第10話 500万ボルト
「今度あたしもフリマ行ったら、それ探して見ます。何でしたっけ? 対戦車ロケット砲?」
「バカか? こんな重いもん女が扱える訳無いだろ。そんな事よりほれっ、この小さいのを持っとけ!」
そう語りながら、圭一さんは金属の塊をあたしに手渡してくれた。確かにバズーカ砲よりは小さいけど、ずっしりと重い。
「これは?」
「500万ボルト『バリバリ美緒スペシャル3号』だ」
500万ボルト?
美緒スペシャル?
商品名は何だか長くてよく分からないけど、この形状は間違いなくスタンガンだ。
以前ストーカーに付きまとわれてた時、秋葉原で買った事が有るけど、その時は確か5万ボルトって書いてあったような気がする。
500万ボルト? 多分今のは聞き間違いだったんだろう。
それはそれとして、これからあたしは色々な人達から追われる立場。護身用としては確かに有難いアイテムだ。
「ありがとう。大事に使うわ」
「そいつのレバーを握れば大概は即死だ。よくても一生車椅子生活ってとこだろ。なんせ『500万ボルト』バリバリ美緒スペシャル3号だからな」
やっぱ聞き間違いじゃ無かったわ......でもまぁ、パワーが有る事に越した事は無い。
ところで......
美緒スペシャルの『美緒』って誰なの?
ザワザワザワ......
なんか急に嫌な胸騒ぎが。まさか圭一さんの彼◯とか?
あたしがそんな良からぬ動揺を抑え切れず、今渡されたばかりの『500万ボルト美緒スペシャル3号』を思わず落としそうになったその時だった。
「おっと圭一サン、ヤバいっすヨ、検問デス! しかも装甲車ガ道を塞いでマッセ!」
見れば日比谷通りを爆進するそんなカッ飛び『タクシー』のスピードメーターは、優に時速200キロを超えてる。
それで目の前にはだかる鋼鉄の『バリケード』は見る見るうちに大きくなっていった。さすがにこのバリケードを打ち破る事は至難の技と言えそう。
「おやおや、自衛隊のお出ましですか......こいつは参ったな」
「圭一サン、どうシマス? 突っ込みマス? それとも......戻りマス?」
後ろを振り返ってみれば、無数の高速パトカーが競うようにその距離を縮めて来ている。
後になって聞いた話だと、それらのパトカーは、GTRとかNSXとか日本を代表するスポーツカーのパトカー仕様だったらしい。
「前にも進めんし、後戻りも出来ん。こいつはちと困ったぞ......」
ちょっと何眉間にシワ寄せてんの?! これまでの余裕は一体どこ行っちゃったのよ?
「もう嫌だ。やっぱ付いて来るんじゃ無かった......」
今更の如く、あたしがそんな臆病風に吹かれているうちにも、バリケードはもう目と鼻の先に迫り来てる。
すると、
ブウォ~ン......
ブウォ~ン......
今度は何やら背後から新たな甲高いエンジン音が。しかもその音は一気に近付いて来てるじゃ無いの!
「おっと、やっと現れてくれたか!」
「サスガ、お二方! 千両役者デス!」
と思ったら今度は何喜び始めてんの? 千両役者ってどう言うこと? それに何なの? 目の前がやたらと眩しいんだけど......
見れば左右2つのドアミラーが、揃って眩しい光を発してる。何事かと思い振り返ってみれば、そこには猛スピードで追い付いて来る2台のバイクの姿が!
「千両役者って、このバイクのこと?!」
「そうだ。もう安心していいぞ」
「......」
百歩譲って、このバイクに乗ってる人達が千両役者だったとしよう。
でもこの車はどんどん加速して今や時速250キロでバリケードに突っ込もうとしている。そんで後ろからはスーパーパトカーが迫り来ているし......
この状況下において、どこをどう安心しろって言ってるのか全く意味が分からない。
まさか、このサイドウィンドウが突然ギーって開いて、バイクに飛び乗れ! なんて、ふざけた事を言わなきゃいいんだけどね......
そして、ギー......
なに突然サイドウィンドウ開けてんの?!
まさか?
まさか??
まさか??
そのまさかなの?!
「おい摩耶、バイクの後ろに飛び乗れ」
「やっぱそう来たか!」




