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剥がれ落ちたベール

こんな場所で思う事じゃないかもしれない、言っていい言葉じゃないかも知れない、だが、その時の俺は思ってしまった。


「キレイだ………。」


空を覆う、無数の魔法、何十、いや何百と展開された魔法が、花火か何かのように放射状に展開しているのだ。


それが、一斉に落ちてくる。


「………逃げろぉっ!!!」


魔法が、あるものを焼き払い、あるものを粉々にする。


「コーイチィッ!!」

「わかってますっ!!」


自分達は身体能力、魔法、あらゆる手段を使ってそれを避けていく。


俺は頭上に落ちてきた巨岩をかろうじて避け

て、そこを襲おうとしていた火球を水球を連発して相殺する。


「シールドを展開しろっ!!自分のだけじゃないっ、前衛も守れっ!!」


魔法使いたちはシールドをあらん限り展開し、それを押し止めようとする。


「耐えろぉぉぉお!!!」



ついに最後の魔法が落ちてきたとき、周囲は死屍累々だった。


「結局、立っていたは100人に満たないくらいか、まだまだいるっちゃいるが………。」


そして、上を見上げれば、奴は更に奇怪な変化をし始めていた。


足が変形したと思ったら、四本足、まるで馬のような足が出来上がる。


そして、奴は落ちてくる。


「くるっ……!!」


俺はさっと構えると、奴は両腕を振り回しながら走っていく。


「撃てっ!!」


魔法が一斉に放たれるが、奴は目に見えなくなるほどの超高速で横に大きく移動し、魔法はすべてかすりもせずに通り過ぎる。


それだけではない、そのような超高速でギザギザに曲がりながら突進してくる。


「避けろぉっ!!」


冒険者達の大半はこの時点で抵抗を諦め避けることに全力を尽くす。


何人か吹き飛ばされるが、大半の人間は幸い無事だった。


その時、極太の水流のレーザーがやつを捉えかける。


だが、そのときにはすでに目に負えない速度で走り出し、まるで当たらない。


「このっ、なんちゅうやつじゃ、あいつとワープ使ってるわけじゃないじゃろうな………。」


そうやってきたスリューシャはぼやいている。


更に魔法が飛んできた、それらはすべてメガからギガレベルの魔法であり、避ける事も防ぐこともままならない俺たちはやむおえず建物の影に隠れる。


建物ごとやつの魔法は俺達や冒険者を吹き飛ばし、俺達は吹き飛ぶ。


「がはっ………!!」

「大丈夫か………。」

「なんとか、な。」


俺が首を上げてやつを見る。


奴の姿は再び掻き消え、その時、なんとなくだが、あぁ、終わったと思った。



「間に合いましたよ、全く、歳を取るのは怖いものです。」


やつのドラゴンの腕が自分の顔を掠めるあと一歩手前というところ………だが、それは鎖によって止まっている。


「今です。」

「分かっとるわいっ!!」


スリューシャは、特大の魔法を何発も構成してそれを叩き込む。


「………俺達もあらん限り撃ち尽くすぞっ!」

「はいっ!!」


俺はメガファイヤを3つ。


リューゼさん、ギセルさんはそれぞれメガカオス・アドルビュートを撃ち出した。


「俺たちも続けっ!!」


冒険者達の魔法使いも次々魔法をあらん限り撃っていく。


そこら一帯は煙に包まれるが、すぐにやつがそれを吹き飛ばした。


「………!!再生していない!!」

「ついに止まったと………これで対等だ。」


「くっ………!!」


クルードさんの顔が苦悶で歪む、鎖がピンと張り詰める。


「仕方ないっ……!!」


クルードさんはやむおえず手を離し、奴は自由の身となる。


奴はザッと逃げる際に更に変形を繰り返していく。


少年の面影は完全に消え、代わりにその胴体にはゴーレムらしき魔物が据えられ、腕や足はドラゴンや馬の形を保っている。


「よしっ、はやくつぎだ………っ!!?」

「まったく、お前の魔力量じゃメガ系統の魔法を三連続も撃てばそりゃ枯渇するわ。」


そうブツブツいいながらスリューシャは降りてくるが、途中で血相を変える。


「避けろっ!!」


俺はえっとなって見ればやつの姿がかき消えている。


そして、その瞬間に俺は弾き飛ばされた。


「大丈夫ですか………!!リサさんは大丈夫そうなんで、こっちに加勢しに来ましたよっ!!」

「カーラス………。」


気がつけば俺は弾かれたどころかやつに背負われていて、またかとため息をついてしまう。


「またくるっ……!!!」


カーラスはやつの動きをかろうじて見切って横に避ける、それを一回、二回、三回。


「私を忘れないでくださいっ……!!」


クルードさんが鎖でやつの動きを再び止める。


それだけではない。


「ハッッッ!!!」


クルードさんは飛び上がり、やつの肩に乗って、そのまま胴体、そしてー


「ここだっ!!!」


クルードさんが杖で胴体を突く。


それを二回も、三回も。


「ゴーレムコアかっ…!!」


クルードさんが飛び退くと、杖を刺した跡から凄まじい光が漏れ出して、爆発する。


奴は一瞬自壊しかけるが、すぐさま巨人の魔物に変形して体制を立て直す。


そして、その時。


いつの間にか俺たちは全員同じ場所に集結していることに気がつく。


俺、リューゼさん、ギセルさん、カーラス、スリューシャさん、クルードさん。


「へっ、全員集合か、これで戦力は全員か………なんか、いい感じになっちまったな。」

「そうですね………。」



奴は、その時変形を始める、それも、今までとはまるで規模が違う。


「なんだ………?」

「あれ、生物なのか………!!?」


今までの変形も異形の形だった、だが、足、胴体、腕、頭がそれぞれほかの魔物と入れ替わるように変形していったのだ。


だが、これは違う、それはブクブクと肥大化していき、まるで木の枝のように無再現に腕や足を生やしていく。


腕の先に腕が生え、その先に腕が生える。


足の先に足が生え、その先に足が生える。


「これが、やつの正体だっ。」

「……!!」


俺達はその声のする方を見てみれば、あの片腕の魔法使いが立っている。


「俺の仲間も、みんなびっくりしてたぜ、あんな姿してたんだからなぁ、気をつけろよ、こっから先が正念場だ、今までなんてやつからすれば遊びも遊びだ。」

「なんだと………!!」


奴は更に肥大化を続ける。


それはまるで、芋虫のようでもあるが、その先端部分が持ち上がり、その一番上には、様々な魔物の頭が据えられる。


ドラゴン、オーガ、ゴブリン、オーク、リヴァイアサン、ワイバーン、とにかくたくさんの魔物の首が文字通りがん首揃えている訳だ。


そして、その持ち上がった部分を胴体として見た場合、胸元に当たる部分にはあの少年が上半身だけ突き出している。


「……………。」


少年は無言だった、だが、やつの代わりだろうか、先端に生えている無数の魔物の首が、いつぞやのモンスターパレードのとき聞いた雄叫びを発する。

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