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下町魔女は不運です。しーずん2☆ プレ1話 Gallery Cafeオンディーヌ

8月。午後4時。

気温46度にもなる東京の旧:東高円寺をシキは歩いていた‥。

「ざけんな。クソが。」陽炎が立ち昇り、むせ返るような湿気が襲ってくる。


メガストラクチャー東京天蓋のギリギリ範囲内だが、

人工太陽もご丁寧に照り付けているので却って暑い‥。

当然快適な空調が機能しているのは天上都市のみである。車もまばらの中、

その店は確かに見えてきた。


Gallery Cafe オンディーヌ。


今日の待ち合わせ場所である。占い師仲間の遠坂楓とおさか かえで

の行きつけの店らしい。道路から若干店内が見える。

西洋人形が置いてあるカフェのようだ。


ドアを開けた瞬間、店内に溜まっていた冷たい空気がむわっと顔に当たった。

外の45度地獄から一気に20度以上下がった体感に、シキは思わず

息を吐く。


「いらっしゃいませ」

カウンターの奥に立つ店主の男性は、40代半ばくらい。

少しぎこちない笑顔を浮かべながら会釈してきた。

白いシャツに黒い帽子、整った銀髪の髪型だが、どこか疲れた影がある。


Gallery Cafe オンディーヌ——西洋人形が展示スペースに並び、

アンティーク調の家具や書籍が置いてある、ちょっと浮世離れした雰囲気のカフェだ。


奥のカウンター席に、すでに遠坂楓が座っていた。

黒髪を肩まで伸ばした、割と整った顔立ちの女性。


しかし今日は明らかに浮かない顔をしている。

手元のアイスコーヒーをかき混ぜる指先にも力がない。

シキはカウンターの隣の席に腰を下ろしながら、ぼそっと言った。

「よお、楓。暑い中呼び出しやがって。……ってか、その顔どうした。客の顔じゃねえぞ」


遠坂楓は小さくため息をつき、グラスを置いた。

「シキさん……今日も不運、ですか?」

「は? いきなり何だよ」シキはカウンターに肘をつき、店主に視線を向けた。

「とりあえず、冷たいアイスコーヒーを。氷多めで下さい。」

店主は頷き、静かに氷を入れ始めた。


楓が声を落として続ける。

「実は……最近、運気がガタ落ちだし占いの当たる率が急に落ちてるんです。

身近なひとや飼ってる猫がいなくなったり、常連さんもみんなツキが落ちて離れる一方だし、

占い師として完全に信頼失ってる気がして」


シキはメガネの奥で目を細めた。「ふーん。で、私に相談ってわけか。

下町の零れ魔女に占い師が相談とかな。まあ私も占いはするけどな」


店内のBGMが、静かなジャズを流し続ける。

「お待たせいたしました。」

店主がにこやかにアイスコーヒーのグラスを置く。

シキはストローを咥えながら、ぼそっと呟いた。

「……この店、なんか…。いい店?‥だな。人形も全部手作りっぽいし。」


アンティーク時計のチクタク音が微かに聞こえている。

遠坂楓が少し不安げに店内を見回すが、店主は薄い笑顔のまま、

ゆっくりとグラスを拭き上げていた。

(つづく)


挿絵(By みてみん)

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