伝説の始まり
「………。」
すべてが終わったとき、怪物は周りを見回す、壊れた家屋が瓦礫となって街路に散乱している。
「………。」
怪物は、やがて変形を始める。
背中から羽が飛び出し、そこから羽が飛び出し、更に羽が飛び出す。
何百も生えてくるそれは編み物のように絡み合いやがて二つの巨大な羽となる。
「………イコウ。」
怪物がそういって、羽を動かそうとした時のことだった。
「………?」
怪物は、突然何百もある足の一本を不自然に上げる、否、上げさせられている、持ち上げられている。
想像を絶する力で。
「…………へへへっ………全く、酷いもんだよ…………死の重症のなか動き続けるってのはさ。」
そういって、足を持ち上げてる人物………コーイチは笑った。
コーイチ視点
どこまで持つかな、こんな無茶も。
かすかに残った意識で俺は魔力量が何倍にも跳ね上がっていることを知った。
これは………Sランク、言っちゃったかな?
全く、こんな寿命を削る真似を、もう一回しないといけないのかよ。
俺は身体強化、ただただそれだけに魔力をふる。
足を圧倒的パワーで無理やり上げさせる。
「さ〜て、やるとするかっ!!」
俺は神速の速さを持って駆け出していく。
三人称視点
「ハヤイ………。」
そういって、怪物はぼうっとそれを見つめている。
次の瞬間、彼は一気に近づいてきて、怪物は幾多の魔法と幾多の腕や足でそれを迎撃していく。
「………!!?」
やつは、合間合間を縫っていく。
そして、ついに怪物に肉薄し、斬りつける。
「ッ……!!!」
足が一本斬り落とされる、否、一本だけではない、三本、四本。
しかし、そうして切り落とされた足はすぐに再生して、彼の息の根を止めるために伸ばされる。
無数に迫るそれの、合間を縫って、切断。
「………やっぱりこれじゃあ埒が明かない、そうだよな?」
瞬間、怪物は背筋に悪寒が走る。
見つめていたのだ、奴は、自分の目を。
その瞬間、奴は何をしようとしているのか怪物は瞬時に理解して、対抗策を構築し始める………。
コーイチ視点
俺は一歩一歩動き続ける間、激痛に苛まれていた。
そりゃそうだ、骨なんて折れた箇所は十箇所くらいになってるだろうし、流れてしまった血なんて尋常じゃない量だろう。
意識だって朦朧とする、だが俺はそれでも動き続ける。
その苦痛が苦痛であるほど、俺は罪を赦されていくような気がしていたからだ。
ギセルさんも、リューゼさんも、スリューシャさんも、クルードさんも、みんなみんなやられてしまった。
生きているかは定かではない、いや、生きてはいるだろう。
だが、重要なのは彼らの生き死にじゃない、俺があのとき彼らを助けようとしなかったという事だ。
それが自分の罪だ、そして、それは耐え難いものだった、どんな痛みよりも。
「待っててくれよっ、金メダルとってきてやるからなっ!!」
俺はそういって駆け出した。
無数の腕や足がこっちに伸びてくる、さっきと違って凄まじい密度だ、避けようがない。
「ぐぉぉぉぉぉ!!!」
俺はそれを片端から切り裂いて強行突破を試みる。
腕に掴まれ、足に踏まれて、それでも全身をとめることはない。
「ハァッ!!」
ついに肉薄した俺は走り続け、やつの胴体の上に上がる。
胴体にも無数の腕や足が生えているが、そこから更に魔物の上半身が形成されていく。
「なるほどっ、そうくるかっ!!!」
俺は腕を伸ばしたり魔法を撃ってくる魔物たちは切り裂いて進む。
当然その間もやつの腕や足が伸びてくる、それをかわしながらやるのだ。
「うぉぉぉぉぉ!!!!」
俺はやがてやつが上げている胴体の部分に生える腕や足を足場に登っていき、ついに頂上に到着した。
そこには、ドラゴンや、ワイバーン、スケルトンやゴブリンやら、オークやら、無数の魔物の頭がこちらを睨んでいる。
その時、すぐそばに生えている腕の一本が俺の足を掴み、振り落とした。
「くっ!!!?」
「させませんっ!!!」
次の瞬間、鎖がどこからか飛んできて、俺はそれに絡められてもとの位置に戻ることができた。
「クルードさん………!!」
「やってください、コーイチさんっ!!」
おれはその言葉にうなずき、ジャンプする、それは生えていた魔物の首を飛び越え、そして………!!
「クルナァァァッ!!!」
あの少年の姿を捉える。
「いっけぇぇぇぇ!!」
こんな時ですら、腕や足が邪魔しに来る。
だが、かまうものか。
その首を、切り落としてやる。
「うぉぉぉぉぉ!!!!」
俺の刃は、やつに届いた。




