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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第八章 ガルハ王国編
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第百二十五話 バベルVSシャドル(絶影法団ボス)①

バベル視点ですが三人称です。

 ――バベルが向かった広場。


「はっはっは。“影手シャドーハンド”」


 男はバベルに向かって会話の余地もなく攻撃をしかけた。影に染め上げられた地面から幾本もの影の手が現れて、バベルに向かっていく。


「影の手か……。爆虫!」


 バベルは召喚しておいた爆虫に命令して、影の手を爆破しに掛かる。爆虫は一斉に影の手に張り付き、爆発する。その爆発を受けて影は四散するが、次から次へと影の手は出現してバベルへと襲いかかる。


 ――切りがない。


 ――ああ。影を無限に生み出せるなら魔力に制限のあるお前じゃ不利だ。


 ――そうだな。


 バベルには爆虫以外に影の手を撃破する手段がない。魔力を消費して爆虫を召喚するが、まるでいたちごっこだ。


 そして、マモンの言葉は当たっていた。影を操る男のユニークスキルは【終焉ノ影LV9】。全てを飲み込む影を生み出し、操るスキルだ。【終焉ノ影】には魔力を消費するなどの制限はない。男は無限に影を生み出し、操る事が可能だ。


「いいなぁー。いつまで続くかなー」


 男は影の手を生み出しながらニタニタ笑う。一方でバベルの魔力は700を切っていた。


 ――マモン。魔力も半分無くなった。


 ――そうか。ならばどうする?


 ――影の手は放っておく。男を叩くぞ。


 影の手を幾ら爆破しても切りがないと分かったバベルは、影を操る男を叩く事にした。


「サモン『爆虫(集中型)』×20『爆虫(拡散型)』×20」


 最初にバベルがしたのは集中型と拡散型の爆虫を大量に召喚する事。召喚した爆虫は襲ってくる手を足止めする為に使い、バベルはくろまめに乗ったまま、超小型を召喚して男に突っ込む。


「なるほどぉ~。俺を先に倒そうってのはまあ良くある事だなぁ」


 男はそう言ったかと思うと、影に包まれてその場から消える。


「なっ!?」


 次の瞬間、バベルの頭上から影がふってきた。


「“影雨(シャドーレイン)”。がっはっは。まだまだ楽しもうぜ」


 影は雨と思えない速さでゆっくりとバベルに迫る。


 ――バベル、回避しろ!


 ――無理だ!


 影の雨は広範囲にゆっくりと落ちてきている。くろまめの最高速度でも逃げ切ることは不可能だろう。


 ――マモン!


 ――しかたない!


 バベルとマモンの間ではその会話だけで通じた。マモンはバベルに魔法の使用権を一時的に返還する。


 ――サンキュー。


 バベルは風魔法の結界をあたりに張る。風の結界が貼られた直後、影の雨はゆっくりと降りそそいだ。

 外に居た集中型や拡散型の爆虫は雨に当たるやいなや黒い煙となって、地面を染め上げる影に飲み込まれた。


「面白れーだろ? 影の雨は触れた物を影に変えるんだ。まあ、魔法には通じないのが難点だがな」


 結果的に風魔法の結界を張ったことは好判断だっただろう。しかし、バベルは冷や汗を欠いていた。主にバベルの戦い方は大量の爆虫を召喚していっきに叩きつぶす物量戦だ。もちろんバベルには弱点がある。圧倒的広範囲攻撃。そして、自身を上回るほどの物量で叩きつぶしにくるタイプ。目の前の男はその両方を満たしている。超広範囲攻撃。影を無限に生み出して叩きつぶしに来る戦い方。


 ――そして、俺の得意分野もここじゃ通じない。


 バベルもただ叩きつぶすだけではない。爆虫の罠を張り、敵を嵌める戦い方もする。だがしかし、戦場となっている広場は影に浸食されている。それは、ここが敵のフィールドだと示していた。


 ――どうする……。


 ――私が力を貸してやっても勝てるか怪しいな。


 バベルは少し考え、勝機を探るために男と会話をする事にした。


「……なんでこの都市を襲うんだ?」

「あー? そりゃつまんねえからだ」

「つまらない?」

「俺は“絶影法団”って所でボスしてんだけどよ」

「!?」


 絶影法団。六大盗賊団の名前の一つをあげられ、バベルは驚愕する。しかし、目の前の男は数ヶ月前に相対した化け物屋敷のボスと比べものにならないほど強い。


「あ、名乗るの忘れてた。俺の名はシャドル。まあ、覚えておいてや」


 シャドルと名乗った男はニタニタ笑いながらバベルに言う。


「で、襲った理由だったな。そりゃ、つまんねえからだ。最近でっかい戦いがなくてな」

「でっかい戦い?」

「戦争はここ数十年おこってねえし。二つ名持ちが動く気配もねえ。世界戦争の火種になりそうだった迷宮ダンジョンも“破壊兵器”が壊しちゃったしよお。――つまんねえだろ? 戦いがない世界なんてつまんねえよなぁ! だから俺が起こす事にした。手始めにこのガルハ王国だ! ガルハを落としたら次はアルバス! ああ。楽しみだ。俺が世界を終ワラセル!」


 狂人の発想。普通じゃないバベルでも理解出来ない理由。これほどの狂人でもないと、六大盗賊団の一団のボスはつとまらないのかもしれない。


「時間稼ぎはもういいか? どうにもならねえよ」

「…………」


 バベルの『話をして勝機をうかがう作戦』はすでにシャドルにはばれていたようだ。しかし、バベルはある一つの勝機を見いだしていた。


「ああ。もういい」

「そうかそうか。じゃあ、やろうぜ!」


 絶影法団ボス、シャドルと冒険者バベルの戦いは始まったばかり――


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