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第12話 BAR SHARK

 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 外苑東通り、六本木交差点を少し南へ歩いた先の路地沿いにその店は移転していた。


『BAR SHARK』


 既に灯りが消されたそんなネオン看板の脇には、B1Fへと通じる怪しき階段が。きっとそれを下って行けば、そこへと通じているのだろう。


 1年前までは東新宿に店を構えていた訳なのだが、バズーカ砲で木っ端微塵に破壊され、やむ無く移転を余儀なくされたと言う経緯だ。


 以前の店の時も然り、この辺りもまたやたらと治安が悪い。多分経営者の性格からして、このようなデンジャラスゾーンの方が落ち着くのだろう。


 その一方、店内はどうかと言うと意外と綺麗。ビルの外見とのギャップが激しい。


 カウンター5席と4人掛けテーブル3個とこじんまりしてはいるが、どこか落ち着く雰囲気がある。


 床・壁・カウンター、全てが茶色を基盤とした配色で統一されており、置かれている小物などは南国をイメージした物が多く、センスの良さが伺える。


 バーカウンターの後ろにはボトルが綺麗に並び、それらを収納している棚の上には、水色の下地にエメラルドグリーンの文字で『BAR SHARK』と書かれた看板が掛けられていた。


 そんな看板にはスポットライトが向けられ、暗い店内の中で一際目立つ存在だ。


 店の隅に置かれている古臭いジュークボックスからは終始六十年代のオールディーズが流れ続け、まるで50年前にタイムスリップしたような錯覚に囚われる。



 そんな中、カウンターの一番奥に座る年若き女性。


 この者こそが、この若さにして『BAR SHARK』のオーナーであり、『EMA探偵事務所』の代表。そしてこの物語の主人公、エマだった。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※


本名 柊恵摩ひいらぎえま

年齢:27歳

身長:160センチ


 髪の毛の色はライトブラウン。ショートヘアーが非常に良く似合う。目は大きく、くっきりとした二重。鼻筋の通った顔立ちは誰からも好感を得る。


 耳にはクロスのピアス。右手の薬指にはクロムハーツのリングが輝いている。顔立ちは一見すると派手とも言えるが、その装いは実に地味だった。


 そんな代表エマは、先程まで肌に引っ付いていたバイク用のレーシングスーツを脱ぎ去り、少しホッとした様子。


 今はどうかと言うと、上下黒のスーツで固めている。この装いは年若きリーダー、エマの作業着と言っても過言では無い。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ゴーン、ゴーン、ゴーン......


 シックな雰囲気に包まれた店内、そんな店の片隅に掛けられた鳩時計が、深夜3時の到来を知らせる。


 ん......


 まだ戻って来ないか......


 そんな新調したばかりの鳩時計を見詰めながら、フゥ......エマは一つ大きな溜め息をついた。



「エマさん、大丈夫ですって。ポールも美緒さんも、これまで散々死地を潜り抜けて来てるんです。あの程度の事で、そう簡単にくたばるようなタマじゃ無いっすよ」


 横でワインを啜る圭一は、視線を前に向けたまま、そんな言葉をエマに投げ掛けた。


 楽観的過ぎるそんな言葉とは裏腹に、どう見たって浮かべた笑顔は作りもの。正直者にピエロの仮面は似合わない。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 藤堂圭一......31歳


 元々はプロのボクサーであった彼だが、とある事件で自殺を決意するまでに追い込まれる。


 そんな窮地をエマに救われ、彼の腕っぷしを買ったエマは、EMA探偵事務所に彼を招き入れた。


 類い稀なる武道派は、如何なる敵も力でなぎ倒し、ブルドーザーのごとく前に突き進んでいく。


 また代表エマを『神』と崇め、『エマさんの進む先が例え地獄であっても、自分はただついていくのみ』と豪語した事は記憶に新しい。


 彼の武勇伝として、極神島の事件で燃え盛る建物から、顔を炎で焼かれながらも美緒を救出した男気は今や伝説と化している。


 その時出来た顔の火傷跡は正に彼の勲章とも言えた。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※



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