5話
「大変申し訳ございませんでした」
スズキリョウさんが綺麗に90度のお辞儀をしてみせる。
「うん、だよね。…はい、この2人は、左から順に細川桜さん、神田悠くん。大学1年生。挨拶して」
スズキさんは私たちを見て、軽く会釈。
「…うす」
「挨拶」
「…こんにちは」
「こ、こんにちは…」
「こんにちは…」
「こんにちは、じゃなにも伝わらないよね。名前は?学年は?趣味嗜好とかも言っておいた方がいいよね。比べるわけじゃないけれど、君よりも年下の彼らの方がよく出来てたな」
「…鈴木凌。2年。趣味は…無い」
「自己紹介は、投げっぱなし?」
「…よろしく」
「あ、あの、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
前途多難。そんな言葉が頭に浮かんだ。
「じゃあ、僕はもう帰るから。
凪沙さんには君からお願いね」
「はい」
大山さんは、足早に去っていった。
微妙な空気にして私たちを残さないで欲しい。
「凪沙には俺が説明しておく。
桜と悠は部屋に戻って荷物の整理でもしてろ」
「はい。…え、あの、下の名前…なんですね…?」
スズキさんのスタイルなのかな?
「ああ、説明されてなかったのか。
この家では、原則下の名前で呼び合うことになっているんだ。呼び捨てかどうかは任せる」
そんなルールが…
「そうなんですね。じゃあ、今日からよろしくお願いします、凌さん」
神田く…じゃなくて悠くんは早速対応している。
「ああ」
名前呼び、慣れない。
部屋で荷物を整理していると、コンコンコン、とノックが鳴った。
「はい」
扉を開けると、悠くんが立っていた。
「ゆ、…どうかした?」
呼べない。名前で。
悠くんは気にした素振りもなく話を続ける。
「このシェアハウス、「Oyama familie」っていう、あの表札と同じ名前でグループラインがあるんだって。俺、ついさっき入ったんだけど、桜、まだだよね?」
さくら…異性からのその呼び方は呼ばれ慣れない。
「あ…えと、うん。まだ…です」
「だよな。追加しておくから、教えて、ライン」
「は、はい…」
ぎこちなくなってしまう私を気にも留めず、じゃ、と爽やかに去っていった。
仲良くは…なれなさそうかもな…




