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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第一章 子供編
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第五話 爆虫

 今日は森で【爆虫召喚】を試そう。俺はベッドで、今日の予定を考えていた。

 俺は一日大体暇だ。他の子どもは畑仕事や、狩りの練習をしているが、俺とエルは仕事と言うと家の手伝いくらいだ。

 何故、仕事が無いのかはよく分からない。


 まあ、良いか。朝ご飯を食べて、森に行こう。


「おはようバべル」

「おはよう」


 寝室の扉を開け、居間に行くと母さんが朝ご飯の準備をしていた。


「バべルはユニークスキルが決まったけど、大人になったら何をするの」

「うーん」


 俺のスキルは戦闘に向いている。魔法も使う事を考えると、村を出て冒険者に成るのも良いかもしれない。

 あ、そう言えば、5年前エルと冒険者に成る約束をしたっけな。まああれは小っちゃい頃の話しだし、エルも覚えていないかな。


「まあ、冒険者かな」

「……そう。冒険者は死と隣り合わせよ。戦う力。判断力。様々な能力を必要とするわ。……バべルが冒険者に成るって言うんなら、気の合う人とパーティを組みなさい。人は一人では生きていけないのだから」

「うん、分かった」


 そう言って母さんは朝ご飯を作り始めた。


 

 ◇



 ふうー、美味しかった。朝ご飯のパンと、ベーコンを食べ終え、今は森に向かっている。

 今は冬だが、この村は南よりなのか、少し雪がちらつき、肌寒いといった程度ですむ。行商人のレイナーさんが言うには、この国は比較的暖かいらしい。

 そう言えば俺はこの国の名前を知らなかったな。この村から、歩いて三日の場所に大きな都市が在る事しか知らない。


 

 そんな事を考えながら歩いていたら、いつも魔法の練習をしている場所に着いた。この場所は、度重なる魔法の実験に因って木が倒れ、大きめの広場になっていた。まあ、人が来ないし別に良いよね。


 よし、まずは『爆虫の図鑑』を使ってみよう。スキル名を唱えれば、出来ると本能的に分かる。


「『爆虫の図鑑』」


 と、唱えると、手に本が出てきた。何かの皮で出来た、魔方陣が書かれた表紙。中身の紙は羊皮紙だ。

 本の中身を見てみると、最初の三ページは書かれていたが、それ以外は白紙だ。取り合えず、一ページ目から見ていこう。


 一ページ目を見ると、『爆虫(集中型)』召喚魔力5。と表記してあり。楕円型に目が着いている爆虫のイラストが中央に書かれていた。


 二ページ目は、『爆虫(拡散型)』召喚魔力5。と書かれていて、一ページ目と同じようなイラストが書かれていた。


 三ページ目は、『爆虫(ロケット型)』召喚魔力50。と書かれており、楕円型だが先っぽがとがっている爆虫のイラストが書かれていた。


 この3種類の爆虫を召喚出来るのか。……そうだ! ここの本には、消費魔力が書かれている。爆虫を召喚して、自分の魔力を数値化出来るんじゃないかな。


 善は急げ。取り合えずやってみよう。


 まずは、集中型の爆虫を召喚する。


「サモン『爆虫(集中型)』」


 そう言うと、表紙に書かれていた魔方陣が光り、虫が出現した。


「これが爆虫か」


 大きさは1cmほどで透明の羽が付いており、真っ黒だ。


「右に行け」


 俺がそう言うと、爆虫は右に向かって飛ぶ。心に思うだけでも、ある程度は動かせそうだ。


「一気にいくか。サモン『爆虫(拡散型)』『爆虫(ロケット型)』」


 そう唱えると、表紙の魔法陣が光り、二匹の虫が出現した。

 拡散型は集中型とほぼ同じだ。ロケット型は、一回り大きく一本の角が生えている。そして何より、魔力の消費が多い。嵐と同じぐらい消費している気がする。

 

 多分魔力の量は、ロケット型が嵐と同じ消費量50で今、2発撃てる事を考えたら100ぐらいかな。

 嵐の魔力消費量はロケット型と同じ50。ウインドカッターは、20発撃てる事を考えたら魔力消費量は5だと思う。


 俺は、魔力量はあまり多くないのかな。比べる人が居ないから分かんない……。まあ良いか。


 次は攻撃をしてみよう。


「爆虫集中型。木に貼り付け」


 そう命令すると爆虫は、目の前の木に張り付いた。


「起爆」


 そう命令すると爆虫がドカンと爆発して、木に爆発した跡が出来た。


「威力はまあまあだな」


 集中型は木が削れる位か。

 次、拡散型を試してみよう。


「爆虫拡散型。木に貼り付け――起爆」


 起爆と、命令すると、今度は爆発が周囲にも及んだ。

 起点と為った木には、焼けた跡が出来ており、周囲の木にも軽い傷が出来ていた。


 ふむ。威力はあまり無いかな。レベルを上げれば威力は増加すると思う。


「まあ、次行くか。爆虫ロケット型。狙いを合わせろ」


 ロケット型は貼り付けて起爆するんじゃ無くて、遠くから攻撃する爆虫だ。

 よし、魔力50の威力を見せて貰おうか。


「ロケット発射」


 俺がそう号令をだすと、狙いを定めた地点に向かって、猛スピードで飛んで行き爆発した。


「すごいな」

 

