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迫真空手部・哲学の裏技  作者: そのまんま東のような人物のイラストをイメージ画として自身が一種の淫夢系のキャラクターとして扱われている、近年ではイワナ系朗読やFXで有り金を溶かしたりしている朗読兄貴
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啓蒙の弁証法レイプ!道具的理性と化した空手部

木村「前回はプラグマティズム及びベルクソンについてやりましたが、お気付きの通り、僕たちは既に現代哲学の領域に足を踏み入れているんです」


野獣「ソクラテスの時から結構経ったなぁ…」


木村「突然ですが、先輩がた。…『無意識』って一体何だと思いますか?」


三浦「無意識ってアレだろ、何も意識してないことだろ?」


野獣「今じゃ当たり前にありますねぇ!ありますあります」


木村「今回はその『無意識』を発見した人たちについてやっていきます。…まずですが、デカルトの『我思う、ゆえに我あり』と言う言葉が出て来てから、今までは意識は"理性"でコントロール出来るのだ、と考えられていました」


三浦「そうだよ(便乗)」


野獣「当たり前だよなぁ?だから人間は理性万能主義に陥って、パスカルとかが「人間は考える葦である」と言う言葉を用いて批判したってはっきりわかんだね」


木村「しかし、その理性万能主義を大きく変えてしまう発見をした人がいます。その人の名前はフロイトと言い、彼は「理性で捉えられない意識」を発見したのです」


三浦「これが『無意識』かゾ?」


木村「ええ。それを発見した経緯を語っておくと、彼は『精神分析』と言うものを行っていました。当時、身体には全く異常がないのに、音が聴こえなくなったり目が視えなくなったりした事がありました。しかし、多くはそれを仮病として捉えていたのです」


野獣「今で言う『ノイローゼ』ってやつか?」


木村「はい。これこそがノイローゼです。その時は催眠術や会話などで治療する動きがありましたが、フロイトは「患者の心を分析し、無意識の中に存在するコンプレックスを発見し、明らかにしなければならない」と言います。つまり彼は、人間の心を科学的に分析したのです。これこそを『精神分析』と呼びます」


野獣「確かに人間は多くのトラウマやコンプレックスを抱えてたりするからな…」


木村「ですから、彼は「人の行動は無意識が影響している」と考えます。ここが理性万能主義であった昔と大きく異なるのです」


三浦「はえ^~」


木村「そして彼は、精神分析を通じて科学的に調べます。そして得られた結果として、彼は『超自我』と『エス』と言う概念を提唱するのです」


野獣「心の中のコンプレックスの仕組みを解明したのか…やりますねぇ!」


木村「まず彼は、人間の自我が出来るまでの仕組みを解明しました。赤ちゃんが生まれたとき、その赤ちゃんには『エス』しかありません。この『エス』とは"人間の本能的な欲望"です。ですから赤ちゃんは泣きたい時に泣き、排せつをしたい時にそのまま排せつするのです」


三浦「でも、それじゃ多くの人間は本能的な欲望を持つ人間になってしまうゾ…」


木村「ですから、親が赤ちゃんを教育するのです。その時、男の子は母親に愛情が芽生えます。そして父親に嫉妬するのです。このコンプレックスを『オイディプス・コンプレックス』と呼び、人間が成長するうえで通るコンプレックスなのだ、とフロイトは考えます」


野獣「じゃあ逆に、女の子が父親に愛情が芽生えた時に起こる、母親への嫉妬のコンプレックスは無いのか?」


木村「ありますよ。女の子のコンプレックスは『エレクトラ・コンプレックス』と言いますね。ですが、大多数は母親が赤ちゃんを育てます。ですからオイディプス・コンプレックスのほうが一般的らしいですね。あくまで通説ですが…」


三浦「俺にもオイディプス・コンプレックスがあったのか…」


木村「やがてオイディプス・コンプレックスやエレクトラ・コンプレックスを経た子供たちは、成長して『超自我』を手に入れます。これは無意識的な判断能力です。例えば目の前に人がいたとして、無意識的に『この人を殴ってはいけない』と節制されるのです。これこそが超自我であり、本能的なエスを抑えるのです」


