1-1
学校に行きたくない日がある。自分のことをしたかったり、ゲームをしたかったり、友達と上手くいかなかったりしたからだ。突然皆から無視されるのではないか、と漠然とした不安もある。というわけで、私は学校を休んで、公園でスマートフォンをいじっていた。
ドラゴンを育てるゲームだ。友達の一人は希少価値の高いドラゴンを手に入れ、私は彼の自慢を聞かされた。でも、私がもっと強いドラゴンを育てたら、その日彼は口を聞いてくれなくなった。漠然とした不安が生まれた。このまま無視されるのかな。私の責任なのかな、と。でも友達のことに腹を立てることもあった。
ブランコに揺れながら、画面に映るドラゴンを見つめていた。ブランコの金具部分がぎいぎいと音を立てながら、私は少しだけ揺れていた。転んだのか、分からないけど、私の意識は突然途切れてしまった。
目を覚ますと、白い壁があった。壁だと思ったのは白い天井だった。ベットに寝ていたから、私は何かが起きて、病院に運ばれたと思ったのだ。静かだった。
物音一つしない。廊下を忙しく走る看護師の気配はしない。静かな病室と思ったが、病院にしては機材が何もなかった。ベットは病院のベットらしくなく、普通の家具屋に売っている3万円くらいの代物に思えた。
しかしながら私が異常だと思ったのは、自分が冷静だと思ったことだ。夢の中?
でも夢にしては、そこにはリアリティがあった。空気感があり、浮遊感はなかった。冷静過ぎるのも夢と思えないところだ。
部屋の広さは、八畳くらいだろうか。私の家の自分の部屋と同じくらいだ。ベットがあり、勉強机があり、窓があり、棚があり、少しの空間がある。それが私の部屋だ。大した広さは変わらない。でも何もなかった。白い壁と白い天井があるだけだ。
何もなく、スマートフォンも持っていなかった。ポケットの中に何も入ってないのだ。鞄も持っていない。叫びたくなる、とは思わず、この場所を居心地良く思ってしまうほどだ。一息吐きたくなる。
このまま、この部屋に閉じ込められる?
いや、私は夢の中にいるんだ、そう思ってベットに横になった。
漠然とした不安は、現実世界よりも小さかった。そして、漠然とした不安は目覚めると向こうからやってきたのだった。
「起きてください」
目を開けると、白肌をした少女の顔があった。私の顔を覗き込んでいる。瞳が大きい、くりくりとした目をしていた。口は大きくて、私と同い年に思えた。
「誰ですか?」
私が尋ねると、少女は口元を震わせた。
「それを教えてください」
彼女はそう言って、私の肩を揺さぶったのだ。




