14話 宿
冒険者ギルドを出て街をぶらついているとクレスト商会の看板が目に入った。
確かオリーバーの店だったかな?
金貨を返すついでに覗いてみるとしよう。
看板を目印に進んでみると想像してるよりもだいぶ大きい店だった。ぱっと見る限り冒険者ギルドと同じくらい大きい。他の店に比べると圧倒的だ。
店に入ると鎧や剣などが所狭しと並べられていた。
「いらっしゃいませ。ご用はなんでしょうか?」
そう店員らしき男性が話しかけてくる。
「オリバーっている?」
そう店員に聞く。
「お坊ちゃまにご用ですか?ご予約はありますか?」
「予約はないけど借金を返しに来たってオリバーに伝えてもらえない?」
「借金…?わかりました。少々お待ちください。」
そう言って少し怪訝な顔をして階段を登っていった。
しばらくするとオリバーが階段を降りてきた。
「もう冒険者登録は済んだんですか?」
そうオリバーが言う。
「まあね、それよりもこれ返す。」
そう言って異空間から金貨を出して親指で弾いて飛ばす。
「おっとと。」
そう言ってオリバーは金貨をキャッチした。
「利子は必要?」
「いいえ、まさか。ちょっと待っててください。」
そう言ってオリバーは階段を駆け足で登っていく。
そしてすぐに戻ってきた。
「これはうちの新作のテントと寝袋です。」
そう言って差し出してくる。
「いくら?」
「それは差し上げますよ。護衛代の代わりです。」
「それなら貰っとく。」
まあこの身体に睡眠が必要なのかはわからないが。
そう思いつつテントと寝袋をしまう。
「いえいえ、素材などがあれば冒険者ギルドよりも高く買い取りますよ。」
「今はないや。」
「そうですか。ではまたお願いしますね。」
「うん、ありがとう。」
そう言って店を出た。
街は広くて探索するところはまだまだありそうだけど流石に疲れた。
お腹も空いたし宿に行こう。
まだ部屋空いてるかな?
宿の扉を開く。
「すいません。」
「あれ、昼間の?」
中に入ると昼間の女将さんが声をかけてくる。
「はい、まだ部屋って空いてますか?」
「空いてるよ、一泊銀貨6枚だよ。」
銀貨6枚か、物の相場がまだわからないが安いのだろうか?
とりあえず金貨を一枚渡す。
すると女将さんが目をまん丸にして言った。
「1日で稼いだねえ。何泊するんだい?」
「とりあえず10泊程お願いします。」
「はいよ、これが部屋の鍵さね。」
そう言って304と書かれた鍵を渡してくる。
「3階の角部屋だよ。とりあえず荷物を…、ないみたいだね。先に食事にするかい?」
「はい、ご飯でお願いします。」
「それじゃあ食堂に案内するよ。」
そう言われて案内された食堂はやわらかい雰囲気の場所だった。冒険者と思われる女性が多い。
「こんなに女性の冒険者が多いんですか?」
「いや、ここが特別さね。粗暴な男たちがいると心が休まらないだろ?」
そうやって豪快に笑う女将さん。
「それに女の子の冒険者が活躍してくれるとなんだか嬉しいじゃないか。厨房にいるのが私の旦那さね。」
そう言われて厨房を見ると随分と逞しい男性が厨房で料理を作っていた。
「愛想はないけどはいいよ。さあテーブルに案内するよ。」
そう言われて席に案内される。
「ちょっと待ってておくれよ。」
そう言って離れてしばらくすると料理を持って戻ってきた。
「今日はスープとパンだよ。」
そう言ってスープとパンの器を置く。
パンは焼き立てなのか湯気があがっている。スープも具だくさんで美味しそうだ。
「食べ終わったら受付においで。部屋に案内するよ。」
そう言って女将さんは去っていく。
とりあえず食べようか。
そう考えてパンを持つ。
「あちち。」
思ったとおり焼き立てだったみたいだ。
熱さを我慢して指先でパンをちぎる。
やっぱり美味しい。
焼き立てだからかなのか昼間に食べたより美味しく感じる。
スープも一口。
肉と野菜の出汁がよく出ている。
なんの肉だろうか?噛むとホロホロと崩れる。
うーん。美味しかった。
「食べ終わったのかい?」
「はい、とっても美味しかったです。」
「それはよかった。なにか食材を持ち込んでくれたら調理してあげるさね。さあ部屋に案内するよ。」
「今日のスープの肉は何の肉だったんですか?」
後ろをついていきながら女将さんに尋ねる。
「今日のはホーンラビットだね。」
「ホーンラビットがあんなに美味しくなるんですか?」
「そこははうちの旦那の腕さね。」
「なるほど。」
「料理はしないのかい?」
「あんまり。」
「あら、そうかい。珍しいね。」
そんなことをしゃべりながら階段を上る。
「さあここがあんたの部屋だよ。」
そう言って部屋のドアを開ける。
意外に広い。
部屋にはベッドが一つと窓がついていた。
「水と桶なら一階の奥の水場にあるから好きに使いなよ。お湯に浸かりたかったら近くの公衆浴場に行きな。」
「わかりました。」
「他になにか聞きたいことはあるかい?」
「女将さんの名前は?」
「あら、まだ自己紹介してなかったかい?あたいはグレーテ・ブラン。旦那はガルドさ。」
「アスタです。お世話になります。」
「いやいや、大歓迎さ。じゃあ狭い部屋だけど好きに過ごしておくれ。」
そう言ってドアを閉めて去っていく。
窓を開けて外を眺める。
街は星よりも眩しく光を放っている。
明日は冒険証を受け取ったらお風呂にでも入ろうかな。そんなことを考えながらベッドに横になった。




