冴島という男
「大和、スタメンで良かったな!永野もおめでとう」
冨田がすぐに話しかけてくる。
「いやいや怖ぇよ……特に伊田さん、副キャプテンなのに俺で良いのかよ……」
永野が弱気な発言をする。
「何言ってんだよ。お前はどんどん伸びてるし、俺は不思議には思わねえよ」
冨田が励ます。確かに永野は身長と走力があり、何より練習に熱心だ。サプライズではあったが、不思議とは言えないと俺も思う。
「それより冴島さんだろ、どうなってんだ」
「冴島さんは知ってる風だったけどな」
俺が尋ね冨田が答える。
「まあ、なんとなく想像は出来る。直接冴島さんに聞いて来いよ」
冨田に言われ、試合の準備を2人に任せて冴島の元へ向かう。
「……冴島さん、なんでPFなんですか」
「おう、大和。そりゃあ監督とコーチが決めたからだろ」
冴島は目を逸らしながら言う。そんな答えでは納得出来ない。
「じゃあなんで、PFになるの知ってたんすか」
冴島は黙る。少し上見て、考えてから話し出す。
「監督に俺から言ったんだ。PFで使ってくれって。佐倉さんや大内さんが引退してインサイドは明らかに弱くなった。だから俺がインサイドまでカバーする」
冴島は俺の目を見ながらはっきりと言った。
「……逃げた訳じゃ、ないんすね」
「逃げる?俺が逃げるような性格だと思ったか?」
「いや、思えないっす」
冴島はいつだって逃げない。それはプレイスタイルにも現れている。常にリングにアタックを続けるのが冴島だ。もうもやもやは吹っ切れた。冴島に一礼して試合の準備に戻る。




