第二十話 宴会終わって
「へべーらが、見えたでござるよ!」
桜が、小高い丘の上から叫ぶ。俺達は、可成り濃い旅を経験して、やっと帰って来られた。
あの後、夜まで飲み明かし。コボルトキングの解体などをして、帰路に着いた。
あの蛙とも仲良くなり、お土産に下位竜の干し肉などを貰ったりした。
「冒険者ギルドに着いたら、コボルトキングの事を報告しないとな」
「そうだねー。ボクは何も出来なかったし、LVも上がらなかったよ」
エルは一人だけLVアップが出来なかった事を気にしてるみたいだが、あまり気にしなくて良いと思う。
「確かにあれは死闘だったでござる。けど、蛙殿の事が印象に残りすぎて、それほどの事じゃないんじゃないかと思い始めているでござるよ」
「さすがにコボルトキングと、二つ名持ちを比べるのは止めてさしあげろ」
二つ名持ちは相手が悪すぎる。確かにそれは一理あるけど。あの蛙(笑)を見た後だと、コボルトキングなんて問題じゃない。あれは死を具現化したような存在だし……。
「確かにカエルさんは強そうだけどさあ。宴会を経て考えてみると、本当に強いのか疑問に思う」
エルがそう言うのもうなずける。あの宴会の後で、強く思えなどというのは無理がある。あの蛙(笑)は酒が回ると寒いネタを連発したり、突然泣き出したりしたからな。
「早くギルドに行くよ」
「おーでござる」
◇
「えー! コボルトキングが居た!」
受付のお姉さんのその言葉に、ギルドがざわめく。
「それで、コボルトキングはどうしたのですか」
「討伐しました」
「Bランクの魔物を!」
「あれは死闘だったでござるな」
「しょ、証拠品を見せてください」
受付のお姉さんに急かされて、討伐証明部位と、角を取り出す。
「少し調べて来ますー」
受付のお姉さんは、他の人に受け付けを頼んで、置くへと引っ込んでいった。
「矢っ張り信じられないものかな」
「Dランクに上がりたての俺達じゃ信じられないのも無理はない」
一応ユニークスキルと、いう物があるので、高ランクの魔物を狩ってくる低ランク冒険者が居ない訳ではない。しかしそれも全体の一握りだ。
「お待たせしました。確かに、コボルトキングの素材でした」
「まじかよ」
「あんなガキが!」
「運が良かっただけだろ」
等というコメントがギルド中から聞こえる。嫉妬が5割。賞賛が4割。無関心で酒を飲むのが1割だ。
「おい! ガキ」
「なんでござるか」
いろいろな話が飛び交うなか、一人の男が俺達に、話しかけてきた。
「運が良かっただけだろ。その素材は先輩冒険者の俺によこしな!」
「運が良かったのか?」
「実力でござるな」
「そうだよね」
こいつは何を言ってるんだろう。何でこいつに素材を渡さないといけないのか理解できない。
あの死闘を思い返してみても、いろいろな犠牲の上の勝利だ。桜はサブスキルを使ったし、俺も魔法が使えなくなった。エルも体を刺されたし、あれは偶然ではない。運が良いでかたづけられるのは腹が立つ。だけど、こいつみたいに自分の失敗を棚に上げて、他人の成功を妬む様な奴はいくらでも居る。反論しても無駄だと思うので、俺達は無視を決め込む事にした。
「それで、幾らで売れますか?」
「え!? えーと。素材は綺麗に解体されてますし「おい! 無視するなよガキが!」
「はー。なんですか?」
エルが苛つきながら聞く。エルも結構怒っているようだ。
「それを寄越せと言っているんだ!」
俺もその言葉を聞いて、こいつをボコボコにする敵リストに追加した。
「桜ー。やっちゃって良いぞ」
「了解でござる。せっしゃは怒ってるでござるよ。ただでは済まさないでござる」
「んだとガキが」
「すみません。ギルド内での争い事は禁止されております」
桜があの冒険者Aに制裁を加えようとしたところで、お姉さんが止めに入る。
「なら、外ならいいでござるな。お前、付いてくるでござる」
「望むところだ!」
そう言って、桜と冒険者Aはギルドを出て行く。その後から、賭けや観戦をするためか、他の冒険者も付いていった。
「それで、幾らになるんですか?」
「えーと。お仲間さんは良いんですか?」
「桜ちゃんがあんな人に負ける訳がない」
「だな」
「えーと。あの人はDランク冒険者歴十年のベテランですよ」
Dランクに十年って。そこから上がれない様な奴が桜に勝てるわけがない。
「それで、幾らですか」
「は、はい。素材がちゃんと解体されていますし、傷もあまり付いていません。まだ詳しくは分かりませんが、最低金貨五枚はいけますね」
「金貨五枚か。矢っ張りBランクは違うな」
「そうですね。魔物はBランクから買い取りの値が一気に上がりますから」
「なるほど」
魔物も人間もBランクからが凄いな。
「そうだ。Dランクの依頼にBランクの魔物が出てきた事については何か?」
「えーと」
エルの言葉に資料をあさり始めるお姉さん。
