表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(1)姫薔薇の妖精ノエル・ブリザーグ5歳 レインハルトとの邂逅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/278

豚の襲撃

「キャアアアアッ!」

女性の悲鳴とグラスが割れる音。


ノエルは無表情で素早く立ち上がった。

悲鳴や緊急事態には状況確認が最優先だ。

「何事ですッ?」

シーラが叫ぶ。


窓ガラスが割れ、獣の鳴き声がする。

パーティの参加者たちが叫び合っている。


「オークの群よ! 庭から中に入ってきたわ」

「どうして、こんな日にッ」

「騎士団は!?」

「玉座に近付けるな!」

「押すな! 私は貴族だそ! 玄関を開けろッ」


シーラが顔を強張らせた。

「ノエル様! オークのようです。お気を確かに」

「逃げるぞ、シーラ」

「お待ち下さい! 旦那様や奥様のご指示をッ」

「お……わ、私のような子連れで、シーラがすぐに遠くまで行けるとも思わない。父親と母親を待っていたら遅い。早く出るにこしたことはない。大人は何とか避難するだろう。それにパニックになった集団は危険だ。オークの群は庭からこっちに向かってるんだろ。一階のどこかの窓から外に出て、庭と反対方向に向かって走るぞ」


シーラは目を見開いた。

しかし、すぐに真剣な表情で頷いた。

「わかりました」


ノエルは靴を脱いで手に持った。

「さあ、早く。こっちだ」

「ノエル様、どうして分かるのです」


警官の職業病で、建物に入るとき、出口と避難経路と窓と階段を確認する癖があるのだ、とは言えない。


「……偶然、覚えていたの」

と言ってごまかす。

それよりも、今は逃げなければならない。


オークは人型をしているけれど、知能が低く、やっかいな魔物だ。

近頃では集団発生して、町にまで降りてくるときがあるというが、まさか宮廷にまで入ってくるとは。


ノエルはシーラと手に手をとって、ごったがえする廊下に出る。

紳士淑女たちが泣き叫び、足を踏み合ってののしり合う姿はさながら地獄絵図だ。


突き当たりにたどり着くと、シーラが窓を大きく開け放った。

すぐそこは裏庭の地面だ。

シーラに引き上げてもらって、ノエルは自分も外に出る。


「森の隣のあぜ道を抜けて、お屋敷の方へ向かって歩きましょう」

とシーラが少し落ち着きを取り戻して言った。


すると、シーラの顔に陰が落ちる。

ノエルはぎょっとして目を見開いた。

まさか、そんな。


一回り大きなオークが、牙を剥きだしにして、シーラの隣に立っていた。

「グォォォ……!」

顔から首にかけて、入れ墨のようなあざがある。


シーラが隣を見て悲鳴をあげ、駆け出す。

それでも、オークの方が速かった。

シーラの二の腕をひねりあげて掴む。


「イヤァァァ!」

「シーラ! やめろ、はなせっ!」


オークが噛みつこうと口を開く。

シーラは振り払おうとするが、オークの力は人間の5倍だ。

太刀打ちできる相手じゃない。


「お嬢様! お逃げ下さい!」

シーラは懸命に叫んでいた。

「くそ……!」


ノエルははいていた靴を手に持ち、思いっきりオークの眼を狙って投げつけた。


「グゥ!」

オークは顔を振り払った。

その瞬間、パッとシーラは身を引く。

だけど、シーラの二の腕をオークは馬鹿力で掴み、離そうとしない。

シーラが苦痛に顔を歪める。


(どうすればいい。どうすれば)


ノエルはオークとシーラの隣で考えた。

大声で助けを求めれば誰かは来てくれるかもしれないが、オークの群れを悪戯に刺激し、呼び寄せてしまったら万事休すだ。


オークの手に力がこもる。

シーラの二の腕を今度は両手で掴んだ。


「う、ああぁぁぁぁっ!」

「やめろっ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