心の実力
「今日の試合、いきなりスタメンに抜擢されて実力を発揮した冨田くん。SG起用して貰えずに不貞腐れたプレイしか出来なかった大和くん。どっちが心の力が強いと思う?」
「それは……」
「大会で勝つためには安定した活躍が必要なの。今日の大和くんみたいに起用法1つで精彩を欠くようでは、実力不足なの!」
何なんだこの女は。俺がなぜ説教されなきゃいけない。なぜ実力不足と言われなければならない。なぜ、なぜ、なぜ……。
「大和、悪かったとは思ってる、思ってるけど、山里さんの言う通りだ。お前にはムラがありすぎる」
冨田にまで言われてしまった。俺はどうしたら良いかわからず下を向く。
「大和、ちょっとついてこい。山里さんも一緒に来てくれる?」
冨田に言われ、2人で冨田の後を歩く。数分歩くとそこには大きな公園。その中にはフェンスに囲まれたバスケのハーフコートがあった。
「俺は毎晩、練習終わりにここに寄ってる。毎日、スリー100本成功、ミドル100本成功、フリースロー連続10本成功するまで帰らない」
山里が驚く。あれだけ上手い冨田がそこまで影で努力していたなんて、想像も出来なかった。
「俺は背が低い。だからって訳じゃないけど自分に自信がないんだ。プレイヤーとして、求められたら何だってやる、常にそう思ってるよ」
俺とは逆だった。俺は自分はSGをやるという強い意志を持ってやってきた。その意志が試合の邪魔をしたのは言うまでもない。
「だから、なんて言うか……」
「わかった。もう、わかった」
冨田の言葉を遮る。
「俺は、間違ってた……」
ただの八つ当たりだったんだ。
俺は積極的にボールを欲しがるタイプだ。だけどSG起用じゃない事にがっかりし、不貞腐れて、言われてからしか動かなかった。それでは良いシュートは打てないし、ディフェンスも崩れない。自業自得、なるべくしてなった結果だった。
「2人とも、すまん。俺は……」
「いいよ!」
山里は笑っていた。
「気にすんな」
冨田も笑顔だ。これが心の力なのだろうか。この2人には一生かかっても追いつける気がしない。