野獣「だから俺らは泣きたいときでも我慢したりすることがあるのか!」


木村「ええ。この超自我があるお陰で、我々のエスは動きが縛られます。ですが、大人になっても泣きたい時は泣いてしまいますよね?それはエスの中にある衝動が、超自我を通り抜けて出てしまうからなのです」


三浦「確かに我慢が出来ないときは衝動的になってしまう事もよくあるゾ…」


木村「この"エスの中に眠る本能的な衝動"を『性衝動』と言います。今言った『超自我』と『エス』が合体して、今ある『自我』が形成されるのです」


三浦「おっ、そうだな」


木村「しかし、これだけでは人間の欲動が説明できませんでした。例えばですが、人は「生きたい」と無意識ながら持ちます。逆に人は「死にたい」とも無意識ながら思っているのです」


野獣「確かに人間は生存本能があるからなぁ…」


木村「これを解明するために、彼は『エロス』と『タナトス』と言う概念を唱えます。『エロス』とは「生きようとする欲動」であり、『タナトス』とは『死へと向かう欲動』なのです」


三浦「なるほどゾ…」


木村「ですが、ここで『人類共通の普遍的な無意識がある』と言った人が出てきます。彼は人間の無意識の奥に、全人類に共通した「集合的無意識」があるのではないか、と考えたのです」


野獣「俺らの無意識にも、ある一定の法則があるのではないか、って言いたいんだろ?」


木村「ええ。その人の名前こそ、オカルトで有名なユングです。ユングは皆の持つ無意識には一定の法則があると考え、それを『集合的無意識』と呼びます。そして、その集合的無意識の中には"基本的なイメージの器"があると考えたのです」


三浦「万人に共通するイメージの器って、どんなものなのかゾ?」


野獣「気になりますねぇ!なりますなります」


木村「今から説明しますよ。…この器こそを『アーキタイプ』と呼ぶのですが、大まかに四つ存在します。一つ目は『グレートマザー』と言い、"母なるもの"ですね。例えるなら聖母マリアです。二つ目は『シャドウ』と言われていて、"もう一人の自分"です。例を挙げると、ドッペルゲンガーですね。三つ目は『アニマ』です。これは"理想像"と考えられていて、おとぎ話に出て来る王子さまとかですね。四つ目は『老賢人』ですね。老賢人は"父なるもの"で、例ならば賢者です」


三浦「この四つのアーキタイプが俺らの中の集合的無意識に投影されているのかゾ…?」


木村「そうユングは考えたのです。ですから彼は、このアーキタイプを研究していくうちに神話や宗教、錬金術やオカルトに興味を持ったのです」


野獣「はえ^~すっごい…」


木村「さて、次はフランクフルト学派についてやっていきますよ。…フランクフルト学派とは、ドイツのフランクフルト社会研究所に集まった人たちの事を言います。彼らの殆どはユダヤ人で、当時あったナチスが彼らを迫害したのです。ですから彼らはナチス、もといファシズムを批判すべく『批判的理論』を立ち上げたのです」


三浦「(ホロコースト)やべぇよ…やべぇよ…」


野獣「(迫害は)やめようね!」


木村「そんなナチスのホロコーストを見た彼らは、かつてあった理性万能主義の限界を感じ取りました。その理性によって、ナチスはユダヤ人を迫害し、大量の兵器を開発していたのです」


野獣「なんだか理性が道具的になっていますね…」


木村「その通りです。これに気づいたのがホルクハイマーとアドルノです。彼らは理性を「自然を支配する目的をなしとげるために作られた道具」として発展してきたことを指摘したのです」


三浦「だからナチスが生まれたのか…」


木村「ええ。こう言った「支配するための道具」として使われる理性を『道具的理性』と言います。彼らはこの道具的理性が、今では野蛮なものに陥っていると非難したのです」


野獣「ナチス怖いな~とづまりすとこ」


木村「そんなホルクハイマーとアドルノが一緒に書いた本を『啓蒙の弁証法』と言います。この本の中で、彼らは"自然を支配しようとする集団が、第二の自然になるのだ"と言い放ちます。つまりナチスは第二の自然だったのです」


