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月並みなモノ 月並みとかじゃないモノ!








俺は死んでない。そんなことなんも無かった。はず。

トラックにも撥ねられていない。

ただ部屋で寝ててトラックに撥ねられるやつは……まずまずいない。

よくよく道の曲がり角に家があって暴走トラックに突っ込まれる、とか言うことが無ければ。ないよ。めったに。

一応安宿だが、鉄筋コンクリートの二階だ。

だった…………はず、だった。

で!ナニ? これはナニ?!

思わずがばぁぁっ!と、半身を起こした!

左右を見渡しても!見覚えのあるものが一つもない! なんじゃ?このゴージャス空間?

寝起きで!なんですかここ?

ナニ?ベルサイユ宮殿? デカいベッド!四隅に柱が付いてる。そこから伸びた上に天幕みたいなものが張られている。なんじゃこりゃ!ベッドもふかふか!枕が!ただの枕がやたら豪華でデケぇ。縁にひらひらが一杯付いてる。

目が覚めたら!見えるもの全てが一変していた。洋風の華やかさ、豪奢で埋め尽くされていた。もう俺なんかには判らん程の。

え。いつものせんべい布団は? タオル敷いてごまかしてるけど頭の形が残っちゃった洗ってない枕は?枕カバー?ないよ。

なんのシミか判んないけど、忘れちゃったけど!汚れがでっかく付いちゃった襖は?

明日捨てようと思って玄関に置いておいたビールの空き缶の詰まったビニール袋は? 埃がたっぷり付いたままのそろそろ壊れそうなエアコンは?

目に馴染みきって馴染みきって違和感すら無くなったいつもの侘しい部屋は?


目に入るのはどこもかしこも清潔で整えられていて意匠も装飾品も煌びやかな……見知らぬ部屋だった。


そういうマンガのことは知ってる。あまり読んではいないが。

だが真っ先に頭に思い浮かんだのはそれだった。だって一変しすぎている!

しかも突然に! なんだこれ。いい加減にしろ!

ナニきっかけでこれなのよ?!

寝てただけよ?ビール飲んで寝てただけなのよ?

ちゃんとベッドに座るように身体を起こしてみる。

ちょっと落ち着こうか。俺。ふぅぅぅぅ……。

やけに身体が軽く上がった……気がする。胸元を見た。なんかひらひらしている。やたら薄い生地。でも高級生地だと肌で判る。

そんなもん買った覚えはねぇ。

一人もんの当たり前で自分で買った服以外を着ているわけが無いのだ。

ありえねぇ。

手に固いものがわずかに触れた。本だ。え?

ある。記憶に残っている。

それはつい出来心で買ってしまった……

〝縄師入門〟と言うエロ本であった。


………………。



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部屋に入ってきたメイドさんが大丈夫ですか!と大騒ぎ。人を呼びに出て行く。

頭に包帯。今更気づく。だが、少しも痛くない。直ったのか……?……

いつこんな怪我した? 記憶にない。怪我で記憶も飛んだのか?

それすら曖昧だ。


メイドさん達が次から次に駆け込んでくる。口々に王子様、アンジェム様、と呼びかけてくる。

誰よそれ。

カーテンの影、斜が差している窓ガラスにうすらぼんやりと顔が映る。

誰?この二枚目。俺?なんでだ!

にかっ、と笑ってみる。ちゃんと動く。窓ガラスのボケた画像が笑った。

いかにもチャラそうな王子様顔。しっかりと女にもモテそうだ。

二枚目になれて嬉しいか、と言うと全くそんなことはない。

元の冴えない貧乏顔の方が俺なのだ。そう認識して生きてきたのだ。

女にモテそうな顔、から対極の顔が俺だった……はず。

そんなもん懐かしんでもしょうがないが!

俺は俺の顔が……あんなしょうも無いもんが……案外気に入っていたコトに気づいてしまった。なにこれ。俺っぽくねぇ。びた一文俺じゃねぇ。

誰よ、これ。

 

王子なの?俺って?なんでだ?

死ぬほどの怪我でも不思議ではなかったとメイドさんは言う。当然全く身に覚えが無い。記憶喪失を装って、その辺の曖昧さはごまかした。

うう……まだ頭がはっきりしない……で、大体は押し通せた。



いきなりドアが!ばん!と開いた!

驚いてそっちを見ると!

なにこのグラマーな人。うっ。

本当にうっ、と来た。からだ全体がたわんたわんと揺れる!揺れている!

