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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第七章 清牙帝国編
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第九十九話 清牙、李、麻雀

 竜は速かった。俺が言えるのはそれだけだ。普通はまで、爆虫に乗っても三週間は掛かるはずだが、竜に乗ったら三日で着いた。


「どうっすか? 他の国と違って、いろいろ面白いものがありますよ」


 李に着いたらまず、鈴玉リンユーさんに都を案内してもらう事になった。


「どこ行きますか?」

「うーん。良い感じの宿と、ギルドの場所かな」

「了解したっす。宿はこっちですね」


 鈴玉さんの案内で来たのは観光区。そこの外れにある一件の宿だ。


「この宿は私が駆け出しの頃利用していた宿です。結構おすすめっすよ」


 今までの宿とは外見が違う。所謂いわゆるファンタジーな宿ではなく、中華風の宿屋。金の単位は一緒だが、清牙の宿は少し割高だ。金は一杯稼いでいるのでまったく問題ないが。


「ご飯も美味しいですし、部屋も綺麗っす。あまり知られていないから、人も少ない」

「俺はいいと思う」

「ボクも。桜ちゃんとニャルカは?」

「われなんでもいいー」

「せっしゃもー」


 なにかの店のショーウィンドウを覗いている桜とニャルカは投げやりに答える。


「じゃあ、宿はここにしようか」


 清牙で泊まる宿が、決定した。




 次の案内してもらったのは冒険者ギルド。エンシャル帝国やアルバス王国のようなファンタジーな冒険者ギルドではなく、清牙の文化に合わされたギルドというイメージを持つ。


「じゃあ、入るっす」


 鈴玉さんの後に続いて、ギルドに入る。中も、いままで見てきたギルドとは違い、清牙特有の内装だ。しかし、基本の内装は変わっていない。掲示板があるし、受付もある。


「他の国とは違うでしょ。まあ、それも清牙の文化っす」


 Bランクの依頼内容を見ると、超級危険地帯“竜の森”の近くまで行く依頼や、魔猿まざるの討伐。といった依頼があった。


「じゃあ、案内も終わったし、私はもう行くっす」

「あ、案内していただいてありがとうございました」

「あ、ありがとうございました」

「いいってこっとすよ。じゃあ!」


 鈴玉さんはそう言うと、ギルドを出て行った。なお、桜とニャルカはあたりをフラフラして、受付嬢さんや冒険者に絡んでいた。




 やる事もないので、エルと依頼の確認だけしておく。桜とニャルカは、他の冒険者に食べ物を奢ってもらっていた。


「面白い依頼があるね」

「だな。魔海に棲む狂烏賊バーサーククラーケンの討伐なんてAランクに匹敵するだろ」

「聞いてた通り、清牙帝国のギルドはそういうところが結構ゆるいから、気をつける必要があるらしいよ」


 明らかにAランクの分類される依頼や、逆にCランクに分類される依頼があり、清牙のギルドはランク設定がゆるいという事が良く分かる。


 ――む? その依頼はなんだ?


 ――これか?


 マモンが気にした依頼は、母の形見を取り返してほしいというもの。明らかにBランクの依頼ではないと思うのだが、それは清牙クオリティーだろうか。

 内容としては、悪党に奪われたネックレスを取り返してほしいとの事。どこにあるかは分からず、今どうなっているかも分からない。イラストが載っているが、見たことがないネックレスだ。


「へー。面白い依頼だね」


 形見を取り返すという依頼を見ていると、エルが横からひょっこりと現れる。


「んー。どこにあるか分からないんじゃ、無理だね。探す事に特化したユニークスキル持ちなら出来るかもしれないけど」

「ま、そうだよな」


 一通り依頼は確認したので、ギルドを出る。桜とニャルカはいつの間にか全員を巻き込んで宴会を開いていたので、帰ると一言言っておいた。


「じゃあ、ボクも観光してくる」

「ああ。依頼を受けるのは明日か明後日でいいよな?」

「うん! その方向で」


 エルは町並みに消えて行き、俺も宿に帰る事にした。



 ◇



 あの後、宿のベッドでゴロゴロしているとニャルカが帰ってきて、その夕方には桜が帰ってきた。なんでも、お金がほしかったからBランクの魔物を殴り殺して売ったらしい。Bランクの魔物に苦戦していた頃とは大違いで、俺は誇らしかった。ちゃくちゃくと超人(怪物)への道を登っていると確認する事が出来たのは、よかっただろう。


「バベル殿ー。エル殿が帰ってこないでござるな」


 ベッドでゴロゴロしていた桜が聞いてくる。


「そういえばそうだな」


 今は真夜中といってもいい時間帯。健康的なニャルカはエルのベッドで既に寝ている。


「遅いでござるねー」

「まあ、エルなら大丈夫だろ」


 エルならなんやかんや切り抜けてきそうだし。そこで会話が途切れる。数十分すると部屋の扉が開き、エルが入ってきた。


「ごめん。遅くなった」

「遅いでござる。なにしてたんでござるか?」

「歓楽街で賭け麻雀してた」

「「え!?」」


 エルがギャンブル? というかエルって麻雀出来たっけ?


「どうして麻雀を?」

「バベル君と別れて、歓楽街の方まで行ったんだけど、裏路地の方に雀荘を見つけたんだ。気になって入って、なし崩しに賭け麻雀する事になったの」

「へ、へー」


 裏路地の雀荘に入るなんて勇気あるな。俺なら出来ない。


 ――臆病。


 ――この小動物の様な臆病な心こそが大事。


「エル殿って麻雀出きるのでござるか?」

「ううん。ルール知らなかったからそこで覚えてきた。それと、はい」


 エルが渡してきたのは大量の金貨が入った袋と、ネックレス。


「凄い金だ」


 もうエルにギャンブルさせるだけで一生食ってけるんじゃないか?


「ん? このネックレスってさっき依頼で見たやつと同じ……」

「ああ。それは、相手を丸裸にしたときに一人が持ってたの」

「じゃあ、これで依頼達成?」

「そうだね。明日依頼受け手持ち主に返すといいよ」


 エルって超有能。食っちゃ寝するだけのどこぞの猫とは大違い。


「ふぁ。ボクも疲れてし、もう寝るね」


 エルはさっさと着替えて、ニャルカを胸に抱いて眠りに付いた。


「何が起こったか良く分からんが、エルはギャンブルが得意だったのが分かった」

第七章は日常編が少ないもよう。

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