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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第三章 イレギュラー編
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第二十六話 VS大蜘蛛のイレギュラー

「まずは、俺が動きを止める」


 全員の戦闘準備が整うと、シンプルさんが言う。


「出来るのか?」

「もちろん」


 ドラさんの疑問に自信たっぷりに宣言するという事は、何か秘策があるのだろう。


「では、ジクスが動きを止めた所で、総攻撃を仕掛ける」

「「「了解」」」


 ちょっとした作戦会議が終わり、最初にシンプルさんが動く。


「いくぜ! 『行動不能領域』」


 シンプルさんが、ユニークスキルを使う。すると、大蜘蛛の下に半径10m程の円が現れ、光り輝く。


「キシャアアアア!」


 光り輝く円から、光りで出来た縄が出現し、大蜘蛛を拘束した。


「グッ、あまり保たないぞ!」

「分かった! 総攻撃だ!」


 ドラさんの号令で、一斉に攻撃を開始する。槍を投げる人。魔法を撃つ人。様々な攻撃が、大蜘蛛に向かう。


「いきます! 『ホーリークロス』」


 レイさんのユニークスキルが発動し、十字の光りが大蜘蛛を攻撃する。


「俺も……。『ジェット』」


 覆面さんがユニークスキルを使うと、投げた短剣が猛スピードで飛んで行き、大蜘蛛に突き刺さる。


「『魔力二倍加』『魔力軽減』ッ、とどめだ! 『魔法弾』」


 ドラさんがユニークスキルを発動させると、2mほどの魔力の塊が大蜘蛛に飛んで行き、爆発した。


「やったか!」


 その言葉は誰が発したのか……。シンプルさんかもしれないし、他の人かもしれない。しかし、それはフラグだ。そう言うと決まって……。


「ドギシャアアアア!」


 ほら生きてた。しかも大蜘蛛は可成り傷が浅く。赤黒い体からはオーラみたいなのが出ている。目は真っ赤に染まり。いかにも怒ってますよと、いった風貌だ。


「クッ、仕留めきれなかった」


 ドラさんが悔しそうに言うが、今のフラグがなかったら、もう少し傷が深かったかもしれないし、仕留め切れていたかもしれない。誰かがフラグを立てたから、大蜘蛛さんも張り切っちゃたんだよ。


「ジクス、もう一度動きを止められないか!?」

「無理だ。あれをもう一度使うには時間が要る。一応もう一つ拘束スキルはあるが……」

「今は何でも良い。兎に角あいつを討伐しなければ」

「分かった。行くぞ! 『拘束領域』」


 シンプルさんがユニークスキルを使うと、大蜘蛛はもう一度光りの縄で拘束される。


「あの領域に入ったら拘束されるから気をつけろよ」

「分かった。いくぞ『魔法弾』」


 ドラさんがさっきと同じユニークスキルを撃つが、威力が格段に落ちているのが分かる。


「私も『ホーリーカッター』」


 レイさんはさっきと違う攻撃をするが、前より威力は半分ぐらいだ。


「矢っ張り強そうだな」

「そうでござるな。主殿は攻撃しないのでござるか?」


 桜が石を大蜘蛛に向かって投げながら聞いてくる。


「多分無理だ。あいつを仕留めるなら大型を三、四匹召喚して、連鎖爆破で仕留めないといけない。唯一仕留められそうな寄生型は育つのに一週間は掛かる」


 ローブの中から寄生型を取り出しながら桜に説明をする。


「そうでござるか。ん? ではどうやって討伐するでござるか?」

「それを今考えてる」


 あの大蜘蛛を見ていても、可成り防御が高い事が分かる。この前一度討伐した大蜘蛛は、桜とエルが注意を引き、集中型二十匹の連鎖爆破で仕留めたんだけど。こいつは集中型ではどうにもなりそうにない。

 大型は三匹が限界だし、くろまめは何か愛着がわいて爆発させるのも嫌だ。しまったなあ。来る前に大型を召喚しとくんだった。それなら魔力が回復して、全匹そろえられたのだが。

 だけど大型三匹だと場所をとるし、面倒を見きれない。


「……討伐する手段がないや」

「え! どうするの!? 町には剣聖が居るから大丈夫だとは思うけど……」


 剣聖か。まさかあのボロ宿のお爺さんがあの剣聖だと聞いた時にはビックリしたなー。だけど、剣聖に頼るのもなんか癪だし、ここは果てなき夢が討伐したい。あいつの素材も高く売れそうだし。


「主殿ー。目が金貨になってるでござるよ」

「は!」


 危ない危ない。お金の事だけを考えていたよ。


「おい! お前達も攻撃しろ!」


 ちょっとしたコント的な事をやっていると、シンプルさんが怒鳴る。シンプルさんもユニークスキルの制御がうまくいかないのか、苛ついているようだ。


「ギシャアアアアアア!」


 拘束されてても大蜘蛛の迫力は大きく、光りの縄を解こうと、暴れ回る。


「キシャシャシャシャ」


 すると突然大蜘蛛は暴れるのを止め、俺達を睨みつけてきた。


「キシャー」


 大蜘蛛がそう鳴くと、地面から小さな魔方陣が次々と出現する。


「あれは何だ!?」

「分からない」


 シンプルさんが拘束を維持しながらドラさんに聞くが、ドラさんも困惑している。


「キシャ」


 大蜘蛛が小さくそう鳴くと、魔方陣から子蜘蛛レッサースパイダーが大量に出現した。


「子蜘蛛を召喚するだと!」


 子蜘蛛はランクFと最低ランクの魔物だが、数が集まると兎に角やっかい。見ただけでも、二百匹は居ると思う。


「バベル君。あれが大蜘蛛の特殊能力だよ」

「ああ。イレギュラーが一つ持ってるってやつか」


 あれを倒しきるのは難しいぞ。子蜘蛛は紙耐久なのですぐに死ぬが、あの数はやばい。しかも拘束されてるとはいえイレギュラーの大蜘蛛がいるし……。あいつを倒すには。


 ――おい、強欲! 俺の魔法使用権を一旦返してくれ。


 ――……それで、何を差し出す。


 ――何も。


 ――そうか、何もか……何もだと!


 ――あいつらを仕留めるには風魔法は必須だ。だから力をかしてくれ。


 ――話が見えてこないのだが。


 ――……毎晩話してれば分かる。お前が優しい事ぐらい。お前は強欲ではなく、分別をわきまえてる。それに、お前は与える者だろ。自分に嘘をつかない方がいいぞ。


 ――うー。うるさい! 私は強欲だ! ツッ。……今回だけだぞ。


 ――ありがとな。今度お礼するから。


 矢っ張りこいつはツンデレだ。


「お、きたー!」

「何だいバベル君!?」


 魔法の放出が出来そうだ。

 範囲特化の風魔法を持った俺は無敵だー!


「さて、子蜘蛛は俺に任せろ!」

「出来るのか」


 俺の言葉にドラさんが聞いてくる。


「当たり前だ」

「頼む」

「分かった。任せろ」


 久しぶりだが、魔力を体の中で練る訓練は毎日やっていたし、大丈夫だろう。

 左手で爆虫の図鑑を構え、右手に魔力を集中させる。


「いくぞ! これは大嵐を越えた上級魔法。“黒大嵐ブラックテンペスト”」


 俺は今考えついた魔法を大蜘蛛と子蜘蛛に向かって、撃ち出した。

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