なんというグラマーっぷり!うううっ。

小走りに駆け寄ってくるそのおんなの人がいきなり! 細腕を俺の方に伸ばし、がばり!と抱きついてきた!

俺の頭をその!艶麗極まりない!超デカ乳にむにり!と沈めた。


「アンジーちゃんっっっ!よかった!目覚めたのねっ!」

腕の中にぎゅうぎゅうと抱きしめながら……さらにその豊満過ぎる乳房の狭間に俺の顔を埋めていく。

うっ。うううっっっ。

息が出来なくなりそうなその乳の迫力!吸える空気は乳臭のみ。一気に顔がかぁぁっっと赤らんでいった。

「……王妃様……ご心痛お察しいたします……良かったですね……アンジェム様が目覚められて……」

背後のお付きのメイドさんが、目尻を指で撫でている。

王妃様……?……で、俺が王子……ってことは母親かっ???

「ああ……私のアンジーちゃん……本当に……本当に心配いたしました……良かった……」

乳の狭間に埋めた俺の頭の上からそんなか細い声が聞こえてくる。

母親ならそりゃ心配……んぐ……腕が強い。ぎゅうっと。顔がぁぁぁぁ。

あああ。意識が意識がそっちに取られるぅぅぅ。

顔にぎゅむぎゅむと押しつけられる超巨大乳の柔い感触に、ありとあらゆる情報が頭の中で上滑りしていたのだった。



なんという巨乳!なんという巨尻!そして見事なくびれ!

抱かれて柔く淡いからだ。涼やかで愛情溢れる声。

この乳に顔を埋められる!これいくら!これいくら払えばいいっ!

しかしそれは当然プライスレスなのだった。母だから。

母だけど。

ふっと顔を離し……目線を絡めてきた。その目の中には確かに慈愛が満ちていた。

その瞳に安堵した。心から。この瞳に見つめられていたら……

母の安らぎ、という感じがした。赤の他人の俺でも。

その顔がゆらりと近づくと……

キスしてきた。え!キス!そりゃあっても不思議じゃないが!そういうシーンではあるが!母親と息子なら!母と息子のキス!なのにっ!なのにぃぃっ!

唇が重なってきた……口と口……マウストゥマウス……えええええっ……!!!

舌まで入ってくる!んぅぅぅ!!!

俺の口の中の舌をねっとりと……でも優しさ極まりなく……それは母性そのままの分厚い優しさで……そっとそっと舐め回してくる。

さらに!アタマに血が上った! 母と息子じゃ無いの? 違うのか? いいのかっ!

これがこちらの世界の母親と息子なのかっ!わからん!わからんんんん!

でも!えっ!

王妃様が首を捻り、顔の角度を変え……んぅ……んん……と、微かに小声を漏らしながら……ふっくらとした唇を擦りつけ擦りつけ……極上キスを振る舞ってくる……

ぎんぎんに勃起しまくっていた。

かつて見たことも無い、触れたことなど当然ない。抱かれたことなど!想像の域すら超えている!

そんな極上女体に柔く暖かく……愛情一杯に抱きしめられて。

口と口を深々と合わせられ……柔らかな舌が口の中に忍び込んできて……

まるで……まるで……愛情たっぷりに……俺の舌を擽るように舐めて……んうううぅぅ……

アタマが回んない。完全に活動を停止した。

……うっとりしていく……んんんん……

こっちの舌で母舌を舐め返すのもしんなりと受け入れて……口の中に王妃様の……ああ……と言う淡い喘ぎまで吹き込まれて……あああああ。

もう!ふんふんと鼻息が荒がるのが止められないのだった。



あんだけ熱烈な本気キスして。

まだ安静が必要ですから……と言うメイドの助言に素直に従い。

そうね……と、しっとりと淑やかに呟くと、そのデカい美麗なケツを俺のベッドから立ち上がらせ……

王妃様は名残惜しそうに、艶やかな流し目一つを残して……お付きのメイドと部屋を出て行った。

あっさり……? でも、ここまで? ま、だよなぁぁ!ここでなぁ!んなわけ!ねぇしなぁ!

とは思いつつ、ベッドの中で未だにどこか頭の中がぼおっとしている俺なのだった。

もうがっちがちのモノは、布団をかぶせてなんとか隠しきった。



だんだんとメイドさん達との会話でいろんなコトが判ってくる。

マジでファンタジー世界だよ。乏しい世界史の知識でもそれぐらいは判る。

かってあった中世ヨーロッパ的でありつつ、どうも適当に捏ね合わされているような。しかも!

