第五十九話 無人島そのつー!
「あ! おかえりでござる」
拠点と決めた場所に戻ると、桜がそう言って出迎えてくれる。それだけなら、普通の光景だろう。桜の後ろに、立派な小屋がなければ……。
「「……」」
「あれ? どうかしたでござるか?」
桜は小首をかしげながら、そう言う。
「いや、その小屋はなんだよ!?」
「え? これでござるか。バベル殿達が居ない間に、作った小屋でござるよ」
「いやいやいや。こんな短時間で、これほどまでに立派な小屋が出来るか!?」
桜が作った小屋は、ちゃんとドアが在り、木枠の窓までついている。外見からしても、この森の材料で作ったのは分かるが、こんな短時間で出来るものだろうか。それに、こんな立派な小屋を作るなど、桜は本当に超人だな。
「いやー。出来たものは仕方ないでござる。それに、ゆにーくすきるのれべるが5に成った時、能力が凄く上がったので、それも影響があるでござる」
そう言って、桜はギルドカードを手渡してくる。カードのユニークスキルの覧は見える様になっていたので、それを見てみる。
そこには、能力が10倍になる。と、書かれていて、桜がまた強くなったのがわかる。矢張り、LV5はユニークスキルの能力が大きく変わるのだろうか。必殺スキルも手に入るし、LV5とは一種の壁なのかもしれない。
そして、その下。俺はとても見たくない一文を発見した。
「…………」
そこには、『ただし、お腹がいろいろやばくなる』と、書かれていた。俺は考える。分からないって恐い。何時も明確な数字が書かれていたが、どれだけ食うか分からないというのは、恐いものだ。
「はあ。返すよ」
「な、なんでござるか? 溜息なんかついて……」
それはお前がこれからどれだけパーティのお金を食いつぶしていくのか考えているからだ。
「はあ」
俺は取り合えず、もう一回溜息をついた。
◇
「にゃあ。凄いものにゃ」
俺が溜息をついてすぐに、ニャルカが帰ってきた。
「お前は凄いものだ、だけですませるんだな」
「そりゃあ、桜は非常識だからにゃ」
ニャルカにも桜は非常識だと言われてしまったか。
「それより、ニャルカ。魚はどこでござるか?」
桜がニャルカに問いかける。
「魚はここにゃ」
ニャルカはそう言って、手に持っていた小さなバケツを俺達に見せる。しかし、バケツの中にはなにも入っていない。
「どこに……魔力が見える?」
「そうにゃ。これは我のお気に入り魔道具。無限バケツ。釣った魚はここに入れてあるにゃ」
魔力が見える事から、魔道具なのだろう。
「というか、ニャルカって魔道具一杯持ってるよな」
冥界七大魔道具とかいうニャルカが作った魔道具は置いておいて、シュナの粉が入っている無限小瓶とか、がまぐちとか、そのバケツなどなど。生活に役立つ魔道具をいろいろ持っている。
「にゃあ。もちろん、妖精族は魔道具作りの名人にゃ。これぐらいの魔道具なら、我の故郷でも安価で買えるにゃ」
なるほど。たしか、妖精族は小さくて力はないが、魔力を豊富に持ち、魔道具を作る達人と図書館で読んだような……まあ、妖精族や森人は故郷からあまり出ないらしいし、あまり詳しく知られていないが。
「まあいいや。それで、どんな魚を釣ったんだ?」
「3匹釣れたにゃ」
うーん。3匹は少ないな。桜が全部食べてしまいそう。
「まずは、にゃんかわからない魚」
そう言ってニャルカがバケツから引きずり出したのは、全長1mc50㎝ほどの大きな魚……。
「……デッカ!」
俺は思わず叫んでしまった。
「あ! これって確かオーガブリだよ」
「なんだそれは」
「オーガが食べても分け合える事から、その名前が付いたらしい」
