襲撃
「ちょっと、大変だったのよさっきは、お店の人は注文を受けたあと料理を運んだ覚えがなかったのに運ばれてて、料理を運んだはずの店員は姿を消してるし、騎士団が調査を始めるし、メッチャクチャなのよっ!!」
「だろうな………いいかサンティシナ、やばい相手に目をつけられたのかもしれん。」
「ええっ………!!」
「店の店員に大胆不敵にもなりすま市、バレずにことを済まし、即座にその場から消え去り、挙げ句飛んできた矢から絶対に出るはずの魔力反応が一切存在しない、誰だか知らないが、下手な殺し屋の類ではないらしい。」
「なるほどね………もしかして。」
「詳細は分からないが、こんなことをされる覚えが今のところ盗賊を片っ端から潰したくらいしかない。」
俺はそう言って考え続ける。
奴らのことは、今は何もわかっていない、どうすれば奴らを撃退できるのか、俺は全く答えを出せずにいた。
「………何もわからない以上、次の襲撃でしっぽを出すことを祈るしかないか。」
???視点
「さぁ………次は、次はどうする?適当なゴロツキを雇って家でも燃やすか、狙撃もいい、いっそもう一回毒を盛れば、不意をつけそうだ………。」
「迷ってる風を装っていますが、その実、どうするかはもう決めているのでしょう?」
「流石だ、付き合いが長いからわかるか………」
「次は直接襲撃して、決着をつける。」
「今日にでも襲撃があるかも知れない、俺は家に帰って用意する、というかお前もこい、お前の家まで守りきれないぞ。」
「ええっ、流石に困るんだけど………。」
荷物はすぐにまとめろよというと俺はさっさと走り出す。
「あなたの家を守る三種の神器が、これだ、隠蔽魔法、探知魔法、防御魔法。」
「隠蔽魔法って………この家隠しちゃうの?」
「いや、そんな馬鹿な事はしないよ、今回は探知と防御魔法の2つを家にかける。」
「………しかし、コーイチそんな事出来るようになったのね………。」
「伊達に冒険者やってないからな。」
俺は家につくとすぐさまその準備を始める。
「防御魔法といったが、正確には結界魔法だ、探知魔法は敷地内に入ってくる相手を探知できるようにする。」
「ふむふむ。」
「これが、そうだ。」
俺はそう言って取り出したのは、よくわからないちんちくりんの機械である。
「なにそれ。」
「人造生物だ。」
「はぁっ!?これが?」
「見てみろよ。」
俺は蓋を開けると、中には青い炎が揺らめいている。
「これがそうだ、生物の錬成は体を作る部分がぶっちぎりで難しいんだ、腕一本生やすのでもBランクの魔法使いが一週間張り付かないといけない、それを五体すべて作るんだからな、だが、魂、それも仮の物なら別だ、魂は魔力の一種で出来ている、ましてこれは紛い物、ただ魔力を貯めること、魔力を放出する事、魔法を練ることに特化したものだ。」
「そんなのがあるの?」
「あぁ、ただし、高いけどな、でも魂しかないこいつなら魔力さえあれば24時間発動し続けられる、疲労なんて、感じる体がない始末だからな、まぁ魔力を注入するのも魔法を出させるのも専用の器具がいる、こいつだ。」
そう言って俺はカンカンと金属の機械の部分を叩くのだった。
「さて、俺が今魔力を全部注いでも、結界と探知を発動し続けられるのは5時間くらいだ、一回注入し終わったら1時間待ってくれ、また始めるよ。」
「………なんだか凄いことしてるのね。」
「そうだろう?結局、俺が最後に頼るのは魔法なんだよ………。」
「………疲れたし、腹が減った。」
「そういやカレーとパスタ食べずじまいだったしねぇ………。」
俺は椅子にもたれかかると、そのままボケっと宙を見る。
「………あ、そうだ、今回は私が作るわ。」
「マジか、頼む………。」
俺は適当にそう言ってついに眠り始める………。
「………うん、うまい。」
「でしょう?」
サンティシナは普通に料理を作っていた。
俺はガツガツと料理を消化していく。
あのお店のジャンクフードじみた感じはないが、別の家庭料理的な魅力がある。
「で?魔力注ぐのはどうなったの。」
「ちゃんと注いだよ、全部な、やつらをなんとかしないと明日からずっとこうだろうな………。」
「なるほどね………ていうか、冗談抜きで私あなたの部屋で寝泊まりするの?」
「………そういう事ですね。」
「ホウ?私はともかくコーイチはいいのかな〜こんな女の子連れ込んで〜。」
「………知らん!!」
???視点
「よし、来たな。」
「はい、騎士団が今までより騒がしいところでしたが、進路上の連中はそのまま通り抜けるか排除するかしました。」
「………これは、結界か。」
そう言って俺は手をかざすと、何かがぶつかる、物理的な結界による遮断か。
「これは、典型的な索敵魔法と結界魔法の組み合わせですな。」
「ああ、結界は脆いが、それを破壊するような魔法や武器を使えば索敵魔法に引っかかってしまう………典型的で、かつ強力な組み合わせだが、我々はいくつもの貴族の屋敷に侵入してきたのだ、この程度で止められると思ったか………。」
そういったあと俺は腰に刺してある針のような刃物のようなものを取り出す。
消去魔法によってこれに触れたあらゆるものを消去する魔法のメスだ、こんなサイズでも金貨100枚ほどするがね………。
俺はそれを結界に突き立て、慎重に切っていく………。
ここから先は気楽に喋りながらとは行かない、魔法で姿も音も魔力反応すら消して進んでいく。