なんとこっち今いるとこ……魔王軍勢側らしい。え?

人間軍との戦の最中……らしい。え。俺こっち?俺誰?こっちでイイの?

何でこっちだよ!神!おまえナニ考えてやがる!


「………………」

どっかから声が聞こえた! 何? 

神がなんか返事したんかと思った。

そんなわけもなかった。



頭の中から声が聞こえた。頭の中?誰か居る???え?何?誰?声?

「…………私の身体を返せ……」

なんかいじけたような声が頭蓋の中に響いた。



会話が出来る。頭の中で。一人で二人。知らんヤツがいた。

戸惑いはマックスだが、落ち着いて会話してみると判ってきた。

こいつ……ここの元の王子様……だ。魔王国の王子。

何で俺の頭の中にいる?

てか、なんで俺がここに? 王子様の身体の中にいる? 王子様の身体に代わってるのだ?

事情は追々会話の中でわかってきた。


死んでもおかしくないほどの不慮の事故。

実は異世界転生してしまったのは王子様の方。俺は入れ替わりで飛ばされてしまっただけだったのだ。信じ切れないが。どうもそうらしい……?

「じゃあ何? なんもないとこに女神様とか居て……いろいろ話、しちゃう的な?」

「なぜ知ってる……そうだ。俺は……たった今、息を引き取った……と言われた……」

「で、異世界でもう一度生まれ変わる気があるか、と問われて……」

「もう一度戻してくれ、と願った。今の世界でまだやらねばならないことがあるのだ、と」

「特例として……認めてくれたようだ」


なんとまぁ。


……理解がいくような……いかないような……

こっちの世にあるんなら……まぁ、こっちの世にあったって……不思議ではない?不思議と言えば元から不思議だが。不条理だが。

何それ?じゃ俺はバーター?巻き込まれ?死んでもいねぇのに転生された、と?

何で俺ぇ?!何で俺?!なんで俺ぇぇぇぇっっ?! 

意味も理由もねぇじゃねぇか!

ま、そりゃ落石事故に理由も過失も関係ないが!へったくれもないが!

咎無くして死す、運命の理不尽そのものだが!


一人あっち行ったら誰か一人こっち来なきゃならんモノなのか……?

行って、来い、で帳尻が合う……のか?は?

なんの帳尻だ!てんこしゃんこかっ!


苛立ちは少しも収まらなかった……が。

……人として。大いなる変転は呑み込まざるをえない……と、諦めの溜息をついた。人の世ですら動かしがたいのだ。

運命の神の振る舞いなど。

暴虐な狂風そのものである。

ただ、こうだ、と上から押しつけられて……無理矢理呑み込まされる、不服ながらも納得させられる……いや、納得せざるをえない、こうなったからこうなのだ、と。

もう起きてしまったことは既成事実として進めるしかない。

呑み込みがたいが! 歯ぎしりが止まらんが! 


女神様の力だかなんだか知らんが。戻ってきた、と。

それも不完全に終わり……俺の頭の中に取り残されてしまう。戻ってきてみればすっかり……と言う形。一人の身体、一人の頭に二人分。

ちゃんとしてやれよ。女神様っ。俺をまた戻すとかっ。やっつけ仕事か。

雑な仕事すぎんだろ。

ちなみに王子様は女神様と会ったそうな。なんかいろいろ会話して戻ることにしたのだそうな。ま、元の俺のとこに転生なんかしても、俺の立場になってもなんのメリットもなさそうだしな。間違いなく。

何か豪運を約束されたそうだけど。超成り上がりストーリーをご用意してます、とか言われたそうだけど! なんだよ!それ!

で、戻ってきてみれば……俺が居座ってた、と。

可哀想な王子様っ。くすすすっ。

で。

これだけははっきり聞かねばならん。

「あの母親からのねっとりマジキスはどういうことだ?王子様?」

「……うっ……ううううう…………」

「アレがこの世界の普通なのか? この世界の王族ってのは母親とディィィィプ過ぎるキスをするものなのか? あ? 意見を聞かせてもらいたい」

頭の中の王子が赤面して俯いている……だんだん身を縮めているような感じがした。

「…………………………………………普通だ」

「俺に入れ替わってるから……コイツがゴリゴリに立ってる……腹にひっつくぐらい……と言うことじゃないよな。生理的反応として」

「ち、違うっっっ……あれは母上がっ……幼少の折の……ああっ……昔からっ!」

ふぅん。

ま。またあとで問い詰めてやる。




それにしたって!だ! だっ!

