08話 次はどうする?
俺たちは奴を倒した後、しばらくその場に座り込んでいた。
戦闘の余韻がまだ残っている。
耳鳴りのような静寂、爆発の焦げ臭い匂い、床には破壊された奴の残骸が転がっていた。
当時の俺は、それを見て全身の力が抜けそうになっていたが、休んでいる場合ではなかった。
俺達の目的は、星を脱出するための宇宙船を探すための遠征に必用となってくる食料を手に入れることだったのでな。
少し休憩を取った後、俺達は食料庫へと続く通路へと歩き出した。
当時のあの通路は、当然のように静まり返っていた。
先程までの激戦が嘘のような静けさ、あの静けさはまじで不気味だったものだ...................
そんなことを思いつつ、俺達は独特な金属錆びた匂いのする通路を慎重に歩いていった。
やがて、歩みを進めていくとそれは現れた。
分厚い金属製の扉、それは明らかに今まで廃墟内で見てきた扉とは違った。
それはまるで、この先にあるものを必死に守ろうとしている扉であった。
あの扉を見た瞬間、当時の俺の心は、宝物を見つけた子供のように高鳴っていた。
あの時の心情を言葉で表すならば、「............やっと、たどり着いた!」、そんな感じの言葉だろう。
俺は、興奮のあまり扉に駆け寄り、取っ手を思いっきり引いた。
だが、あの扉はびくともしなかった。
もう一度、力いっぱい引いてみるも、筋肉が軋むだけで全く動くことはなかった。
それはまるで、大地そのものを引いているような感覚でもあった。
そうなれば、次にやることは二人で引くことである。
「二人ならどうだ!」
当時の俺は、振り返ってカリウスにそう言った。
だが.......................
「少し離れていてください........................」
カリウスから帰ってきた言葉は、静かな言葉であった。
しかし、あの時のカリウスの姿は、静かとは真逆の姿だった。
なぜなら、俺の振り返った先で見たのは、ロケットランチャーを噛めるカリウスの姿であったからだ...............
まじで、あの光景を見たものは言葉を失うと思う...................
「このタイプの扉は、人力で開けることなんて絶対に無理です!」
カリウスは、照準をあわせながらそう言った。
そして.........
「なので、ぶっ壊しますよ!!!!!!」
今書いていて思うが、カリウスがこれから先にこの国の冷静な宰相になるなんて、本当にすごいものだ......................
カリウスは、俺が扉から離れたことを確認すると、ロケットランチャーの引き金を迷いもなく引いた。
直後に、轟音、爆炎、衝撃波が通路全体を揺らした。
あれが爆発した瞬間、耳が一瞬、何も聞こえなくなったのを今でも覚えている。
まじで、あれは二度と経験したくない感触だ.........
煙が晴れ、扉の場所が見えてくる。
俺が恐る恐る確認すると、そこにあったはずの重厚な扉は、無惨にも木っ端微塵に吹き飛んでいた。
それは、完全なる「ゴリ押しによる突破」だった。
カリウスは、何事もなかったかのように俺に言う。
「さあ!中に入りますよ」
そして、迷いもなく食料庫に踏み込んでいった。
それを見た俺も、カリウスの後を追う。
中に入った瞬間、俺は思わず息を呑んだ。
中にあったのは、巨大な空間。
天井は高く、奥が見えないほどに広いものだった。
そして、無数の金属製の棚が、整然と並んでいる。
そこには、尋常じゃないくらいの缶詰が、整然と収められていた。
それはまるで、あの廃墟の最後の遺産のようなものだった。
「...............まだ、ほとんど手つかずですね.........」
カリウスが静かに呟き、一つの棚に歩み寄った。
その棚には、リンゴパイと書かれていた。
カリウスは、棚に置いてある缶詰を一つ取り出し、それをゆっくりと開けた。
中から現れたのは、金色色に焼き上げられたパイ。
あれは信じられないほどに保存状態が良かった、さすが異世界とでも言うべきか..............