三浦「これが人間を支配しようとするのかゾ…」


野獣「自然を支配するのは人間。しかし人間は第二の自然に支配される。だからファシズムが生まれたのか…」


木村「そうです。ですから彼らは道具的理性を批判し、この第二の自然も非難したのです」


野獣「第二の自然なんか必要ねえんだよ!」


木村「そして、ここで出てきたのがフロムです。彼は著書『自由からの逃走』で、「人間は自由を手に入れたが、全ての行為には責任が伴う。だから人間は自由から逃げ出し、何かしらに属するのだ」と分析したのです」


三浦「これはサルトルでやったゾ」


木村「こうした"自由から逃れるために外部の権威に服従し、命令に従うことで責任から逃れようとする"ことを『権威主義的パーソナリティ』と表現します。人間は自由への闘争が終わったとき、再び不自由になろうとするんです。皮肉な話ですね…」


野獣「確かにヘーゲルはああ言ったけど、なんか悲しい話だな…」


木村「この権威主義的パーソナリティのせいでファシズムが生まれたのだ、とフロムは言います。自由からの逃走とは、再び不自由になって責任から逃げることだったんです」


三浦「この情けない姿……親が見たら泣きますよ……」


木村「そして、先程ホルクハイマーとアドルノは道具的理性を批判しましたが、理性はほかにも『対話的理性』があるのだ、と言った人がいます。その人こそハーバーマスなのです」


野獣「でも理性は道具的理性になった以上、対話的理性なんて無いんじゃないのか?分裂したのか?」


木村「確かに人間は、自分の意見を押し付ける道具として理性を使います。だからナチスが生まれました。しかし、誰かと話すことで考えを改められることも理性によるのではないか、とハーバーマスは考えたのです」


三浦「ソクラテスも他人と話す事で相手の無知を気づかせていたゾ…」


木村「こうした対話的理性によって、今まで作られていた世界こそが『市民的公共圏』です。この市民的公共圏があったお陰で、僕たちは言論や討論を通じて思想を言い合いました。しかし、やがて目的を達成するためだけの『システム合理性』が、こうした市民的公共圏を破壊したのです」


野獣「このシステム合理性ってやつが道具的理性なのか…」


木村「ですから、このシステム合理性は僕たちを支配しようとしています。現にナチスもそうでした。ですからハーバーマスは、破壊された市民的公共圏を復活させようとしたのです。何故なら、相手と討論したりすることで、互いに考えを改め直せるから。こうした合理性を『コミュニケーション的合理性』と言います。


三浦「(システム合理性)出て行け!出て行けと言っている!」


木村「ですから、ハーバーマスはコミュニケーション的合理性…もとい対話的理性を肯定したのです」


野獣「確かに道具的理性はアレだけど、対話的理性は素晴らしいですね(小並感)」


木村「また、このファシズムを徹底的に批判したのがオルテガです。彼は主著『大衆の反逆』の中で『大衆』をボロクソに言います。確かにニーチェも畜群本能を批判しましたが、オルテガは血も涙もないほど言います」


三浦「大衆くんかわいそう()」


木村「事実、大衆が社会的権力を握っていますが、一部は有能であれど、大多数は無能です。こうした大衆の中にいる『大衆人』が、自分の権利を主張するだけして、自分は何もしない様子にオルテガは怒ったのです」


野獣「つまり、自分は無能だと知っているにも関わらず、それを開き直っている奴らが許せないんだろ?」


木村「ええ。彼はこう言った人たちを『慢心しきったお坊ちゃん』と呼んだのです」


三浦「草」


木村「そんな彼が一番恐れた事は、無能な大衆が国家の頂点に立ち、権力を好きに操る事です。これこそが『大衆の反逆』なのです」


野獣「でも、そんな著書を書いた人が拍手されるとは思えないけどなぁ…」


木村「確かにオルテガは余り快く受け入れられていません。研究に没頭する科学者を『無知な賢者』と呼んだりする、一種の『風が吹けば桶屋がもうかる』的な内容がありますからね。ですが、オルテガの言う『大衆人』と言う要素は今にでも通じるんじゃありませんか?」


三浦「権利だけを主張して、自分は何もしない…現代にもいるゾ」


野獣「大衆人は†悔い改めて†」


木村「今回はここまでにします。近代化が進むにつれて、新しい哲学が生まれます。精神分析しかり、ファシズムしかり。こう言った考えを経て初めて、僕たちはどうしなきゃいけないのか、徐々に分かってくるのではないのでしょうか」

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