チートってチートだ。

そんなものがあることこそがチートだ。

俺はなんもなかったぞ!くそったれ!

神様とか女神様とか天使様とか!そんなのが懇切丁寧に教えてくれたり!

行く先がどんなんかちびっとでも教えてくれたり!

なんか心配されちゃって、特殊能力付けてくれたり!

いっっっっっさい!なにもなしっ!なぁぁぁんもなあぁぁしっ!

いきなり気づいたらここだよ!

服すらこっちの服に知らんまに着替えさせられてたよ!

元の世界から持ち込めたのは!

何故か手に掴んでいたこれ。

古本屋でつい買ってしまった、五十円値引きの四百五十円!

“縄師入門”

ただこれ一つだよっ! よりによって! 縄師入門?!緊縛術?!

これチート?

………出来心だったんです。つい買ってしまったのは。

安かったし……表紙がエロかったし……。 

まさかまさか。よもやよもや。……こんなことになろうとは。

これ読みながら寝落ちした……だけなのに。

なんでこれしか持ち込めなかったんですかぁ……スマホとかは? 理不尽なまでに便利極まりないスマホとかはぁ?神様ァァァ……

てーか! 神! なんでこれを持ち込めるようにした! おい!神っっ!てめぇでてこい!おりてこいっ!なんの意図があってこんな……こんな……もぅっ。

はー……。

意味わかんねぇ。



表から見れば俺はただ一人だ。そのくせ、誰かと会話してる感じの俺を何か奇妙なモノとしてはらはらとメイドさんが見つめていた。

「だ、大丈夫でしょうか……王子様……」

ん。ヤバい。もう居たのか。一人部屋を出て行ったと思ったらまた別の一人が入ってきていた。

「ン……き、記憶の混濁が……いろいろと思い出せないぃぃ……」

必殺の言い訳を口にし、わざとらしく頭を押さえる。

「まだ無理をなさっては……徐々にいろいろと話しかけつつ……まずは体力の回復を……」

そのメイドの子の後ろに巨大な影があった。声がしゃがれて渋い。その声がメイドさんに語りかけていた。

誰?え?異様な肩幅、分厚い胸板がメイド服を着ていた。

「あ、あとメイド長を」

メイドさんがその背後の巨大メイドを掌を上に向けて指し示した。

野太い声が響いた。

「思い出せますでしょうか……アンジェム様」

メイド長……め、メイド長???

まさにゴリラがメイド服を着てすっくと立っていた。顔が高い位置にあるったら。

見上げんばかり。ベッドに座ってるとさらに!

なんというゴリラライクな。すっげえマッチョ。顔が厳ついったら。

おじ……おばさん?嘘でしょ?戦士?声が渋いっ。

見ただけで判るゴリゴリの堅物。そして筋肉もりもり。ホントに女性か?

腕力でメイド長の地位を得た、勝ち取った、と言った方が納得がいく。

そのメイド長がきびきびと指示を出し、その指示に従いメイドさん達が慌ただしく動き回る。指揮官?

メイド達を統率する様はまさに鉄の規律。

すぐに腑に落ちた。一瞬で納得した。腹の底まで。

これは。

スキル、キャラ、共に一目置かざるを得ない存在なのだった。




なんか寝間着風の衣装から室内着のようなモノにメイドさんの手で着替えさせられた。幼児か。俺は。王族とかそんなもんの様らしいので抵抗はしなかったが。

とにかく……執務机風セットのがっしりとした椅子に腰を下ろす。机に肘をついて顎を載せると。

ふぅぅぅ……と深い溜息が出る。出るさそりゃ。先先がまるきし判んねぇ。

……これって帰れンの?……ま、帰ってもしょうがないわけだけど。さして未練のあるもんでもねぇけどさっ。元の世界の俺は生きてんの?死んでんの?

魔王の息子……次期後継者……とんでもない立場だね。

運命の激変っぷりにびっくりですよ。


ま、ま、まぁ。でもまぁ。

魔王の息子に転生したからには。

せいぜい思いっきり足を引っ張って、魔王軍を混乱させてやる!

ま、こっちの人類とは縁もゆかりもございませんが。

最悪の敵は無能な味方。という。その逆パターン! 最強の味方は!無能極まりない敵!

弱っちい人類の為に!オレは頑張って!ダメニートするぜ!

魔界の裏側から人類をサポート!

超絶ドラ息子のダメニートになってやるっっ!






新連載です。

いつものえろを押さえた一般誌枠で!(笑)

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