表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プロスト  作者: ガル
第三部
20/65

第二章

 その不穏な情報が城にもたらされたのは、フォリオが遠征から戻ってすぐだった。

 着替える間もなく父王に呼び出されたフォリオは、同じ部屋にレイアがいるのを見て妙に思ったが、話を聞いて得心がいった。

「内乱、ですか?」

 フォリオは眉をひそめて聞き返す。クライスは椅子にふんぞりかえったまま、うなずいた。

「そうだ。クールの内部で反乱分子が暴動を起こしたらしい。今までも小さなものはいくつかあったようだが、今度のは規模が違う」

 クライスは青ざめたまま動かないレイアを一瞥し、

「クール軍から正式に軍の援助の要請があった」

 と説明した。

 トランドとクールは同盟国なのだから、それは当然なのだが・・・。

「クールの軍隊をもってしても抑えられない、ということですか?」

「もともとあそこの軍隊は、我が国との戦争で疲弊していたからな。当然といえば当然の話だ」

「しかし、民衆が反乱を起こすには武器が必要です。入手経路は判明しているのですか?」

「これは定かではないが・・・セイオンから流れたという話もある」

 セイオンの名前に、フォリオは眉をひそめた。ティティンの同盟国だ。もちろんトランドとは敵対している。

 それが事実なら、セイオンが反乱を煽ったということになる。とても野放しにはできない状況だった。

 ずっと黙っていたレイアがおずおずと口を開いた。

「・・・あの」

「なんだ?」

「反乱軍・・・民の要求は何か分かっているんでしょうか?」

 にやりとクライスは意地悪げな笑みを浮かべた。

「簡潔に言えば現政府の廃止だな。現政府はトランドに依存し、金をばらまいている、というのが奴らの訴えだそうだぞ?」

 レイアは絶句した。クライスは低く笑う。

「まぁ遠からず当たってはいるがな。奴らは何か勘違いしているらしい。己等が敗者だということも忘れ、結構なことだ」

「・・・っ」

 うつむいたレイアを見やり、フォリオは声を低めた。

「父上、言葉が過ぎます」

「事実だろうが。まぁいい。そういうわけだ、フォリオ。賊どもの鎮圧にクールに向かえ」

「・・・・・・分かりました」

 短い間考え、フォリオはうなずいた。例え状況がどうだろうと、同盟国であるクールを見捨てることは出来ない。

 それに現政府が討たれれば、クールはそのまま敵側へとひるがえる可能性の方が高いのだ。

 そのときレイアが口を開いた。

「・・・わたしも、行ってもいいですか?」

「姫?」

「クールはわたしの国です。こいつに」慌てて言い直す「皇子に任せてほうっておくわけにはいきません」

 強い目で言い切ったレイアに、クライスはふむ、と面白そうにうなずいた。

「・・・いいだろう、レイアがいるとなれば奴らも手を出しづらいだろうしな。フォリオ、いいな?」

「しかし、危険ではありませんか」

「レイアには紅がおる。危ないというのならおまえが守れ。分かったな?」

 フォリオはしばらく考え込んでいたが、やがて表情を消したまま、はい、と承諾した。






「出発は明朝です。身の回りを世話させる女官を選んでおいてもらえますか?姫の支度はその者がしますので」

 事務的に告げて行こうとしたフォリオを、慌ててレイアが呼び止めた。

「ちょ、ちょっと」

「何ですか?」

「・・・何か言うことないわけ?」

 フォリオは困惑した顔で「ないですが」と答えた。

「嘘。わたしが行くの、本当は反対なんでしょ?」

「反対・・・というか、賛成はできませんね。どう考えても危ないと思います」

「自分の身ぐらい自分で守れるわよ。紅だっているんだし」

「それはそうですが・・・」

 フォリオは小さく息をついた。それを見たら、なんだか無性にムカッとした。

 そんなについてきてほしくないってこと?

「あんたね・・・」

 文句を言ってやろうとしたとき、廊下の奥からシルバが足早にやってきた。

「シルバ」

「フォリオさま。少しよろしいですか?遠征する軍のことですが・・・」

「ああ、それはやっておくよ。それよりシルバ、今回はおれはいいから、姫に同伴してくれ」

 シルバはちらっとレイアを見た。その視線に思わず構えてしまう。

「分かりました」

「では、姫。失礼します」

 軽く頭を下げると、フォリオはさっさと行ってしまった。引き止めようとしていた自分の手に気づき、レイアは慌ててそれを引っ込めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