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プロスト  作者: ガル
第八部
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第二章



「フォリオさんの処刑・・・!?」

 響は愕然と目を見開いた。隣にいるウィリアムは完全な無表情だし、真正面のサガも落ち着き払っている。

 響は机の上に身を乗り出すと、慌てて言った。

「ちょっと待ってください!どうしてですか?なんでそんな」

「響」

 混乱した響を、サガが冷めた口調で遮った。

「トランドという国は消滅する。王族は国の象徴だ。生かしておくわけにはいかない」

「でも・・・でも、」

 響はぎゅっと服の裾を握った。サガの言いたいことは分かる。ティティンの民だってそれを望むだろう。でも、だめだ。

「処刑なんてだめです。だって、だってカリルさんがいないのに」

「あいつのために皇子を生かせと?話にならんな。もともとこういう結末があることは、事前にカリルにも話してあった。皇子も納得している。諦めろ」

 信じられない言葉に、響はサガを凝視した。

「納得って、フォリオさんがですか?」

「そうだ」

「処刑を、受け入れたってことですか?」

「ああ」

 淡々と答えられ、一瞬で頭に血が上った。

「なんですか、それは!サガさんもサガさんですが、フォリオさんもフォリオさんですよ!なんでそんなに簡単に諦めちゃうんですか!?」

「皇子は諦めたのではなく、わきまえているだけだ。王族としての義務をな」

「そんなのただの逃げじゃないですか!死んでいい理由になりません」

「響、やめろ」

 それまで黙っていたウィリアムが、ようやく口を開いた。響は震える息をのみこんで、自分の主を見た。

「ウィリアムさん・・・」

「サガの言うことはもっともだ。政に私情をいれたら、それこそトランドの二の舞になる」

「私情なんて」

「入れてないって言えるか?もしもあの皇子が全く会ったこともない人間でも、同じように殺すなって言えるのか?」

「言えます」

「じゃあクライス王が生きていたとして、同じように殺すな、罪を償わせろと、そう言えるんだな?」

「それは・・・」

 響は言葉を詰まらせ、答えられなかった自分に驚いた。

 目元を歪めた響に、ウィリアムは穏やかに告げた。

「これは避けて通れない、ある種のケジメなんだ。それくらい分かるだろ?響」

「っ、分かりますよ、それくらい!何ですかウィリアムさんのバカ!カリルさんに嫌われたって、ぼくは知りませんからね!バカ!」

「おい、響」

 呆れ顔のウィリアムとサガに舌を出すと、響は猛然と部屋を飛び出した。鳥の群を追い越して、無我夢中で飛んでいく。

 本当はどうするのが正しいかなんて分かっていた。トランドという国は負け、滅ぶのだ。

 その王族の処刑が、終戦のための区切りとして重要なことだということも。ティティンの民のほとんどがそれを望んでいるということも、嫌というほど分かっていた。けれど。

 けれど。

「・・・」

 響は空中で立ち止まり、じっと空をにらみあげた。



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