第十七話 VSコボルトの群れ
「あれでござるな」
朝俺達は、茂みから爆虫に探らせたコボルトの巣を眺めていた。小さな爆虫を辺りに散らせば、ちょっした探索が出来る。爆虫はあまり頭が良くないから、簡単んな命令しか聞いてくれないけど。
コボルトの巣は、山に出来ている天然の洞窟だ。その入り口では、二匹のコボルトが木の槍を持って警戒している。
「どうする?」
「うーん。多分ボクの『消える者』は使えないと思う」
「え! 何ででござるか?」
「コボルトは鼻が良いらしくて、気配にも敏感なんだって」
そうか、犬だけあって嗅覚が鋭いのか。エルの消える者の弱点を突いてるな。
「あ、あそこに居る狼は何でござるか?」
「あ! 本当だ」
桜の言った方を見てみると、洞窟の影になっている場所に、一匹の狼が居た。
「あれはグレイウルフだよ。普通はコボルトと共存しないはずなんだけど」
「もしかして、あの二匹の内の一匹が、噂に聞くコボルトサモナーなんじゃないか?」
「そうかもしれないね。この分だと、ボスにコボルトリーダーが居るかもしれない」
「そうだな」
魔物には上異種というものが存在する。通常種の上のリーダー。その上のジェネラル。そしてその上のキングの三つが存在する。これは二足歩行の魔物の全部に当てはまる事だ。他にも変異種と言われる、サモナーやアーチャー。ナイトといった物も居る。
「りーだーはどれ位のらんくでござるか?」
「確かコボルトリーダーはDランクだったはず」
「D位ならいけるか?」
「奇襲と囲まれる事に気をつければいけるでしょ」
「なら、まずはあの二匹のグレイウルフを奇襲で倒して、洞窟に進もう」
「了解でござる」
話会いの結果、エルと桜がコボルトを。俺がグレイウルフを倒す事となった。
「行くでござる」
桜の合図で、一斉に茂みを飛び出す。俺は右手に集めていた魔力をグレイウルフに撃ち込む。
「ウインドカッター」
首を狙った一撃は、正確にグレイウルフの首を切り裂き、消えていった。
自分の戦闘は呆気なく終わり、ふと、エルと桜を見ると、同様に既に勝負はついていた。
「進むでござる」
「ああ」
討伐証明部位と、魔核を取り出し。洞窟に入った。
洞窟は一本道で、人二人分の道しかなく、少し狭い。
「桜が前。俺が真ん中。エルはどうする?」
「うーん、偵察をするために、一番最初に行くよ」
「分かった。気をつけろよ」
「うん」
エルが道を慎重に進み。俺達はその後を歩く。
「あ! 少し見てくるから、待ってて」
何か感じ取ったのか、エルがそう言って、先に洞窟を進む。
「確かに向こうに何かの気配がするでござる」
桜も感じ取ったのか、洞窟の奥を睨みながら言う。
二人とも何かがあると言っているが、俺にはさっぱりだ。父さんが教えてくれた、気配の感じ方も俺は上手くできなかった。
少し悶々としていると、音を立てないように、エルが帰って来た。
「奥の大きな部屋に、コボルトリーダーらしき魔物が一匹と、コボルトが七匹居たよ」
「なるほど、取り合えずそこまで行ってみるか」
「そうでござるね」
俺達はさっきまで陣形で、奥に歩き出した。
「……居るな」
「で、ござるな」
一本道を進むと、奥は大きな部屋になっており。コボルトが七匹とコボルトリーダーが一匹居た。
「どうする?」
「……俺の嵐。いや、大嵐を撃ち込む事も出来るが」
「うーん。じゃあ、そうしようか」
「了解」
大嵐は、嵐を二つ合わせて、作り出す範囲魔法。威力はあまり変わらないが、範囲が大きくなるので、数が多いコボルト達にはぴったりだ。
「いくぞ。大嵐」
右手を部屋に向けて、魔法名を唱える。そうすると、部屋中が嵐に巻き起こり、コボルト達を切り刻む。
「グルルルル!」
「ワオーン」
「キャクン」
と、コボルトの悲鳴が聞こえる。それは数分続き、聞こえなくなって中をのぞくと、そこにはコボルトの死体が重なっていた。
「おお。死屍累々でござるな」
「そうだな。もう大丈夫か?」
「ボクが様子を見てくるよ」
エルが部屋の様子と、コボルトの死体を見る。そして、大丈夫と判断したのか、俺達を呼んだ。
「大丈夫だよー」
「なら、行くでござる」
エルの呼びかけで、部屋に入る。血の臭いが充満し、早く焼くなり埋めるなりした方が良いだろう。
「討伐証明部位と魔核を取っておこう」
俺達はコボルトの死体から耳と魔核を剥ぎ取り、エルの魔法のポーチに入れていく。
「これでいいでござるかな」
「そうだな。もう、帰るか」
結構あっけなかった。小さい群れだったからかな?
「じゃあ行こ……」
後ろにいたエルの声が途中で途切れる。桜と同時に、後ろを振り向くと、エルの胸から鉄槍がはえていた。
「「エル(殿)!」」
ドサリと、音を立ててエルが倒れる。その槍を掴んでいたのは、一匹のコボルトだった。




