第二十五話 VS大蜘蛛のイレギュラー
「ここがエルキ平原か」
大蜘蛛討伐の依頼を受ける事を決めた日から二日後の朝。俺達“果てなき夢”は、指定された平原へとやって来た。もちろん俺はくろまめに乗っている。
あたりを見渡すと、他の冒険者らしき人達が、二組ほど居た。
「君たちは。冒険者か?」
平原を見ていると、一人の大鎧を着た冒険者が話しかけてくる。
「俺達はDランクの果てなき夢です」
「もしかして、Bランクの魔物を討伐した経験があるからって、特別に許可されたパーティか?」
「そうです」
「おお」
冒険者の男は、感心した様な表情を浮かべ、自分のパーティに戻って行った。
「いい人そうだねー」
「そうだな」
「じゃあ、他の人達が来るまで待とうか」
「そうだな」
それから、桜は夜桜の手入れ。エルは荷物を整理し、俺はくろまめの装備を点検することにした。
それぞれ手入れをしていると、他の2パーティがやって来た。
「おまたせしました」
「少し遅かったか?」
「――よし、集まったな。では、それぞれ自己紹介をしよう」
全員が集まると、最初に声をかけてきた男が取り仕切る。
「まず、俺はCランクパーティ“風の団”のリーダー、リュスカだ」
最初の自己紹介は、取り仕切っている男だ。後ろに三人ほど控えているのはパーティーメンバーかな? リュスカって竜と聞こえるし、ドラゴン。いや、ドラさんと呼ぼう。
「俺はカルマ。……ソロだ」
次は、俺達より先に来ていたもう一人。覆面をして、口数が少ないが、これが原因でソロなんじゃないかな? 取りあえず覆面さんでいいや。
「私はレイジュ。“聖杯の提示”のリーダーで神聖教の司祭でもあります。まだ修行の身でありますが、よろしくお願いします」
神聖教か。神聖教会とは、ユニークスキルの力を引き出す神を崇める教会だ。世界一の宗教で、様々な国に根付いている。そのため、人間、異種族問わず、大体が信者だ。俺は信者ではないし、月光国ではそんな宗教はなく、普通に神社で儀式を受けるらしい。
そんな宗教の司祭なら、多分結構な地位だと思う。後ろには、おなじ格好をした女の人が、五人いるから、珍しい六人パーティなのだろう。あだ名はレイさんでいいや。
「俺はジクス。“火炎の牙”のリーダーだ」
特に特徴はないし、他のパーティの人も剣士、魔法使い、盗賊、僧侶といった定番だ。そうだな。……シンプルさんと呼ぼう。今までのあだ名はもちろん俺の心の中だけだ。
「最後俺達か。Dランクパーティ“果てなき夢”のリーダー? あれ、俺達のパーティのリーダーって誰だ?」
俺達の自己紹介をしていると、ふとリーダーの事を思い出した。パーティを作った後も、誰がリーダーかちゃんと決めてない。
「もちろんせっしゃでござるよ!」
「おまえだけは却下だ!」
俺はローブからハリセンを取り出して、桜の頭をたたく
「うーん、いつもボク達を引っ張っていくのはバベル君だし、バベル君でいいと思うよ」
「はあ。仕方ないから譲ってやるでござるよ」
「おまえは何様だ!」
「桜様でござる」
「うん、もうおまえは喋るな」
「ガーン」
「ゴホン、あらためて“果てなき夢”のリーダーバベルだ。よろしく」
無難に自己紹介をすると、舌打ちが聞こえてきた。
「おい、なんでDランクのパーティが居るんだ」
「彼らはBランクの魔物を討伐した経験があるから呼ばれたんだ」
シンプルさんの疑問にドラさんが説明する。事前に連絡が行くと聞いたけど、シンプルさんみたいにシンプルな馬鹿はいるんだな。
「ふーん。まあ、おまえ達に出番はないから、後ろで休んでいろよ」
シンプルさんが馬鹿にしたように言うが、Bランクは甘くない。Cランクの一つ上と考えていたら、痛い目を見る。
「主殿、あの馬鹿を殴っても良いですか?」
案の定ムカついたのか、桜が聞いてくる。確かにあの馬鹿にはBランクのすごさを教えておかないとな。
「よし! 許可する」
「ダメだよ!」
殴る許可をすると、エルが止めに入った。
「ああいう馬鹿にはBランクのすごさを教えておかないと」
「うん、そうだけど。殴るのはやめておこう。小一時間教育するぐらいで……」
「ふむ、確かにそうだ」
「いや! やめろよ!」
話がまとまりかけていると、ドラさんがツッコんでくる。
「ゴホン! では、大蜘蛛は北東の方角から来るという事になっている。戦闘準備をし、大蜘蛛の元に向かうぞ。俺達が討伐を失敗すると、ヘベーラが襲われ、多くの犠牲が出るだろう。死力を尽くして討伐を成功させる!」
ドラさんの言葉が終わり、それぞれ戦闘準備を整えていく。
さすがはCランクパーティ。戦闘の準備はすぐ終わり、いつでも出発できる様になった。
「良し! では行くぞ」
ドラさんのパーティと、シンプル馬鹿さんのパーティが前衛。レイさん達“聖杯の提示”は全員魔法使いらしく、水の回復魔法が得意という事で、後衛。覆面さんが遊撃に、俺達は背後の警戒のという布陣で、大蜘蛛の居るらしい方向に、出発した。
◇
平原を歩く事、(俺はくろまめに乗り)二時間ぐらい。俺達の500mほど先から、大蜘蛛が歩いてくる。普通の大蜘蛛は黒色だが、あの大蜘蛛は赤色だ。いや、赤黒いといった方が良いか。そして、ただの大蜘蛛ではないと思わせる事が一つ……。
「なんで歩くだけでクレーターが出来てるんだよ!」
大蜘蛛が歩いた後にはクレーターが出来上がり、どれだけの力を持っているのか分かる。
「ッ……戦闘準備だ!」
大蜘蛛の足跡を見て呆然としていたが、ドラさんが大声で戦闘準備と叫ぶ。
「くっ、あれはやばい。だが、やるしか無いな」
「そうですね」
それぞれ剣を構えたり杖を構えたりしながら、大蜘蛛との戦闘が開始された。




