終局‥。放射
アサクラS3LV研究所・最深部ラボ。
冷たく黒を基調とした機械的な空間。
無機質な照明が、複雑に絡み合う管やモニターを冷ややかに照らしている。
部屋の中央に、チヨメのための抑制装置が静かに待機していた。
シキは先ほど完成させた黒くどろっとした試薬の入った小瓶を、
静かに差し出した。ヤマトアサクラが緊張した面持ちで、
それを受け取る。
隣に立つチヨメも、青白い顔で小さく震えていた。
スタッフの一人が慌てて近づいてきた。
赤いバイザーをくいっとあげながら
「成分分析をさせてください! 安全性の確認が必要——」
シキは即座に手を挙げて制した。「……残量が少ない。それに分析してる時間はねえよ。
少し水で溶いて今すぐ飲ませろ。」
ヤマトは一瞬迷ったが、すぐに頷いた。「……わかった。シキを信じるよ。」
亜駄夢・三島は傍らから静観している。
チヨメは震える手でスタッフから試薬の入ったコップを受け取り、
小さく目を閉じて一気に飲み干した。
チヨメ「ぶえ‥‥シキちゃん…不味いこの薬。」
「……っ……!」
次の瞬間、チヨメの体が跳ねた。
ドクン・・・。チヨメから一気に奔流が溢れ出し、
目が白く輝き、部屋の空気が歪む。
チヨメ「……あぁぁ……あああああああああああああああああああああ!」
異常能力の暴走の兆し。体からも白いモノ。手??
が微かに発現し、うねりながら放射をはじめる。
待機していた周囲のスタッフが制御装置のスイッチに手を伸ばす。
ヤマトが即座に叫んだ。「制御装置、出力MAX!!」
同時に、シキが低く小さく呟きながら手を翳した。
鎮静化の魔術が、青い淡いタロット状の光と共にチヨメを包む。
チヨメの体が激しく震えた後——音もなく、静かに倒れ込んだ。
ヤマトが慌てて駆け寄り、チヨメを支える。
ラボスタッフがモニターを確認する。
「……チヨメ様のバイタル、安定したようです……!
加えて異常値のアナフィラキシーがおさまり、暴走兆候は現在は軽微です。」
「‥‥!」
ヤマトは安堵の息を吐き、チヨメを抱えながらうつむく。
12時間後 研究所内のゲストルーム
シキがベッドに腰掛け、やさぐれた顔でブルーのスライムランプの
光る天井を眺めていると、ドアが静かに開いた。
チヨメとヤマト、そして数名のラボスタッフが揃って入ってくる。
チヨメはまだ少し顔色が悪いものの、目がだいぶはっきりしていた。
彼女はシキの前に跪くように座り、小さな声で言った。
「……シキちゃん……
本当に、ありがとうございます。
なんだかすごく……気持ちが落ち着いたみたい。
シキちゃんがいなかったら、大変なことになっていたと思います……」
チヨメの目から、ぽろりと涙が零れた。
シキ「いいんだ チヨメ。お兄ちゃんから後でしっかり
追加料金もらうからな‥‥。気にすんな。立ってくれ。
アノマリーの能力がこれで消えたわけじゃねえが、
少なくとも、大人になるまではだいぶ安定するはずだ。
お前が制御できるように心と体を鍛えろ。チヨメ…。」
「‥‥うん。」チヨメは涙ぐみながらもしっかりと頷いた。
ヤマトも隣で深く頭を下げた。
「君は僕たち兄妹の……いや、アサクラの真の友人だ。
色々と迷惑をかけて、本当にごめんね。今度は僕たちが君の力になりたい。
心から礼を言うよ。ありがとう‥‥。」
シキ「ちょっと綺麗すぎる場所も居心地が悪い。
今度うちの近くの定食屋でメガ盛りとんかつ
クソ豚野郎の並みを奢れよ?それからな。
アタシの部屋に仕掛けてある監視装置。全部撤去しろ
‥‥あとな。記録している今までのデータもお前の責任でちゃんと消せよ?」
ヤマト「…ああ。勿論だよ。」
スタッフたちもシキを称える様子で、思わず拍手しかけた。
その瞬間、シキが手を挙げて制した。
「……待て。拍手はなしだ。社内報向けの撮影もなしだぞ?!」
スタッフたちが一瞬固まる。シキはげんなりしながら、ため息をついた。
「……ったく、いい雰囲気だからってお前らコーポ共が調子に乗るんじゃねえよ。」
ヤマトとチヨメがクスっと笑う。
ゲストルームの静かな空間に、微かな笑い声が漏れた。
(つづく)
アサクラヤマトと CASIO G-SHOCK DW-5600BBR