 爆発した場所には小さなクレーターが出来ていて、周りの木も根こそぎ倒れていた。

 これで一通り試したが、中々威力がありそうだ。


 あとは、残りの魔力で魔法を使うか。……! まてよ。この本、魔法の発動に使えるんじゃないか?

 神父さんが言うには、魔法使いは大体魔法の発動には杖を使うらしいが、世の中には本を使う変わり者も入るらしい。

 この本は俺の魔力と波長が合いそうだ。何しろ、もともと俺から出てきたやつだしな。


 まあ、ダメで元々やって見るか。

 この本で魔法を使えば魔法の威力も上がりそうだし。

 まずは本を左手で持ち。右手を的の木に向ける。魔力を本を使いながら、調節し、右手に魔力を集める。


「よし! ウインドカッター」


 魔法名を口にすると、いつもの二倍の大きさのウインドカッターが右手から出現し、目の前の木を切り裂いた。


「やはり、威力が上がっている」


 それに魔力の消費量が下がっている。これなら嵐も魔力が少しで使えるんじゃないか。

 良し、使ってみよう。


「嵐」


 右手から嵐が出てきて、前までの二倍の距離を進み、木を切り裂き消滅した。


「痛っ」


 右手に痛みがはしった。見てみると、風で切り裂かれたような傷が出来ていた。

 これは嵐を手の近くから発動したから、切り裂かれたんだ。自分の魔法だから、深くは傷ついていないが、可成かなり痛い。


「痛てー」

「バべル君大丈夫!」


 唐突に声がしてきたので後ろを振り向くと、絶世の美少女、もとい美少年のエルが居た。


「エル!」

「大丈夫かい、怪我してるみたいだけど」

「ああ。これぐらいなら大丈夫だ」

「そうかい? まあ、村に戻ろう」

「そうだな」


 俺は手に持っていた本を消して、エルと一緒に村に向かった。



「エル、見たのか」

「……ごめん。ユニークスキル見ちゃった」

「いや、そっちは良いんだ」

「え?」


 俺のユニークスキルは分かりやすい。すぐにばれるだろう。俺が心配しているのは……。


「その後の魔法だ」


 エルも俺と一緒に神父さんの魔法の事を聞いていた。あれが魔法だとばれている可能性が高い。


「うん。見たよ。バべル君、魔法が使えたんだね」

「ああ、誰にも教えていなかったんだけどな。エルはどうしてこんな場所に?」

「……ボクも、ユニークスキルを試していたんだけど、途中で外に出るバベル君を見つけたから、消えたまま付いていったの。ユニークスキルを試している処を見て帰ろうと思ったけど、魔法を使っていたから見ちゃったんだよ。ごめんね」

「まあ良いよ。いつかはばれる事だし。だけどしばらくは秘密にしてくれ」 

「うん!」


 うなずいたエルの顔はとてもまぶしかった。


「バべル君! 冒険者に成るんなら、遠距離攻撃出来る魔法使いは必須だよ。ボクとパーティを組む約束をしたんだ。君が魔法使い。ボクがシーフ。後はバランスを考えて前衛がいるね!」

「エル。冒険者に成ってパーティを組む約束を覚えていたのか……」

「当たり前だろ。冒険者はボクの夢なんだ。夢に関わる事はそう簡単には忘れないよ!」

「そ、そうか」


 約束してから暫くして、パーティの事を言い出さなかったからてっきり忘れてるのかと思っていたよ。


「あと五年したら成人する。そしたら冒険者に成りに行こう!」

「そう、だな……」


 エルと冒険者の話をしながら、村に帰った。



 ◇



「バべル! 大丈夫なの」


 家までエルと一緒に帰って母さんに怪我の事を話したら、大慌てで薬を探しに行った。


「何をして怪我をしたの?」


 母さんに薬草を擂り潰した傷薬を手に塗られながら訳を聞かれる。


「そ、それは……」

「ユニークスキルを確かめてて怪我をしたんです」


 魔法の事を知られる訳にはいかず、言葉を濁していると、エルが気転をきかせて、ユニークスキルのせいにした。


「そうなの、ユニークスキルを使う時は気をつけるのよ」

「はい」

「これで良いわ。暫くは気をつけるのよ」

「わかってる」


 傷の手当てが終わり、母さんは仕事に戻って行った。


「バべル君。これから何をする?」

「そうだなー。……村の中央にでも行くか」

「うん、そうしよう」


 と言う訳でエルと村の中央に行くことになった。



 ◇



 ――ニナリ村中心地。


 村の中央は小さな武器屋と雑貨屋が在り、朝には市が開かれたりするので、人は結構集まっている。


「……あ! バべル君、あの人レイナーさんじゃない?」

「本当だ。今朝、村を出ていったはずだけど……」


 村の中央の片隅で荷馬車を整理している行商人のレイナーさんが居た。

 

