ。つまり『転生者の権利』とは死ぬことができる権利とも言える。」

おかしな理屈に聞こえるが、確かに死ななければ転生はできないな。

「メルコル様は神性の大半を奪われたと言っても、不死身だ。しかし、『転生者の権利』を譲り受ければ、死ぬことができる。メルコル様はご自分が死ぬことで召喚者共を永遠にこの世界から追い払おうとお考えだったのだ。」

「お父様はそれを断ったの。」

「然り。そして、その代案として提案してきたのが封印だ。」


魔王様の封印にはそんな経緯があったのか!


俺はかなり後々まで後悔したんだが、この時は自分の人生やり直しのことで頭がいっぱいで、すぐ隣にいるソニアのことを全く考えていなかった。

だから、彼女の気持ちを推し量るなんてこともできていなかった。

そして、今、俺がどんな立場に置かれているかについても…

半神レネは言ってくれたんだけどな。

「そなたが『転生者の権利』について教えられなかったのであれば、それこそ天啓かもしれぬ。あとはそなた次第と言うところか…」

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