いつものように目覚めたらここは何処だ??
エルフ族の少女グラティアは、いつものようにルミノース王国の中央都市マグヌスの集合住宅の一室のベッドで目覚める……
と、思ったらなんか違う??
◯登場人物
グラティア(慈愛):エルフ族の女性、256歳。ルミノース国生まれ、ルミノース育ち。精霊魔法を使える。
くろくま:人族の男性、25歳。日本生まれ、日本育ち。平凡なサラリーマン。
私はいつものように目覚めた。
私が間借りしている集合住宅の一室のベッドで……ん? 何か違うな。
「むにゃむにゃ……そんなにカズノコ食べ過ぎたら痛風になるでぇ……むにゃむにゃ」
誰だコイツ。そして、カズノコとはなんだ?
異国の人族のような黒髪の男。歳は三十には満たないくらいだろうか。
部屋を見渡すと、私とこの人族が寝ているベッドと、木製の小さな机に何やら得体のしれない魔道具やら紙が置かれている。外が見える窓には大きめの硝子がはめ込まれており、その窓の上に、何やら細長い箱型の魔道具が出張っていた。
それにしてもコイツは誰だろう。そしてここは……?
と、私が思っていると、その人族が目覚めたようだ。
「え。え……? えっ!? えぇ〜〜〜〜!!!」
ええ、ええ、ウルサイやつだな。
「よくやく目覚めたか。ここは何処だ? マグヌスではないようだが……」
「マグヌス……グラちゃん!!? なんで??」
いや、名も顔も知らぬコイツにその呼び方をされる覚えはないぞ。しかも許可もしていない。
「何故その呼び方を知っているかは知らんが、私の名はグラティアという。ルミノース王国で生まれ、ルミノースで育った。見ればわかると思うが、エルフ族だ。お前は人族のようだがルミノース人ではないようだが……?」
なんだかびっくりした顔のままの人族だが、なんとなく察したような顔をしている。
「あ……僕はくろくまです。ちなみにここは日本という国です。というか、グラちゃんがなんでここにいるんです??」
それは私が聞きたい。というか、その呼び方は許可していない。
「何故……と聞かれても知らんが、何かの力が働いて召喚されたようなものなのかもしれないな……ここは日本と言う国なのだな」
「あ、はい。ルミノース王国ではないですよ……てか、びっくりなんやけど……現実世界にグラちゃんが……あっ! 今日仕事やん!」
何やら慌てているくろくま。現実世界……何やらルミノース王国とは違う世界ということなのかな?
「お前も仕事をしているのか。どうでもいいが腹が空いたんだが」
「えぇ……あ、いつも通勤途中に牛丼屋さんで食べてるんやけど、一緒に行きます? 着替えたり準備するんで少し待ってて」
マグヌスのように街の中に職場はないのだろうか。まぁこの世界にはこの世界の暮らしがあるようだから、多くは聞くまい。
「わかった。では、なるべく早く準備してくれ」
くろくまがじっと私を見てくる。なんだ。
「いや……あの、着替えたいんですけど……」
「人族の裸なぞ気にせんから、早く着替えろ」
「あはは……グラちゃんらしいですね……てか、僕が創ったキャラなんやけどな〜」
よくわからんことを言っている。くろくまはぶつぶつ言いながら部屋の壁面にある収納の扉を開け、半袖の白い服に、仕立てのよい貴族のような格好に着替えていた。
「なんだ、くろくまは貴族なのか? 全くそんな雰囲気はないが」
「いや、もうごくごく普通の平民ですよ〜。あ、この服装はスーツですね。言われてみれば貴族が着ていた服に近いのかも。普段はジーパンにTシャツなんで」
なんかよくわからない言葉も出てきたが、仕事の時は貴族みたいに気取った格好をするのが、日本という国の習慣なのかな。
◇ ◇ ◇
服を着替えたあと、くろくまは棒みたいなものを口に突っ込んでしゃかしゃかしたり、何やら怪しげな音をする手のひらサイズの魔道具を顔の顎あたりに押し当てて、髭を剃り、そのあと顔を洗っていた。
「お待たせしました。グラちゃん、行きましょうか」
なんだか気取った様子のくろくまの後に続いて、その住居を出る。
すぐ外ではなくて、通路を進むと二つの扉が並んでおり、扉の横に上と下の矢印が書いてあるボタンがあった。その下のボタンをくろくまは押す。
「あ、これはエレベーターって言うんですよ。ここマンションの十二階なんで階段で降りるの大変だから」
扉が自動的に開き、中に入ると、数字の書いたボタンがたくさん並んでいる。くろくまの世界は魔道具のオンパレードだな。たくさんあるボタンの1のボタンを押すと、扉が閉まり、小さな部屋が動き出した。
「なんだかややこしい魔道具だな。私はいつ食事にありつけるのだ?」
「あ〜、少し歩いて電車に乗って。十分くらいしたらいつも行ってる牛丼屋さんに着くんで、もう少し我慢してくださいね」
まぁいい。扉が開き、建物の外に出た。
くろくまの住むマンションという建物はなかなかに大きかった。マグヌスの領主の屋敷より断然広いな。
それに、電車という乗り物のある場所に辿り着くまでも、なんだかたくさんの大きな屋敷や、赤と緑に輝く街灯。あとなかなかの速度で道を走る鋼の馬車……正確に言うと馬は繋がれていなかったが、くろくまは自動車と言っていたが、そんな乗り物がたくさん走っていた。
あれに乗って、人族は戦いに赴くのだろうか。
「グラちゃん、お待たせ。駅に着きましたよ〜」
くろくまが渡してきた、紙の切れ端を機械に差し入れ、くぐり抜けた先には、巨大な鋼鉄の怪物が横たわっていた……
「おい、今からコイツと戦うのか?」




