エピローグ 終わりと始まり
――数日後。
「海って広いなー」
俺は大陸の最北端の小高い丘に座って、そこから海を見ていた。広い海を見ていると、ワクワクしてくる。世界は広い。まだ前人未踏の地は沢山あるだろう。俺は、全てを冒険したい。
海を見てワクワクしていると、後ろからなにかが下りてくる音が聞こえた。
「やあ。バベル君。……おじゃまだったかな?」
飛んでやってきたのはエルだった。エルは俺の横で、寝ているマモン。いや、俺の肩に頭を乗せて寝入っているマモンを見てそう言う。普段は睡眠を必要としないマモンだが、最近睡眠の楽しさに気づいて良く寝ている。
「別に邪魔じゃないぞ」
「そう、じゃあとなりに座るね」
エルは俺の横に座って、海を眺める。いわゆる両手に花という状況だろう。一人は男だけど。
「どうしたんだ?」
「ふぁ……。ちょっと報告だよ」
俺が無双進撃を倒した事で発生したもろもろの面倒ごとは全てエルが片付けてくれており、今は少し不眠ぎみだ。
「桜ちゃんは一人で里帰り。ニャルカはベゴニアさんと釣りに行ったからしばらく会えないってことと、一ヶ月後にエンシャル帝国の帝都で集合になったってこと」
「なるほど」
桜も気まずいけどそろそろ帰らないと、と言っていたし、冒険が一段落した今が良い機会だろう。ニャルカも今度会ったら釣りしようとベゴさんと約束してたし。
「後は、バベル君の異名が爆撃者から爆虫の召喚士になったことと、無双進撃の討伐賞金の八割が果てなき夢というかバベル君の取り分になったことかなー」
確か無双進撃の討伐賞金が白金貨千枚。そのうち八割は大きい。いや、ものすごく大きい。
「まあ後は、ボク達は結局活躍出来なかったなー、って事だね」
「そうだけど、良い経験になっただろ?」
「そうだね。桜ちゃんは修行不足といって別の二つ名持ちに挑もうとしてたし良い経験になったね」
「二つ名持ちに挑むのはやめさせろ」
二つ名持ちに挑むというのは命がいくらあっても足りない。爆虫王も頻繁に召喚出来ないし、俺ももう二つ名持ちと戦いたいとは思わない。
「ふぁ……。じゃあ一旦ボク達も帰ろうか」
「帰る?」
「忘れたの? ボク達Sランクに成ったじゃん」
「ああ。そうだったな」
俺達果てなき夢は全員Sランクになった。無双進撃討伐に貢献したとかで、Sランクという冒険者の頂点に立ったわけだ。
「ボク達はバベル君のおこぼれって感じも否めないけどその分修行するよ」
「そうかそうか。それで、帰るってどういう事だ?」
「ほら、村を出るとき約束したじゃん。Sランクに成ったら帰るって」
……そういえばそうだな。Sランクに成って帰って来いって言われたような言われなかったような。
「だから、ボク達もいったん里帰りしようよ」
「……そうするかー。もう三年近く帰ってないしな」
俺は熟睡しているマモンをおこし、俺の中に入ってもらう。そして、でかぽんを召喚した。
「いままで怒濤の日々で疲れたし、しばらく実家でのんびりしよう」
「そうだねー。いろいろ手伝う事はあるけど」
三年間冒険し続けた。だから、たまには長い休日といこう。だけど、あくまで休日だ。俺達の冒険は終わらない。
氷で出来た島。
空に浮かぶ小さな城。
海底のそこに眠る神殿。
全てが失われた地下の王国
全ての食物が存在する楽園
そして最果ての大陸。世界にはまだまだ人が立ち入っていない場所がいくつもある。考えるだけでワクワクするが、少しだけ休日を楽しもう。
「さて、行くか!」
◇
これにて、彼らのことを紡ぐ物語は終わりを迎えた。
しかし彼らの物語が終わることはない。
彼らの未来は輝き、果てしなく続いている。
もし叶うのなら、死ぬまで冒険を続けたい。彼らはそう願った。
神は微笑み、世界は静かに時を紡ぐ。
夢を叶えたその後にも、果てしなく夢は続いている。
彼らが生きているかぎり、世界はせわしなく動き続けるだろう。
それでも彼らが生きているかぎり世界は盛り上がり続ける。
さあ、果てしなき夢への冒険を、始めよう――――
~おしまい~
●あとがき。
爆虫の召喚士〔完結〕! よっしゃあー!! と思いました。いやはや。まさか約五十万文字も続くとは思ってもいませんでしたよ。始めての連載小説ということもあり、未熟な点もあったかと思いますが、今回の反省を次回につなげていきます。
最後のほうは駆け足ぎみでしたし、エルの父親とか世界にのろいをかけたものとかまだ明かされていない秘密もありますが、エルの父親は作中に登場していますし、のろいをかけたものについてはまああれです。(適当にだしたとか言えない)
とりあえず連載小説書いてみるか(笑)ぐらいの気持ちで書き、他の作品に浮気しそうになりながらも完結させられて、こう達成感が凄いです。自分でも未熟な作品だなーとは思いますが、自分をいっぱい成長させてくれた爆虫の召喚士には感謝してもしきれません。
日々やってくるブクマ、評価。そしてたまにくる感想はとてもはげみになりました。ありがとうございます。書こうとおもえばまだまだ書けますが、あとがきも長くなりすぎるとあれなんで、ここらへんでしめます。
皆様、ここまでご愛読いただきありがとうございました!
天野雪人
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