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おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(5)獣人の国レヴィアスへ ヒロインが令嬢なんて誰が決めたんだ?

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戦闘とは(1)

朝焼けが目にしみる。

三人は草原の木の陰に腰を下ろした。

オリテの西側の旧街道は、もう寂れていて誰も通らない。

見晴らしがいいので、もしも追ってが来たとしてもすぐに分かるだろう。


「食うなら食え」

レインハルトが仏頂面で渡したビスケットを、モルフェは礼も言わずに受け取った。


「礼も言えないのか?」

とレインハルトが絡み始めたので、ノエルはあわてて間に入る。

モルフェは黙って、紙に包まれたビスケットをかじり始めた。

少しは食欲が出てきたようだ。

ノエルはモルフェの肩に、ポンと手をのせた。


「気分はどうだよ? 病み上がりなんだ、あんまり無理すんな」

「……お前がやったくせに良く言うな」

「はは、それはお互い様だろ」


レインハルトが柄に手をかけている。

物騒だからそろそろ辞めて欲しい、と思いながら、ノエルは本題を切り出した。



「あのさ、さっき言ってたことだけど。防御魔法って、もしかして『バリア』だけじゃないのか。学院ではそう習ったぞ。バリアの威力が増すやり方もあるって」

「少しはあってるが、ほぼ間違ってる」

「えぇ……」

「お前らお貴族どもが通いなさってる学院とやらでは、殺し合いなんかなかっただろう。やりあう必要がねぇんだ。一生な。役に立たねぇことを集団に教えるわけがない」

「じゃあ、バリア以外にも防御魔法があるのか」

モルフェがビスケットをごくり、と飲み込んで言った。

「さっきからバリアバリアってバカの一つ覚えみてーに言うけどよ。お前はバリアって何だと思ってんだ?」


レインハルトが柄から剣を引き抜き始めた。

急いで話を終わらそうと、ノエルは口を開いた。


「えーっと? 防御の呪文だろ?」

「何を守るんだ? どんなイメージか言ってみろよ」

「えぇー……んー……たとえば、自分の前に張る、防御のネットみたいな感じ?」

「それだと突然の攻撃に反応できないんじゃないか。たとえばこんなふうに」



モルフェが目にもとまらない速さで飛び上がった。


(うお!?)


思わずノエルは身をよじって躱そうとした。

鼻先を風がフッと過ぎる。


モルフェは小さなナイフを構えてノエルの喉を狙っていた。

が、刃は出ていない。

しかし、モルフェの首元には、鈍色の刃が当てられていた。

レインハルトだ。


「あと一歩でも動くそぶりを見せたら即刻斬り落とす」

美青年の淡々とした脅しに、ノエルは思わず股間の辺りがヒュンッと冷える錯覚に陥った。

いや、もう令嬢なので肉体的にはそんなはずはないのだが、精神的に非常に堪える。


だが、モルフェには全く精神攻撃は効いていないらしい。

飄々とした顔で言ってのける。

「そりゃあちょっとご主人様に過保護なんじゃねぇのか?」


レインハルトのまとっているオーラが五度くらい下がった。

「俺はお前のことは本当に気に入らない」

「奇遇だな。俺もだ」



(なんでケンカするんだよぉ)

ノエルはため息をつきたくなった。

気まずい思いをするのは自分ばかりである。



(最近の若者はマイペース過ぎるぜ……)



どうしようかと考え始めたノエルに、刃物を突きつけられたまま、モルフェは余裕さえ浮かべて言った。

「おい。なんで今、お前はバリアを詠唱しなかった」

「え? そりゃあ、あっというまだったから……」

「授業じゃねぇんだぞ。本当の戦闘ってのはあっというまに始まって、終わる」


モルフェは後ろ足で、一瞬の隙を突いてレインハルトの胸元を蹴り上げた。


「ぐっ……!」

よろけたレインハルトを鼻で笑って、モルフェは言った。

「お前はそこで指くわえて見てろ」



モルフェはナイフを懐にしまって、素手をノエルに見せつける。



「一応、解放してくれたことには礼をしなきゃいけねぇ。お前の使えない『網』を、『盾』にしてやるよ」

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