俺達はさっとジャンプして二階の窓に張り付く、この間も当然索敵魔法を切り抜けるために魔力反応、姿、音、すべてを消して俺達は中に入る。
いた。
寝室の中のベットが膨らんでいるのが見える。
俺はさっと横に駆け寄り、ナイフを取り出す。
今にも突き立てようとしたその時、違和感を覚えた。
その違和感に気づいたとき、部下の一人悲鳴を上げ、そこには気を失っている部下とそこに寝ているはずのコーイチがいた。
コーイチ視点
ベットに人形をおいてごまかし、自分達は下の物置の中で隠蔽魔法で索敵をごまかしながら寝ていたのは正解だった。
『ねぇ、隠蔽魔法なんだけどさ、面白い使い方思いついちゃった!』
サンティシナにはお礼を言わないといけない。
そこで一言も発っすることもなく、狼狽えることもなく逃げることを試みたのは流石にプロだった。
俺の魔法はやつらの大半を即座に吹き飛ばすが、何人かそれを避けたものがいた。
「待ちやがれぇっ!!」
???視点
人形だ。
俺がそのことに気づいた直後に部下が吹き飛ばされる。
その魔法の弾幕を避けきった私はやつの脇を大胆にすり抜け脱出する。
「無事かっ!!」
「はいっ、しかし、かれらはっ………!!」
俺はあのとき魔法で仕留められた連中を思い出す。
その大半がCランク、Bに匹敵するものも存在した、俺が自らの手でスカウトし、世話をし、鍛え上げた精鋭だった。
惜しい奴らだったが、助けるわけにも行かない、割り切って考えてもらうしかないだろう。
「ヨシフッ!!奴は追ってきているか!!」
「はいっ!!凄まじい速さです、Bランクとは思えませんっ!!」
なるほど、その速度はAにすら匹敵するほどだった、騎士上がりの精鋭も冒険者に転職すればFから始まるから、実力とランクの剥離は珍しいことではない。
私とて真正面から立ち会えばBの最上位でしかない。
「追いつかれるっ!!ここで迎撃だっ!!」
俺はそう部下に言うと部下は足を止め、一気に戦闘モードに切り替える。
そして、やつはやってきた。
「………!!!」
俺はヨシフとともにやつに斬りかかるとやつはそれを剣で迎撃する。
速い、神速の速さだった。
俺もヨシフもかろうじて避ける、技術の方はいざ知らず、身体能力を使って馬鹿をやってくれる。
俺達はやつの脇をそのまま勢いで通過する、その時やつに攻撃を当てることはできなかった。
「きさまぁっ!!」
部下も続々と切りかかり、やつはスピードから生まれる圧倒的な対応力でそれをいなしていく。
部下の一人がやつの胸に剣を突き立てようとしたのが避けられ、その手を掴みやつは引き倒す。
「………?」
やつの性格から考えて、殺すものと思っていただけに拍子抜けだった。
やつは部下を鎖を生成する魔法で縛り上げると、残りの人間を片付けにかかる。
部下は三人同時に飛びかかりやつを殺そうとするが、次の瞬間には爆風が吹き飛ばしていく。
「なんだ……!!メガウィンドッ!!?」
メガウィンドはとりあえず作るだけ作られたが、風魔法は空気をぶつけるだけに、殺傷力が皆無で誰も使うことはない。
だが、やつはそれを地面に向かって発射し、四散する爆風で吹き飛ばしたのだ。
その衝撃はやつにも平等に訪れる筈だったがそこはうまく受け流し、宙に浮きながら体制を整えて着地する。
「………残りはお前たちだけだ。」
その瞬間、俺は前に突き飛ばされ、不用意に前に飛び出てしまう。
次の瞬間にはヨシフが私を引き戻し、俺の胴体が占めた一瞬前の空間を剣が通り過ぎる。
「また風魔法かっ………!!」
俺は不可視の攻撃をまともに避けられずどんどん食らう。
ただ真正面から撃たれる分には大ぶりな回避をすれば問題ない、しかしそれは横から、後ろから、意識の隙間をぬって当ててくるのだ。
「シールドッ!!」
俺とヨシフはシールドで全弾受ける、まともな殺傷力のない風魔法だ、初級でも簡単に受けることができた。
「ギガ・ウォーター。」
そうやつが言うと後ろで超巨大な水の塊が生成させ始める。
「ギガクラス魔法か………!!ヨシフ、上級シールドだっ!!」
上級シールドを二枚重ねにしてそれに俺達は備えた。
次の瞬間その超質量体は我々のシールドをギシギシいわしながら衝突する………。
「………はぁっ!?」
俺は起き上がろうとして体が拘束されていることに気がついた。
「今日は、殺さずに済んだ。」
「なんだと………。」
俺はやつを見上げる。
おかしい、やつは百人切りと異名をつけられるほどの狂戦士ではなかったのか。
俺は最初ヤツの姿を見たとき、奇代の虐殺者の姿とはこんな物かと拍子抜けしたものだ。
そして、自分の命を奪おうとする人間に指一本触れないとは、一体どういうことなのか。
「俺はな、疲れたんだよ、人を殺すことにな。」
「………そんな人間だったのなら、最初からやってはいない………。」
「そうだろうな………だが、現実になっちまったんだよ、できちまったんだよ。」
やつはそう言って悲しく微笑むと、真剣な顔で俺を見る。
「この先も、俺は人を殺すことがあるだろう、だが、斬る必要のない殺しは、もうしない、後悔するような殺しは、もうしない。」
「俺を斬ると、後悔するのか………。」
「ああ、いつかはわからないが、きっとするだろう。」
「………貴様は、ずいぶんとお優しいな。」
俺はそう言うと、再び目を閉じる、ワープ魔法はもうとっくの昔に試しているが、この鎖が魔法の使用を阻害するのだ、諦めるしかあるまい………。




