前哨戦
そして迎えた土曜日の練習試合。岐阜県の近場の高校へ乗り込み、挨拶、着替えを済ましていつも通りのアップをする。しかし、1部の選手に緊張が走る。特にSG、センター志望の選手だ。スタメン3人は決まっているが、2人はまるで予想出来ない。この状況で落ち着けるやつは少ないだろう。
「集合!」
北村コーチが大声で選手を呼ぶ。
「順番はBチーム、女子、Aチームだ。各自そのつもりで準備しろ」
Aチームは最後とりあえず少しだけ落ち着き、深呼吸する。
「緊張してんのか?ははっ、大丈夫だって」
冨田が俺に話しかける。緊張を解してくれようとしているのだろう。
「まずはBチーム、そんで山里さん応援しようぜ」
「そうだな」
まずはBチームの試合を観戦する。相手の海津南高校は昨季県ベスト8に入っているが人数が少ない。Aチームが12人、Bチームは18人と30人ちょうど。2、3年生中心のこちらのBチームが試合を優位に進める。前半は結局1年生は出場なし。後半から1年生だけでやるみたいだ。
「これは追い上げられそうだな」
冨田が呟く。お互いBチームだが、流石に1年生だけというのは戦力差が出るだろう。しかも1年生から3人Aチームに選ばれているのだ。
予想通り試合は相手チームのペースで進む。5分で追いつかれ、10分で10点差つけられる。
「ディフェンスは頑張ってるけどオフェンスがなー。攻め手がない」
4Qは結局2、3年生も出場し、4点差でBチームは敗れた。
続いて女子バスの試合。山里は14番をつけていた。1年生では1番若い番号だ。
「山里さんファイトー」
冨田が声をかけると山里は手を振り応える。
「お前も手を振れよ」
冨田に言われしぶしぶ俺も小さく手を振る。山里は笑顔で返した。自分の顔が赤くなった気がした。
試合が始まり、序盤は接戦。6分経ったところで山里が呼ばれる。山里は出るなりポストプレイ、ドライブ、更にはディフェンスでスティールを決め、一気に流れを掴む。
「すげーな」
山里は明らかに上手い。俺達は驚いていた。
結局山里はそのまま最後まで出場し、16得点と大活躍で試合も12点差で勝利した。