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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第五章 月光国編
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第四十九話 試練の森と八岐大蛇

「番号!」

「1」

「ににゃ」


 俺は、月光国の門の前で、点呼を取っていた。今日は、月光国の外に行こうかと考えているからだ。

 月光国は海から入る大門と、内側にある二つの小門が在る国だ。月光国の周りは超危険地帯が乱立し、ランクで言うとCランクの魔物が闊歩するらしい。俺達は行ける所まで行こうと、小門に集まっていた。例により桜は来ていない。


「よし、行くぞ」

「まてー!」


 いざ行こうとすると、町の方から大きな声で俺達を呼び止める存在が居た。


「バベル-。外に行くのか? 私も行くぜ-」

「凪!?」


 俺に飛びついてきたのは、凪だった。凪についてはもうさん付けはしない。


「楽しそうだから、私も行く!」

「ええー」

「ねえバベル君。この人は?」

「ああ。昨日会った。猫屋凪ねこやなぎだ」

「へー」


 この人の名前にもツッコミどころが多い。なぜ犬獣人なのに猫と入っているのか? まあ、そこは名字だから置いといて、名前の凪なんて今は正反対に騒がしい奴だし。いろいろとツッコミ所が多いが、いきなり付いてくるとは、いかにも凪らしい。昨日会ったばかりだけど。


「お前達がバベルの仲間か?」

「ボクは、エルフィルといいます」

「我は冥王ニャルカにゃ。妖精族最強でもある」

「なるほど。私は凪。サイキョーの剣士だ」


 それぞろ自己紹介が終わり、小門から外に出る。凪は無理矢理付いてきた。追い返す事も無理だろう。だって凪だし。


「気持ちい風だなー」

「だにゃ」


 夏も終わり、もうすぐ秋になる。俺が村を出てからもう半年ほど経つのだ。


「秋と言えば、バベル君の誕生日が十の月にあるよね」

「ああ。そういえば、秋は俺の誕生日か」

「なんだー。バベルの誕生日が近いのか?」

「近いと言っても、まだ二ヶ月ほどあるけど」


 そんな雑談をしながら進んで行く。月光国の外は田んぼが広がっており、その周りには武器を持った人達が警戒している。多分魔物の警戒だろう。

 そんな事を観察しながら、俺達は進んで行った。




 田んぼの地帯を抜けると平原が広がっており、そこを少し進むと森の入り口にたどり着いた。


「着いたぜ-。ここが月光国をぐるりと囲む森。試練の森だ。この森は普通の侍がやっと抜けられる難易度。ここを抜けた後が本番だなー!」

「まずはここを抜けないとな」


 町の外に出るということで、桜から聞いた話だが、この森はD~Cランクの魔物が普通に出るらしい。さすがにBランクの魔物は出ないが、この森を越えると雑魚敵の様に出てくるらしいから、俺達は森までだろう。


「私も小さい頃に森を突っ走ったなー。あの時は豚魔人の集団に囲まれて、大変だったぜ」

「……良く生きてたな」

「ははは。あの時ユニークスキルのレベルが上がらなかったら、死んでたな」

「ふーん」


 凪にもそんな過去があったのか。そういえばこの森は侍になるための試験として使われると桜から聞いたことがあるな。


「バベル-。行くにゃ!」

「ああ、分かった」


 俺はニャルカの言葉で、森へと入った。


 森の中は涼しく、血の臭いがする。


「雰囲気が変わったね」

「血の臭い?」


 エルとニャルカがそれぞれ感想を言う。


 ――たしかに、不気味な森だ。


 ――……そうだな。


 マモンとも会話をし、俺達は森の中を進み出した。


「お! 魔物が来たぜ!」


 凪は、エルよりも早く魔物の気配を感じ取ったようだ。その様子から、矢っ張り強いんだと思う。


「あれは、オーガだよ!」

「へえ。大鬼か」


 月光国ではオーガの事を大鬼と言うのか。


「大鬼は一匹。連携で仕留める!」

「了解」

「にゃははは。行くにゃ『混乱波動』」

「グルアアアアアアー!」


 二足歩行の魔物が現れた場合、まずはニャルカの波動を使う。それで足止めした後は、エルと桜が攻撃。それで仕留めきれない場合、俺の爆虫を使う。


「オーガに真っ向から行くのは勝ち目が薄い。後ろからだ」

「グルギャアアアア!」


 オーガの腕力では、真っ向から勝負した所で死ぬのが定石。エルはオーガの背中を切りつける。エルの剣は呪剣らしく、攻撃力はあるとか。というかそんな物を売りつける雑貨屋のお姉さんは何者なんだ。


「だめ、ボクじゃ止めをさせない」

「大丈夫すでに罠に掛けた」


 エル達が攻撃している間、俺の罠掛けは終了した。

 オーガが怒り狂いながら俺達に向かって木の棍棒を振り下ろす為か一歩踏み出す。すると、足下が爆発し、オーガの足は消滅する。


「その地雷型は『爆破調整』で俺が魔力をありったけ注いだ特注だ」


 村を出てから俺の魔力量も増え、今じゃ450位ある。その内50も余分にそそいで召喚した地雷型なら、防御と力に特化したCランクの魔物の足を吹っ飛ばす威力はある。


「終わりだ」


 そして、その間に頭に張り付いていた時限型が爆発し、オーガは絶命した。


「討伐完了」

「にゃははは。我に掛かれば赤子の手を捻るより簡単にゃ」


 桜が居なくても、Cランクの魔物一匹なら余裕で狩れるな。まあ、慢心はだめだが。


「……ねえ。オーガはどうする?」

「どうするか?」


 月光国では冒険者ギルドなどがないので、買い取り屋で買い取って貰うしかない。しかし、俺達が月光国に来たばかりだし、良い買い取り屋をしらない。なので、持って行くのも少し困る。オーガはでかいし。


