第16話 摩耶と美緒
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その一方、見事バイクで警察官達の追従を振り切った美緒と摩耶はと言うと、こんな感じだった。
「もうダメ、足が動かない。ちょっと休ませて!」
「だからその重い荷物、あたしが持ってやるって言ってるでしょう!」
「そんな事言って......これを渡した途端、あたしを置いて逃げるつもりなんでしょう!」
「全く......だったら好きにしなさい!」
ヘナヘナヘナ......
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あたしが力尽きて地べたに座り込むと、『美緒』さんもそれに習ってあたしの横にしゃがみ込んで来た。
あたしは『マーメイド』と言うやたらと重い荷物を肩に背負ってる。それで美緒さんは美緒さんであたしに負けず劣らずの重そうなリュックを背負ってた。
多分、武器だとか通信機器だとか色々な商売道具が詰め込まれてるんだろう。
ちなみに、リュックの頭から飛び出してる『筒』のような物の先には『発煙筒』と文字が描かれてる。それも商売道具なのか、踏切内でエンストした時に使う用なのかは分からないけど。(因みにバイクなんだけどね)
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桜田美緒......27歳
1年前、何者かに恋人を殺され、自殺未遂を繰り返していた彼女は、エマ達に殺害犯の抹殺を依頼する。
依頼者として、圭一、ポールらと行動を共にしていくうちに、彼女の探偵としての才能が開花していく。
彼女の記憶力、洞察能力、窮地における判断能力、計算能力などは、凡人の域を遥かに超えており、事件解決後、圭一、ポールの推薦を受けるという形で、エマ探偵事務所の一員となった。
気性は非常に激しく、扱いずらい部分もあるが、最近ではその傾向もおさまりつつある。エマ探偵事務所髄一の頭脳派と言えよう。
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ところで......ガス欠ってどう言う事なのよ? 普通、ある程度はガソリン入れてる筈でしょう? 美緒さんの話によると、突然決まったツーリングだったらしいんだけど。
ところで、ここは一体どこなんだろう? やたらと薄汚い感じがするんだけど。酒のビンとかがいっぱい積まれところを見ると、飲み屋街の裏路地なのかしら?
とにかくあたし達は、慌ただしい中を逃げ回り続け、今ようやくこんな雑居ビルの裏側で一息つく事が出来たってわけ。
別にあたしはこの『美緒』さんって言う人を信用してない訳じゃ無い。だって圭一さんの仲間なんだものね。
でもどうしてもこの『マーメイド』だけは、あたしの手から放したくは無かった。何か放した途端、どこかへ飛んで行ってしまうような気がしちゃって。別にオカルトを信じてる訳じゃ無いんだけどさ......
「あなたさ......一体何でそんな物、外へ持ち出したのかしら?」
おっと! いきなり尋問を始めて来たわね。
でもまだそう簡単に話す訳にはいかないの。いくら圭一さんの仲間だと言っても、まだ会ったばかりじゃない! 助けて貰った事に関しては感謝してるけど、それとこれとは話が別だわ。
「そんな事聞いてどうすんのよ? あなたには関係無い話でしょう」
だって、そう思わない?
あたしが圭一さんの元彼女で、圭一さんがあたしを助けてくれたから、仲間のあなたは圭一さんに付き合ってあたしを助けてくれただけでしょう? だったら『マーメイド』の事なんか関係無いじゃん。話す必要なんて無いわ。
どんな反応が返って来るのかちょっと恐かったけど、そんな理由でまずはジャブ程度に突き放してみた訳さ。
すると『美緒』さんから、思いもよらぬ飛んでも無い言葉が返って来たの。
「あたし達に関係無いですって? 美竹摩耶さんって言ったわね。全く......あなた何にも分かって無いのね。本当に呑気なもんだわ」
呑気ですって?!
一体あたしがどんな思いでこの『マーメイド』を持ち出したと思ってるの?! くっそう......もう我慢出来ない。言ってやろうじゃ無いの!
ってな訳で、
「別にあたしはあなた達に助けて欲しいなんて頼んで無いわ! だからこの荷物の事なんて、あなた達には関係無いって言ってるのよ! もう分かったでしょう!」
感情的になってしまった事だけは反省しないといけない。でもあたしは決して間違った事は言ってないつもりです!
「は~あ? あたし達があなたを助けたですって? 本気でそう思ってるの?」




