第百六話 VS化け物屋敷⑤
短め。
「アアアアアアアアアアア!」
まん丸になり、体は緑色に変化した怪物は、咆哮を上げる。
「シネシネシネシネシネェー!!」
怪物の一撃は迷宮の床を破壊し、真っ二つにする。
ミノタウロスも桜も破壊出来なかった迷宮の床を、怪物は破壊したのだ。
――マモン! どうすればいい!?
――お前達じゃ無理だ。逃げろ。アレは、怪物なのだから。
しかし、迷宮の出口は堅く閉ざされていて、脱出は出来ない。
「エル! 桜! 逃げるぞ」
だけど、逃げなければならない。分かってしまった。アレに勝つなんて無理だと。蛙よりは弱いだろう。しかし、俺達じゃ倒せない。
「チカラだ。このチカラをモトメテイター!」
怪物は腕を上げ、振り下ろす。それは床をさらに破壊し、壁にヒビをいれる。
「くろまめ!」
「プ」
危険なので、鈴玉さんを乗せたくろまめは、怪物の攻撃が届かない所まで飛んでもらう。
「ヨワイ、ヨワイ。人とはこれほどヨワカッタのか」
怪物はそう言って、小さくジャンプする。
「スターッンプ!」
落ちてきた衝撃で床は砕かれ、衝撃波が襲う。
「ウルァ!」
ヒビの入った地面から起き上がり、拳を桜に向かって振りかぶった
「あがっ……ぅ……」
「「桜(ちゃん)!」」
回避する事も出来ず、その一撃を食らった桜は破壊された壁に叩きつけられる。常人ならば原形を保つことすら難しかっただろう。原型をとどめ、それでも生きていられるのはひとえに桜だからだ。
「エル、桜を避難させろ!」
「うん」
桜に追撃を行おうとしている怪物に、爆虫をけしかける。
「ジャマをスルナー!」
怪物は桜をほっぽりだし、俺に向かって来る。
……正直恐い。逃げ場のない空間で、殺気を全開でやってくる怪物。死を身近に感じる。
――マモン、なにかないのか?
――お手上げだ。アレは力を求めて古代兵器を取り込んだ奴のなれの果て。すべてを引き替えに古代兵器の力は、あのミノタウロスをゆうに越える。
一歩、一歩近づいてくる怪物。なにをしても無駄。逃げられない。死ぬしかない。
「……諦メル……ノカ?」
それはノイズだらけ声。壊れた機械の様な声が、後ろから聞こえる。エルでも、桜でも、ニャルカでも、鈴玉さんでもない。知らない誰かの声。
「……確カニ……難シイナ。……私ガ……少シ手伝オウ」
声の主は俺の横を通って、前に出る。ボロボロの黒いローブを着て、奇妙な仮面を被っている人間。
「ダレダお前はー!!」
「……ククク。『守護の破壊』」
その人間はユニークスキルを使う。すると、怪物のナニカが割れる音がした。
「此デ……攻撃ガ通ル筈ダ……後ハ自分デ遣レ」
人間はそう言って、後ろに下がる。桜を運んで避難させたエルも、ポカーンとしており、怪物もしきりに自分の体を確かめている。
「ん? ん? ナニモナイな。ハッタリだな」
怪物はそう言って、こっちに向かって来る。
「……ククク。遣レ。……オ前ナラ出来ル」
正直、この人が俺の何をしっているのか小一時間ほど問い詰めたい。遣れば出来るなんていうが、不可能な事だってある。それが、目の前の居る怪物だ。
「信ジロ……バベル。死ヌノハ……恐い」
死を覚悟した。死ぬことしか考えなかった。だけど、この人の言葉を聞いて、生きあがいてみたくなった。これは、俺が一度経験した死を、思い出したからかもしれない。
「『爆破調整』最大まで。サモン『爆虫(超小型)』」
小さく、とても頼りなさそうな爆虫は、覇気をまとっていた。頂点に立つ様な。王の様な……。
「やれ!」
爆虫は怪物に飛びかかる。
「虫のクセに、ナマイキだ!」
怪物は爆虫を叩きつぶそうとするが、攻撃は躱される。
「……gb」
そう言ったのは、誰だろう。その声は、確かに爆虫から聞こえた。
「エエイ! ウットオシイ」
怪物は背中に張り付いた爆虫を潰そうとするが、出来ない。そうこうしているうちに、爆虫は大爆発を引き起こした。
最大まで高めようが、絶対に今の俺では到達出来ないほどの爆発をみせた爆虫は、怪物だけを木っ端みじんにし、消えていった。
バベルが見せた力とはいったい!?