「聞いてみようか」

「そうだな」


 

「レイナーさーん」

「ん?おやバべル君にエルくんじゃないか。どうしたんだ」


 レイナーさんに話しかけると優しそうに答えてくれる。レイナーさんは、この村に塩や生活必需品などを売りに来る人だ。


「今朝村を出て行ったはずだけど、どうしたんですか」

「ああ、近くの道で知り合いの商隊に会ってね、帰り道で“影の巨獣”っていう盗賊団が出たと情報を聞いて、引き返して来たんだ」

「影の巨獣?」

「影の巨獣っていうのは巨大盗賊団だよ。何人もの商隊が犠牲になり、小さな村も襲った事もあるんだって。討伐に入ったBランク冒険者のパーティが帰って来なかったという話しもある……」

「うわー。この村は大丈夫なんですか?」

「大丈夫だよ、冒険者ギルドがAランク冒険者を派遣したって話しだし。まあ僕は盗賊が退治されるまでこの村で宿泊だね」

「そうですか」


 Aランク冒険者が来るんなら大丈夫だろう。一番上、人外の域と言われるSランク冒険者を抜かせば、人間の中で一番強い。


「じゃ、レイナーさん、また今度」

「うん、じゃあね」


 レイナーさんと別れてエルと次に向かったのは、雑貨屋サトウ。この村唯一の雑貨屋で品揃えもよい。基本村での買い物は、行商人などを除いて物々交換で行われるが、この雑貨屋はお金でやりとりをする。


 カランカラン、と雑貨屋のドアを開けると鐘が鳴り客の来店を告げる。


「おや、いらっしゃい」

「雑貨屋さん、こんにちは。遊びにきました」

「そうかい。まあ客も来ないしゆっくりしていきな」


 この雑貨屋はお姉さん一人でやっている。実はこのお姉さんの名前は誰も知らない。お姉さん。や、雑貨屋さん。等とみんな好き勝手呼んでいる。


「バベル君。何か買って行こうか」

「ん? エルは金持ってるのか?」

「銅貨十枚は持っているよ」


 そう言ってエルは、ずぼんのポケットから銅貨を五枚取りだす。

 

 この世界のお金の価値は、鉄貨が一番低く、十枚で銅貨一枚。銅貨が五十枚で大銅貨一枚。銅貨が百枚で、銀貨一枚。銀貨五十枚で大銀貨一枚。銀貨百枚で、金貨一枚。金貨五十枚で大金貨一枚。金貨百枚で白金貨一枚だ。

 銅貨十枚とは、田舎村の子どもにとっては大金だ。


「どうしたんだ、そのお金?」

「この前狩人達が狩りをしている森の中に入ったら、薬草の群生地を見つけて摘んで帰ったんだ。それをレイナーさんに売って、お金を稼いだのさ」

「なるほど」


 レイナーさんは、村人から買い取りなどもしてくれる。それでお小遣いを稼いでる村人は少なくない。


「お、これなんかどうかな」


 そう言ってエルが店棚から持って来たのは、短剣だった。


「それで良いのか。武器なら武器屋のゴルターさんのほうが……」

「いや、これが良い。ゴルターさんの武器は銅貨十枚じゃ買えないから。それにこの武器に引かれる物がある」

「じゃあ、それにするか」

「雑貨屋さーんこれ下さい」 

「うん、銅貨十枚だよ」

「はい」

「鞘もおまけで付けとくよ。まいどありー」


 エルが短剣を嬉しそうに抱え、踊る様に店を出た。

 俺は、エルの後を付いていったから気づかなかった。お姉さんがエルを興味深そうに見ていたのを。




「バべル君またねー」


 雑貨屋を出て、エルと遊んだり、昼飯を食ったり、近くの森に入ったりして、夕方になりエルと別れて家に帰った。


「父さん、母さんただいまー」

「おう、お帰りバべル」

「お帰りなさい、バべル」

「お腹減ったー」

「はーい。すぐ準備するわね」


 今日の夕飯は、シチューだった。とっても美味しかった。



 

 俺はベッドの中で寝返りをしながら、盗賊の事を考えていた。Aランク冒険者が派遣されるなら大丈夫だとは思うけど。やっぱり不安だ。大丈夫かなー。

 そして不安になりながら、俺は深い眠りに落ちていった。 

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