「なら、私が貰って良いか?」

「ん? まあ、良いぞ」


 悩んでいると凪がそう言ってくるので、持って行ってもかさばる未来しかない俺達は、凪に渡す事にした。


「サンキューな。これで一杯やるのが良いんだ-」


 凪はそう言って小さな袋にオーガの死体を収納した。


「なあ、それって魔道具か?」

「魔道具? ああ! カラクリの事か。そうだぜ」

「なるほど」


 月光国では魔道具をカラクリというのか。


「じゃあ、行くか」


 俺の言葉で、森の中を更に進む事になった。




 とても重い足跡の音が聞こえる。


「……これは、大きな魔物だね」


 足音だけで、可成り大きな魔物だと分かる。この足音からして、サイクロプスかトロールの可能性がある。どちらもCランクだが可成り大きくて、力も皮膚の厚さも凄いらしい。


「うーん。これは、危険だな。お前達下がっていた方がいいぞ」

「え?」

「お! キタキタキタ。下がってな」


 凪がそう言うと同時に、木々をなぎ倒しながら大きな八首の竜が現れた。


「さっさと下がりな!」

「これはヤバイ。エル、ニャルカ下がるぞ」

「え! 凪さんが……」

「あいつなら大丈夫じゃにゃいか?」

「そのとおり。こいつは八岐大蛇。お前達じゃ荷が重いぜ」

「キシャアアアアア!」


 凪のその言葉と同時に、戦闘が開始された。凪は腰の刀を抜き、八岐大蛇は凪を食べようと襲いかかる。


「今日の夕飯は大鬼の焼き肉と大蛇鍋に決定だ。さあ、酒のために死んで貰うぜ-」


 凪がそう言うと同時に姿が消える。そして、八岐大蛇の首が一本切断された。



「ねえ、凪さんってやばい位強いよ」

「そうだな」


 Aランク相当。下手したらSランクほどの八岐大蛇が、何も出来ずに首を一本切断されたのだ。もしかしたら凪はウルルさんより強いかもしれない……。


「あ! また切られたにゃ!」


 そうこうしている内に、大蛇の首がもう一本切断された。


「八岐大蛇って、多分Sランク下位ほどの強さはあるよね」

「多分な」

「にゃはははは。しかし、我が最強だという事実に変わりはにゃい」


 今の戦闘を見て最強だと言えるお前は凄いよ。


 あ! また一本首が切断された。




 八岐大蛇との戦闘は、十五分ほど経過した。依然、凪の優位は崩れない。あ! また一本切断された。これで、八岐大蛇の首は残り一本。もし俺達が戦ったら、たとえ桜が加わろうが五分で壊滅する位の化け物。それは、凪相手に何も出来ずに首だけがなくなる。

 凪はまるで距離がない様に大蛇の前に姿が現れる。ウルルさんが空間を移動するユニークスキルなら、凪は距離を詰める様なユニークスキルかな?


「さあ、終わりだぜ-」


 その言葉と同時に大蛇の首は切断され、大蛇は絶命した。


「さあ、出てきていいぞー」

「はあ、死んでいるのか」


 今まで隠れていた茂みから出て、凪さんの元に向かう。


「まさか、思いがけずこの森の主を倒す事になるとはな」

「主?」

「八岐大蛇はこの試練の森の主だ。ずっと退治されなかったのだが、私が退治してしまった。私がサイキョーだからしかたない」

「ふーん」

「解体するから少し待っとけよー」


 凪はそう言うと大蛇を豪快に捌いていく。凪の持っている刀はとても解体様だとは思えないが、バッサバッサと捌いていく様子から切れ味は良いのだと分かる。

 捌くこと十分。あり得ない速さで解体を終わらせた凪は肉や魔核などを袋に入れる。


「んー。これはなんだ?」

「それは」


 解体が終わると、凪が金で出来た小箱を持って俺達の所にやって来る。


「さっき八岐大蛇を捌いてたら、魔核の近くにあったんだ。何だろう」


 普通の魔物がこんな物を体内で持つなど可笑しい。まずは専門家によく調べてもらって……と思っていたそばから開けていく-!

 凪が小箱を開けると、ボワンッと紫色の煙が吹き出てくる。


「なんだなんだ」


 その煙は空へと上り、消えていった。そして、小箱の中身を見てみると、見事に何も入っていなかった。


「……なんだったんだ?」

「さあ」

「うーん。この小箱はお前達にやるよ」

「良いのか?」


 この小箱は多分金で出来ている。売れば可成りの金額になる事間違い無し。


「私はサイキョーだからな。別に要らないんだ」

「じゃあ、ありがたく貰っていく」


 受け取った箱はエルの魔法のポーチに入れ、更に森を歩き出した。この後オークやストーンゴーレム。トロールなどを討伐し、俺達は森を出た。


 ――そして、バベル達は気付かなかった。絶望を解き放ってしまった事を……。

ちょこっと意味不明だった設定を修正。

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