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第13話 テロリスト

 シャカシャカシャカ......


 そんな圭一を横目で見詰めながら、日常の如く軽快なリズムでシェイカーを振っていたマスターが、何やらラジオのボリュームを上げ始めた。


 自慢のオールバック、蝶ネクタイがやたらとよく似合う。年齢50を越えた今とは言え、熟年の怪しきオーラをふんだんに巻き散らしてる。


 若き頃は散々女を泣かせて来たのだろう。まぁ、予測の域を越えた話では無いのだが......



 すると、


『ガガッ、ガガガガッ......ここからは東京は千代田区、二重橋前から私山本が中継でお伝え致します。ガガガッ......』


「ラジオで圭一さん達の武勇伝が始まったみたいですよ。はい、『BAR SHARK』特製、果汁100%ミックスジュースです。


 この後の事を考えたら、少しアルコールは抑えといた方がいいでしょう。いつ誰がここへ飛び込んで来るか分かったもんじゃ無いですからね。


 じゃあ誰が飛び込んで来るのかと言うと......ポールや美緒さんなのか? それとも警察なのか? はたまたスナイパーなのか? その答えは神のみぞ知るってとこですか......


 ちなみに帝国化学工業と言えば、この前研究用に育てていた巨大毒グモが逃げ出したって大騒ぎになった企業ですよね。『M物体』やら毒グモやら、とにかく忙しい企業だこと......」


 コトン。


 そんな不吉な言葉を並べながら、マスターはエマの前にグラスを置いた。声がやたらと明るいのは、圭一と同じできっと必死にエマを力付けようとしているのだろう。



「なんだこりゃ? ドロドロしてないか?」


「産地直送、インドネシア産の高級バナナをふんだんに盛り込んでます。このドロドロ感が堪らないんですよ。まぁ、そんな事より......ちょっとラジオを真剣に聞いてみましょう」


「そうだな」


「ちょっとドキドキですね」


 そんなこんなで、3人はラジオの音声に再び耳を傾けたのだった。



『今夜未明、千代田区は丸の内に本社を置く帝国化学工業株式会社から、重大な企業機密が盗み出されました。


 4人の窃盗団は分散して今も逃走中です。窃盗団はバズーカ砲など複数の強力な武器を携帯しており、警察は付近の住民に最高レベルでの注意を呼び掛けております。


 おっと! 今新しい情報が入って参りました。どうやら犯人が特定出来たようです。そして今、私の手元にその犯人達の顔写真と名前が届いております。


 首謀者、柊恵摩ひいらぎエマ、特徴:髪の毛セミロング、はっきりとし目鼻立ちの女性。


 続きまして、藤堂圭一とうどうけいいち、特徴:短髪でかっしりとした体型の男性。


 それと、桜田美緒さくらだみお、特徴:吊り上がった黒淵メガネ、気の強そうな女性。


 最後に、ポール・ボイド、特徴:ひょろ長い体型で目の細い金髪ハーフ男性。


 いずれも20才から30才に掛けての若者で、過去にも複数の殺人を行った事のあるテロリストと判明致しました。


 信じられません! 今もそんな凶悪犯が武器を持って平和な都心のどこかに潜んでいるのです。私の手元には、今4人の顔写真が置かれています。


 ラジオではそれをお見せする事が出来ませんが、今頃、テレビで公開されている事でしょう。


 いいですか皆さん。この4人を見付けても絶対に近付いたりはせず、速やかに110番通報をして下さい。


 間違っても犯人達を刺激するような行動は取らないで! それがあなたの命を守る唯一の術なのです!』



「なんか......話がおかしくなってやしませんか?」


「皆さん、いつの間にテロリストになっちゃったんですか? ハッ、ハッ、ハッ」


「そんな事より......」


「ん、なんでしょう?」


「なにか?」


「何で一番重要な人物が全く出て来ないんだ? あたし達なんかより、よっぽと顔見られてた筈だろ」


 そんな問い掛けをしたエマの目は、一直線に圭一の目にロックオンしていた。その理由を今更説明する必要も無いだろう。


「摩耶......美竹摩耶の事ですね」


「そうだ......」


 きっと圭一も、そんな質問が出て来る事を予知していたに違いない。特に狼狽えた様子も無く、スラスラと答え始める。



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