◆ドーナツ型のコロニーで(恋愛SF)
宇宙に浮かぶ巨大なコロニー。
グリーンヴェールと呼ばれるそれは、ドーナツ状の巨大なリングが回転することで人工重力を生み出している。地球からの移住者は約一万二千人。植物管理区は住宅モジュールに次いで人が多く、スタッフは千五百人を超えている。
植物は食糧や環境調整だけでなく、閉鎖空間で暮らす人々の心を癒すためにも重要だ。私はその研究員として、最近このコロニーに移住してきた。
「いたっ」
突然体がふらついて思わず手をつく。そこには運悪く、棘の生えた枝が突き出していた。
――うわぁ、めちゃくちゃ血が出てる。
すぐに支援スタッフにメッセージを送る。近くに先輩研究員がいるけれど、居眠りしていて話しかけにくい。こういうときはやっぱりチャットだ。
宇宙コロニーでは、孤独や疎外感が深刻な問題になりやすいため、AIではなく生きたスタッフが対応してくれる。
『手を怪我してしまったのですが』
『おっと、大丈夫かい? もしかしてふらついてぶつけたのかな?』
『そうなんです。棘のある植物に手をついてしまって』
『それは痛そうだ。じゃぁ、怪我について教えてね。深さはどう? 出血は多い?』
『たいしたことはないのですが、医療品が見当たらなくて』
『E52の医療品はB8保管庫の中だよ。必要なら医療スタッフを派遣するけど?』
『大丈夫です。ありがとうございます』
『人工重力は慣れるまで結構体の負担になるから。無理しないで、今日は早めに休んでね』
チャットのアイコンには「水城 蒼介」という名前と、ドーナツ型のコロニーのマークが表示されている。
蒼介さんは私がこのコロニーに来た日、施設案内をしてくれた支援スタッフだ。
彼はこのコロニーが大好きで、みんながここで幸せに暮らせるように、サポートする仕事を楽しんでるんだって。そう話してくれたときの蒼介さんの笑顔を思い出すと、なんだか心が暖かくなる。
あの日は五十人も移住者がいたから、彼は私のことなんて覚えていないだろうけど。
B8と書かれた保管庫を開けると、彼の言ったとおりガーゼや消毒液がきちんと並んで入っていた。
「いつもありがとう、蒼介さん」
——もう一度、あなたの笑顔に会いたいです……!
胸に溢れたこの想いは、とても文字では伝えられない。自分の口で、あなたの目を見て伝えたいから。
ふう、とため息をついたそのとき、研究室の扉がノックされた。
約1000文字で宇宙コロニーの恋を描いてみました(*´∇`*)




