停滞する人間
「・・・・・そっか」
と康太は短く返事をした。
「だから、私はあなたが憎い。璃子と恋人になって、私との時間を邪魔したあなたが嫌い。それに、あなたに近い立場にいるというだけで去年までは色々あったのよ」
そう、憎いがこいつは顔立ちは整っている方なのだ。だから女子から人気があった。だから近い立場の人間は疎まれた。私は当然、璃子もまた被害者だ。
「嫌味を言われることは沢山あった。暴力こそなかったけど、陰湿な嫌がらせだって受けたわ。あなたがいたせいで」
こいつのことなんて知らない。どうだって良かった。それでも周りは私と璃子をこいつとセットで考えたのだ。
中には男子から言われたこともある。
お前ら2人であいつと付き合ってんの?と。
そんなクズみたいな言葉に璃子が傷つくこともあった。私たちは支え合ってあの時期を耐えたのだ。
やり返せばそれを取り沙汰される。耐えるしか方法がなかった。
「ごめん」
と頭を下げると康太は行ってしまった。最後のそれはなにに対する『ごめん』なのかは分からない。もしかしたら、ただ私から悪意を向けられて反射的に出た言葉だったのかもしれない。
本当に、なんであんなやつが。璃子の恋人であることを誇ればよかった。より成長しようとすれば良かった。
だがアイツは何もしなかった。
私が望む立場を手に入れたのに、そこにあぐらをかいて立ち止まる姿に苛立ちを覚えた。
だから、私は奥野康太という人間が嫌いなのだ。何もしない。ふわふわと地に足をつけない、。停滞するだけの人間。
康太が去り暫くのあいだ立ちつくした私はそっとドアを閉めた。




