迷い
「何がだ?」
意を決して聞いてみたが、思わぬ応えが帰ってきた。俺は言葉を失う。
「冴島さんいつもより口数が少ないっていうか、なんか元気ないですよ」
冨田が追撃。冴島は反対方向を見て黙る。
「実はな……」
冴島はゆっくり、うつむき気味に話し出す。
「アンダー18の代表候補合宿に誘われたんだ」
「え!」
冨田が驚く。当然、俺も山里も。
「凄いじゃないですか!いつからですか?」
冨田は興奮気味に尋ねる。
「いや、断ったんだ」
先程とは違う驚きをする3人。
「どういう事ですか」
冨田が少し怖い顔をする。
「冴島さんなら代表でもスタメン狙えるでしょ。意味わかんないです」
冨田は怒っているようだった。
「俺は負けたくないんだ。自分も、チームも」
冴島が話し出す。
「誰よりも上手くなりたい、けどそれはチームをないがしろにしてまで果たしたい事じゃないんだ。俺はこのチームでどこまでだって行きたい。キャプテンをやる以上チームを離れる訳にはいかない」
冨田は言い返す事が出来ない。冴島が言っているのは正論だ。
「……逃げたりした訳じゃないんなら、良いと思います」
俺は思った事をつぶやく。
「でも、それで元気なくなってんのは意味わかんないです。迷ってんですか?」
冴島はまたうつむく。
「……あぁ。これが正しかったのか、間違ってるのか、それはやってみないとわからないからな。いや、結果が出てもわからないかもな」