カリウスは、すぐさまそれを口に含む。
すると次の瞬間には、カリウスの表情は緩んでいた。
「うっま.........!」
そんな様子を見ていたら、誰だって我慢ができるはずがないだろう。
当時の俺も、その様子をみて缶詰を取り、気づいたらそれを開けていた。
そして、それをそそくさと口の中に放り込む。
その瞬間、俺はこの世界でもトップクラスの衝撃を受けた。
それだけ、あのパイは尋常ではないくらい、まじで美味いものであったのだ.................
気づいたときには、俺はそれを完食していた。
そして、俺は満足感に包まれながら言った。
「せっかくだし..............もうちょっと廃墟の中を探索してみようか!」
「わかりました!」
食糧庫から出たあと、しばらく進むと、一つの看板が目に入った。
「資料室」
その文字を見た瞬間、俺の胸は高まった。
なぜかって? 当時のこの世界に転生したての俺にとって、この世界についての情報は喉から手が出るほどに手に入れたいものだったからだ。
俺達は早速資料室に入っていく。
しかし、たくさんの資料があると勝手に思い込んでいた俺が目にした光景は、あまりにも”残念”かつ”異様”な光景だった。
あの部屋の中にあったもの、それは、完全にまっ黒焦げになって炭化していた本棚らしきものの残骸と、徹底的に破壊されていて原型をとどめていないパソコンだった。
カリウスが呟く。
「なんというか..................情報を必死に隠していたような感じですね」
「ああ......................」
当時の俺はひどく落胆した。
だが、当時から俺達は諦めが悪かった。
情報が残っている可能性など絶望的な部屋、それでも俺達は諦めずに探索を続けた。
床、まっ黒焦げの棚、落ちている残骸、あらゆる場所を調べた。
しかし、探しても探しても何かが見つかる感じはしない。
「だめか......................」
そう思いかけた、その時だった。
「ありました!!!!!!」
カリウスがそう言いながら、走ってきた。
手に握られていたのは、一枚の紙。
「どうした!?」
俺が尋ねる。
「地図です!!!」
そのことを聞いた瞬間、当時の俺はその場で跳び上がるほどに驚いた。
俺達はすぐさま地図を横に広げる。
古びているが、判読はできる。
俺は、指で古ぼけた地図をなぞりながら言った。
「俺達の探しているのは宇宙船だ、使えるやつがありそうな場所を探そう............」
「はい!」
俺達は、真剣に見入った。
そして、少し立つとある場所を見つけた。
「マラナ宇宙港」
そこは、地図上で確認できる範囲で盆地の中にあり、周囲を山で囲まれていた。
宇宙港に通じる道は、山をぶち抜いているトンネルのみ。
俺はカリウスに言った。
「ここ、行けたりしないか............?」
すると、カリウスは少し嫌そうな顔をした。
「行けるには行けますが、かなり大変です.............................」
「トンネルを通っていくだけじゃないのか?」
「行けるには行けるんですけど、とても大変なんですよ」
トンネルを通っていくだけなのに大変と言うカリウスを不思議に思った俺は聞いた。
「トンネルを通っていくだけじゃないのか?」
するとカリウスはため息ついてこう言った。
「数年前に行こうとしたんですけど、トンネルが崩れっていて通れなかったんですよ.................」
さすがに、これにはがっかりするしかなかった。
しかし、カリウスは地図の一角をさしてこう言った。
「別ルートはあるにはありますが...................」
カリウスの指差す先には、「下水処理場」と、書かれていた場所が指さされていた。
「地下の下水道を通っていけば、一応行くことは出来ます... ただ..............」
カリウスの声が少し重くなる。
「下水道の中には、ミュータントがいます...................」
ミュータント、それは、荒廃したこの星の環境で突然変異を起こした、異形の化け物である。
俺達の間に沈黙が流れた。
数秒。
いや、もっと長かったかもしれない。
やがて。カリウスが先に口を開いた。
「..............まあ、行くんですよね?」
俺は迷わなかった。
「当然だろ!!!!!!!!!!!!!」
その言葉を聞いたカリウスは、少し笑った。
「そう言うと思っていましたよ.................」
そして、立ち上がった。
「そうとなれば、まずは準備です。 食料を運びましょうか!」
俺は頷いた。
食料庫の番人を倒したと思ったら、次はミュータント。
俺達の、あの星を脱出するための戦いは、まだ始まったばっかりであった。




