5年の月日
ここは、冒険者ギルド、受付カウンターの奥に見える扉の先にある事務所である。
そこでは事務員や受付嬢が様々な業務を今日もこなしていた。
「先輩、あの資料どこに行っちゃいました?」
「先輩、実はこの仕事先輩に回せって3日前言われたんですけど知らせるの忘れて………。」
「大変ですっ!!受付カウンターでトラブルがあったんですけど手に負えませんっ!!」
「このバカっ!!しゃーないわね、あなたのその資料についてあとで教えて、引っ張り出してあげるから、それと、その3日前の仕事もなんとかする、最後に、受付には今すぐに行くって伝えといてっ!!」
そう言うとその女性は机に頬杖をついてグチグチいって、最後にいつもため息をつくのだった。
「全く………あーあ、なんでサーラさん総本部の方に行っちゃうかなぁ、しかもそこで代わりになるのが私って、おかしいでしょ………。」
サンティシナ視点
サーラさんが大陸中央の神聖帝国にある、冒険者ギルドの総本部に転属になったのは、もう1年前になる。
総本部では各地の冒険者ギルドのまとめ役と新生帝国聖都内の冒険者の管理役を任せられている。
後者だったらいざ知らず、前者の冒険者ギルドをまとめるのがそれはもう大変な業務で、各地から垂れ流される申請や報告などの情報をひっきりなしに処理している。
中には機密性の高い報告やら何やらも存在するためここに務めることができるのは最低でも地方で5年務め上げた人間のみだ。
サーラさんは転勤時点で18歳から15年間ずっと働いてきた大ベテランだった、総本部も泊をつけて彼女を迎えることに決定し、彼女は用意された馬車で神聖帝国に向かっていった。
『あとは頼んだわよ。』
『………?何をですか?』
『決まってるじゃない、私の後釜よ、あなたは地味にここの誰よりも仕事できてるじゃない?頑張ってね。』
そう一言残して。
まぁ、正確には私が彼女の後釜になるために必要なあらゆるもう終わされた事務処理とその一言を残して。
「先輩、先輩は好きな人っていますか?」
そう言われたのは、仕事の帰り、後輩に食事会に誘われて行った時のことだ。
彼女たちと来たら、20にもなって未だに誰は誰のことが好きとか、そんな話で盛り上がっていられる。
その話題が私の方にやってきたとき、私は呆れながら答える。
「いないわよ、それに、私男の人で友達いないから。」
「そうなんですか?」
「そう………というか、受付嬢になってからは女の子で出来たけど、村で暮らしてた頃は誰とも遊んだ記憶がない………。」
「「「ええ〜!!」」」
私は、昨夜の食事会の時の事を仕事中思い返しているときに、ふと思いだした。
いたじゃない、私にも男の友達?が。
でも。
「どこに言っちゃったのかなぁ、もう迷宮都市に飛んで行っちゃってから5年も経ってるじゃない………。」
彼との時間の溝は、サーラさんよりずっと深いものだった。
???視点
このアルフェーペ大陸の各地、山岳、洞窟、海上、都市それらには盗賊、海賊が潜んでいる。
彼らは普段は各地の街道に待ち伏せして、通行人などを襲ったり、街の中に潜むものは街の中で窃盗などを行う、海上にいるものは海賊と呼ばれ、何をやるかは………まぁ、説明するまでもない事だろう。
俺が今追っているのはそんな盗賊団の中でもギルドマスター直々に高額報酬の討伐依頼を
張り出すような危険な奴らだ。
奴らは様々な都市に潜伏しては強盗、放火、襲撃を繰り返し、その数は最低でも数十回。
最低でもCランクの人間が集う騎士団をして捕まえる事のできない神出鬼没の盗賊団だった。
そんなドラマのような集団がいるのか、いるのだから仕方ない。
「なんだてめぇ!」
「どこの野郎だ?なぜここがわかった!」
「いや、今回は流石に見つけるのは難しかったよ、時間をかけて強固な隠蔽魔法を仕込まれていたからな………だがな、いくら強固であろうと時間をかければ突破できるもんなんだよ、だからその前に潰さないといけないが、お前たちはついに俺に気づかなかった、隠蔽魔法はなにもお前たちしか使えないわけではない。」
俺がそう言ってやると、奴らは様々な感情が入り乱れているのか、口をパクパクしているが言葉が出ない。
「………てめぇ、ずいぶんとやるようだが、見たところたった一人だけみたいじゃないか、どうすんだよ!!これはよぉ!!」
盗賊団はその騒ぎ声をきいて奥から更に出てくる、俺はさっさと仕事に取り掛かろうと剣を抜いた。
盗賊団の一人がさっと近づき、剣を交えた。
技術力は高い、相当にだ。
だが、俺とやつの剣が交わったとき、やつの剣は拮抗すらせずに弾かれ、ボケっとしているところを返す刀が首を刈り取る。
「メガファイヤミスト!」
俺はすばやく奥へ退避して地面に伏せ、奴らが集まる広間にそれを投げ込んだ。
いい忘れてたが、ここは洞窟内部で、広間は10m平方ほどだった、およそ人権を無視した惨事になっているだろうが、そんな事はとっくに慣れっこだ。
嫌なものだ、慣れというのは、初めてのときは魔物一匹殺すのをためらったのに、今では人殺しすら平然とできてしまう。
「俺は、変わっちまったな。」
俺は天を仰ぎ見ながらそう言った。




