魂の邂逅
薄く光を通す様にと柔らかく垂らされた天蓋。
清潔なシーツに肌触りのいいナイトウェア。
大人が何人も横に寝れるぐらい広いベッド。
それが私の手の届く世界のすべて。
白色で統一された世界はとても狭かったけれど、見ていた世界はとても広かった。
目を閉じれば私と全く違う色彩の私が、私が生きる世界と全く違う世界で過ごしていた。
私が耳にする言葉とは違う言葉を使い、見慣れない文字を使っている魔力のない世界。
彼女は私と全く違う人格だけれど、彼女は間違いなく私自身。
同じ魂の所有者。
なぜ同じ魂を持つ筈の彼女を見れるのかはわからないが、今も密やかな繋がりが在ると感じる彼女が見せてくれる世界と時折流れてくる感情のおかげで世界に色がある事や感情の機微を知り、何より彼女の目を通して私も色々な物に興味を持つことが出来た。
しかし、現実世界の私は広いと言えどもベッドから満足に起き上がる事も出来ない身体だと沈んだ思考で世界を眺めていると、いつも自由気ままに動いていた彼女の視線が不意に私へと向けられた。
今まで合うことが無かった視線に驚けば、彼女も驚いた様に黒い瞳を丸くしてこちらを見、暫し時が経った後ににっこりと笑って口を動かす。
言葉は分からなかったが、想いは直接頭に響いた。
---- 大丈夫、熱の原因はこの記憶だからもう起きられるよ。
理解できる言葉として初めて伝わった感情に驚くと共に言われた内容にも益々驚けば、少し苦笑気味の彼女が両手の平を合わせて頭をぺこりと下げると、直ぐに顔を上げてまた笑顔を見せると手を振った。
---- じゃぁね次の私。やりたいことしたい事、きっと全部できるよ!元気でね!
また聞こえた声に唖然としていれば、彼女が手を振るごとに段々遠ざかって行っていることに気付いた私は、とっさに一言だけ返す。
それに今度は彼女が驚いた様に目を丸くするのを見て伝わったと安堵すれば、彼女は消える瞬間まで笑顔を返してくれていた。
それが彼女と最初で最後の邂逅。