「あ、ありました。依頼のランクを大幅に超える魔物が現れた場合。違約金はなしと、載っていますね」
「ん? 倒した場合は?」
「載っていません」
じゃあ、どうしよう。あわよくばここで金をせしめようと、思ったのに。予定がずれた。
「まあ、良いか」
「そうだね」
「そ、そうですか。では依頼報酬の銀貨五枚です」
お姉さんからエルが銀貨を受け取り、魔法のポーチに入れる。
「じゃあ、コボルトキングを売って、小豚亭に一旦帰るか」
「そうだね」
――小豚亭 宿の一室。
「全部で金貨八枚と銀貨五枚か」
「儲かったね」
小豚亭の部屋の中。俺達は、お金の勘定をしていた。
「せっしゃもあの冒険者から、銀貨十枚スって来たでござるよ」
「じゃあ、その金は桜が持っていて良いぞ」
「ありがとうでござる」
少し聴き方を変えれば、怪しい事に早変わりするような話をする俺達三人。
「じゃあ、せっしゃはご飯を食べに行ってくるでござる」
「ああ。安くしろよ」
「分かっているであります。この前見つけた大衆食堂、“狼の巣”は可成り安かったでござるからそこにいくでござる」
「そうかい。じゃあ、ボクも調べ物をしに行ってくる」
そう言って、桜とエルは、部屋を出て行った。
「……俺は新しく追加された爆虫でも見るか」
俺には特にやることがないので、爆虫の確認ぐらいしかする事がない。
「『爆虫の図鑑』取り合えず、サモン『爆虫(閃光型)』『爆虫(寄生型)』『爆虫(追跡型)』」
そうすると、本が光り三匹の爆虫が召喚される。部屋の中なので、爆発させる事は出来ないが、確認ぐらいなら出来る。
閃光型は、普通の爆虫と同じぐらいで、少し黄色だ。消費魔力15。
寄生型は、大きさ5㎜程度で、多分寄生させて、体内で爆発するんだとおもう。消費魔力30と少し高め。
追跡型は、少し細長く。羽音も聞こえない。ターゲットを追跡させて、爆発すると思う。消費魔力10と、コスパは良いかな?
まあ、分かるのはこのくらいだ。後一匹召喚できる爆虫が居るが、それはここで召喚出来そうにない。
「よし、ローブの中に入っとけ」
そう、爆虫に命令し、ベットに腰掛ける。
――なあ。
俺は、俺の中の者に語りかけた。
――おーい。
――……なんだ。
――すまん。で、俺の魔法はどうなったんだ。
あれは覚悟したとは言え、魔法が使えないのはいたい。魔法を練ることは出来るが、放出が出来ないといった状況だ。
――一生私の許可なく魔法は使えない。
――やっぱりそうなのか?
――ああ。そうだ。魔法の使用権は私が持っているからな。
魔法は好きだったんだけどな-。魔法が使えなくなったと知った桜は土下座をしまくっていたが、仲間の為と思えば何となく諦めがつくんだよな。
――恨んでいるか。
――いや、感謝してるよ。あの時力を貸してくれなかったら、桜は死んでた。
――ふん!
矢っ張りこいつは強欲じゃないか?
――今何か失礼な事考えなかったか?
――いや、全然。それよりさ。お前は何なんだ。
――……忘れたのか? 私はお前に食われたのだが。
――食われた!?
俺は断じてそんな者は食っていないはずだ。
――ほら、お前が五歳ぐらいかな? あのエルフィルって奴ともう一人のガキに……。
――……おまえって、もしかしてあの不思議な果実か?
――そうだぞ。
――えー! あの変な果実がお前だと!
――変な果実って、お前失礼だぞ。
――すまんビックリしてな。じゃあ、エルとガイにも居るのか?
俺に居るなら、あの時食べたエルとガイにも居るはず。
――いや、他の奴は全部消化された。
――消化?
――ああ。相性の問題かな。
――俺とお前って相性良いのか?
――俺が出てるから、そうなんだろ。
――なんか条件があるのか?
――確か、強欲な事が条件だったはず。
――俺はそこまで強欲じゃないぞ。
――何を言っているのだお前は。いろいろ観察してたが、強欲の最低基準は満たしてるぞ。
――まじかよ。
そうか、俺は強欲なのか? 自分じゃよく分からん少しお金が好きなだけなんだけどな。
――まあ、サンキューな。
――うるさい。つ、次からはもっと高く付くぞ。
エルの怒り度LV(本編とはあまり関係ないかな?)
無表情 LV100。貴方は可成り恨まれています。速やかに視界から消える事をオススメする。そうしないと死ぬ。
激怒 LV80。怒っています。速やかに全財産を差し出し、土下座をする事をオススメする。そうしなければ安全な睡眠はないものと思え。
イライラ LV50。結構怒っています。あと一押しで、激怒になります。速やかに立ち去ってください。
不機嫌 LV30。少し不機嫌ですねー。まあ、謝れば許してくれるでしょう。
プクー LV10。 これは信頼の証。ちょっとしたじゃれ合いです。
帰り際。
バベル「……桜だな」銀貨五枚賭ける。
エル「ちゃっかり賭けるんだね」スッと銀貨五枚賭ける。




