プラグマティズムレイプ!有用と化した空手部
木村「前回はニーチェについてやりました。彼は形而上学や神などと言った超然的なものを否定し、大地などの物質的なものを説きました。これと同じように、形而上学などと言った超然的なものを批判し、物事の中から真理を見いだそうとする動きがありました。この動きは、知識は物事の動きの結果を知っただけに過ぎず、それが有用であれば真理と見なそうとします。こう言った思想を『プラグマティズム』と言うんです。詳細は後で説明します」
野獣「今まで真理は神や形而上学に宿っていたけど、それを否定して、我々の眼に見える物々に真理が存在するのだ、って言いたいんだろ?」
木村「ええ。それは、『何かについての知識』は『何かにどのような動きがあって、結果的にそれがどうなるかと言う知識」だと言うんです。例えば「自分は氷について知っている」と言うことは「氷そのもの」について知っている訳ではなく、「氷に触ると冷たい」とか「温めると溶ける」などの『結果』について知っているのです」
三浦「つまり、たとえ氷だとしても、触っても冷たく無かったり、温めても溶けたりしなかったら「氷」じゃないのかゾ?」
木村「はい。…我々が知っている事は、"どんな行動"がされて"どんな結果"になるか、と言う事なのです。決してそれそのものについて知っている訳ではありません」
三浦「あくまでも道具的に解釈したのか…」
木村「今、三浦先輩が仰ってくれました。…つまり知識とは、行動の結果の予測に過ぎないのです。ですから「氷を知っている」と言うことは、「冷たい」「氷は溶ける」と言う事を知っているだけなのです」
野獣「はえ^~」
木村「今言ったように、知識と結果を結び付けて考えたのがパースと言う人物です。また、こう言った考え方を『プラグマティズムの格率』と言います。そしてこの人物の思想を広げたのがジェームズです。彼は、知識をもとに行動を予測して得た結果が有用であれば、それは真理であると考えたのです」
野獣「要するに、役立つ知識こそが真理なんだろ?」
木村「その通りです。この考え方を『実用主義』と言います。しかし、後に出てきたデューイと言う人物は『役立つ知識は道具であり、真理では無い』と考えます。つまりパース哲学の「真理」を「道具」に置き換えて考えたのです」
三浦「知識自体には価値はないのかゾ?」
木村「そうなんです。…こう言った道具的な考え方を『道具主義』と言い、実用主義とは対立の意を為します。そんなデューイですが、人間の知性は「道具」だと考えたのです。つまり知性は、人間が問題を把握しては解決しようと役立つ道具に過ぎないのです。こう言った道具の有用性を持つ知性を『創造的知性』と言い、この創造的知性を身に付けるための勉強こそが『問題解決学習』なのです」
野獣「知性を道具化したことで、勉強はそれを操るためのものだ、と考えたんスね…」
木村「しかし、知識は結果を予測することです。多くの経験を経て、初めて創造的知性を得られるのです。これを『経験主義教育』と言うのです」
三浦「こう言った経験主義教育はイギリス経験論の影響を少なからず受けているよな…」
木村「いいや、この思想そのものがイギリス経験論の影響を受けているのです」
三浦「あっ、そっかぁ…」
木村「最後になりましたが、今言った三人を代表するような「知識と結果を結び付け、得た知識を有用として考える」思想を『プラグマティズム』と言います。…ですが、最初の提唱者であるパースはジェームズの考え方を嫌い、自分の思想を『プラグマティシズム』と呼び、区別しました。ですから一概的にはプラグマティズムとは言えないのですが、大まかな考え方としてはプラグマティズムです」
野獣「しかし、どうしてパースはジェームズの考え方を嫌ったんだ?」
木村「ジェームズが浅はかな理解をしていることを気に食わなかったらしいですね。…余談ですが、パースはジェームズは家族ぐるみの付き合いをしていたほど仲が良かっただけに、ちょっと驚きですよね」
三浦「そうだったのか…」
野獣「ラブアンドピース!!みんな、喧嘩なんか止めようよ!!」
木村「…ここでプラグマティズムは終わりにします。続いてはベルクソンです。彼は時間について考えたのですが、ベルクソンは"時間"を『我々が生き続けている"持続"』だと考えました」
野獣「確かに途中で切って離されることは"死"以外に無いもんな…。そして死んでしまったら、時間を感覚できなくなる」
三浦「俺らが音楽を聞いてるときも、わざわざメロディを分離しないで、流れの中でメロディを捉えるよな」
木村「そうです、先輩がた。こうした思想から、ベルクソンの考えは『生の哲学』と呼ばれます。また、我々の意識は時間的に持続するものだと考えたのです。つまり時計とは、本来数値化できないものを無理やり数値化して表す虚構そのものなのです」
野獣「俺らの意識は持続している、って言いたいんだろ?」
木村「ええ。こうした意識と時間の考え方を『純粋持続』と言います。これは人間だけでなく、宇宙も持続するのだとベルクソンは述べます。宇宙も持続する以上、進化し続けます。よって生命は宇宙の進歩によって誕生したと考えたのです」
三浦「俺らは宇宙の持続によって誕生した産物だったのか…」
野獣「なんか神秘的ですねクォレハ…」
木村「こうした宇宙論的な考え方を『生命の躍動』、言い換えて『エラン・ヴィタール』と言います。また、この躍動は社会にも通用するのだ。とベルクソンは気づきます。それは神秘や愛と言ったものが社会や道徳を躍動させ、排他的な閉鎖社会から開かれた社会に躍動させるのです。この躍動を『愛の躍動』、換言して『エラン・ダムール』と言うのです」
三浦「エラン・ヴィタールとエラン・ダムールがごちゃごちゃになってしまいそうだゾ…」
木村「確かにどちらも似ていますからね。…今回はここで終わりにしますが、前半のプラグマティズムと後半のベルクソンは見事に対立しています。これこそが正に哲学だ、って思わせてくれます」
野獣「物質と神秘…確かに互いに相容れないなぁ」
木村「だから僕は哲学が面白く感じるんです。正解なんて無い以上、こう言った考え方を見るのは面白いです」