なるほど。たしかにオーガが食べても分け合える大きさだ。
「あとは、これ。天空秋刀魚。我も昔はよく食べたにゃ」
ああ。それは聞いたことある。空を泳ぐサンマ。天空秋刀魚。まれに空から落ちてくるので、それを取って食べるらしい。
「天空秋刀魚も珍しいよね。売れば大銀貨一枚ぐらい……」
なにー! この秋刀魚一匹が大銀貨一枚……クッ。近くに店が在ればすぐに売りに行くのに。
「最後のは凄いにゃ。ほれ“アルティメットカジキ”釣り師の憧れを、我は終に釣り上げたにゃ!」
なんかすごそうな魚だ。この魚。アルティメットカジキとか言ったかな? 全長3mはくだらない。というか、この小さなバケツのどこのはいってったんだ。
「アルティメットカジキ。さまざまな海に生息するが、その気性の荒さとへたなエサには食い付かない幻の魚と言われている。釣り上げたら釣り師から憧れの眼差しを向けられ、釣り王の名を名乗ることを許される――」
なんかエルが解説を始めたんだが。
「凄そうな魚だな。ニャルカって釣りの腕に関しては、凄いんだな」
「釣りの腕に関してはとはにゃんにゃ。まあ、我の腕を持ってすれば、幻の魚だろうが、簡単に釣れるにゃ!」
「ちょうしにのんな」
というか、その小さな体と、小さな釣り竿でどうやってこんな大きな魚を釣ったんだろう。
「にゃあ。記録に残すものがにゃいにゃ」
「そのがまぐちの中に記録を残す魔道具とかないのか?」
「故郷にはあるが、今は持ってないにゃ」
「そんな事いいでござる。さっさと食べるでござるよ」
桜のその一言で、俺達はご飯の準備を始めた。
◇
時間的に、丁度お昼ぐらい。俺とニャルカの後ろで、桜とエルがご飯を作っていた。
「んー。後20分ぐらいかな?」
「分かったー」
俺とニャルカは、別にサボっている訳ではない。桜が食べ尽くした時の為に、釣りをしているのだ。
いやー。ニャルカが余分に釣り竿を持っていてくれて助かった。少し小さいけど、なんとかなるだろう。
「なあ、ニャルカ。この前海に来たのは一度だけとか言って気がするけど、その釣りの腕はどこで?」
「これは、我の故郷に在る妖精の川で、鍛えた腕にゃ。我はそこで良く釣りをしたにゃ」
川釣りでここまでの腕を手に入れられるのかな。
「まあいいや。釣りを続けよう」
「にゃー」
桜とエルが昼ご飯の準備をしている間、俺とニャルカは釣りを続けた。
「出来たでござるー」
釣りを続けていると、桜の声が聞こえてくる。
「じゃあ、行くか」
「にゃ!」
つり上げた獲物は、ニャルカが大きな魚を3匹。俺は小さな魚を1匹……。
「矢っ張り、ここは二つ名持ちのナワバリにゃんだな。珍しい魚が多いにゃ」
「二つ名持ちは矢っ張り凄いんだな」
あの蛙のせいで二つ名持ちなんてたいした事ないんじゃないか? と、思っていたけど、矢張り凄いんだな。
「そりゃあ。その気ににゃれば国なんてすぐ消せるのが、二つ名持ちだからにゃ」
「そうだな」
俺とニャルカは石の席に着く。
「はい。今日は、サラダとお刺身。それに焼き魚」
エルが俺達の前に置いたのは、木の皿に入ったサラダとお刺身と焼き魚。
「おいしそうにゃ」
「食べようか」
「「「「いただきます」」」」
まずはお刺身。一緒にある、お醤油に浸けて、一気に口に運ぶ。
ずっしりとした旨み! この小さな切り身に、どれだけの旨みが詰まってるんだ!
「美味しいにゃー」
ニャルカは醤油の代わりにシュナの粉を付けて、刺身を食べている。真っ赤に染まった刺身は、見ているだけで辛そうだ。
俺はその後も、果実のサラダや、焼いた天空秋刀魚などを心ゆくまで楽しんだ。
妖精族の説明を一部変更




