12月25日 水曜日 午前・午後の部
久しぶりに友人と話す会話は何だか楽しい、1年生の頃は時々カフェに行ったり良くしたけど、それでも月に一回位だ。
夏実「聖歌?」
巴「そうそう閉会式前に体育館で奏が歌うの」
夏実「そう言えば奏さんって歌うの上手でしたよね」
留萌さんから奏さんと呼び方が変わっていた。
奏「上手かは分からないですけど、歌うのは好きですよ」
霧恵「謙遜は嫌味だぞ」
奏「あう…」
しょんぼりする奏、中々可愛らしいと夏実は不意に思ってしまう。
薙「そう言えば奏、クリスマスプレゼントは?」
唐突に話題を変えてくる薙。
夏実「プレゼント?プレゼント交換でもするんですか?」
巴「あー違う違う、何でも好きな男にあげる物みたいだよー」
夏実「えっ奏さん好きな人いるんですか!?」
奏「いっ居ますよ!」
薙「そうだよね、奏だって好きな人位は居るよ」
夏実「もしかして彼氏さんとか?」
奏「いえ、まだ、その…」
奏の表情を見る限り、気になる異性にプレゼントを渡したいとの事だった。
夏実「でも意外ですね、てっきりもう誰かと付き合っているのかと」
巴「付き合ってたら私達と廻ってないよ」
夏実「そっそうですよね、でも誘えば一緒に廻ってくれるんじゃ?」
霧恵「他クラスだし、其れにまともに話したことないみたいだし」
夏実「じゃあ一目惚れですか」
奏「一目惚れと言うか、なんと言うか」
薙「上手くいくといいね」
奏「うん…」
自信無さげに火照った顔をして頷いたのだった。
休憩となり孝之は春音を探すためにぷらぷらと校内を歩き回る。そしてちょくちょくブラックサンタを見掛け捕獲する。
孝之「何か休みなのに休みじゃない感じだな…」
ブラックサンタを生徒会に引き渡す孝之。
孝之「こんな状況の中、春ねぇに手伝ってもらうのは無理かな…」
最後のフィナーレを飾るのに孝之一人では無理だと判断し春音に協力してもらおうと思っていたが、ブラックサンタのせいで手伝ってもらうのは難しいと感じてきた。
本格的に春音が生徒会活動をするのは来年の本校生になってからではあるが、春音はもう既に先陣切って活動している。来年の生徒会長になるのでは等と言う噂も。
しかしこんな所で躓いている訳にはいかないが、何か機転でもあれば、そう思っていた。
花梨「千歳くん、ご苦労様です」
孝之「あっ副会長、お疲れさまです」
ブラックサンタを三人ほど連行してやって来た花梨。
孝之「そいつらは何をやらかしたんですか?」
花梨「クリスマスツリーの星でキャッチボールしているところを捕らえました」
孝之「本当何がやりたいんですかね…」
呆れる孝之に花梨は口元を緩めて言う。
花梨「さぁ、彼等に聞いても何も答えませんし、其れにしても千歳くんには何だか申し訳ありませんね」
孝之「何がです?」
花梨「生徒会でもないのに態々手伝ってもらってしまい、書記長の釧路さんはサボってばかりですし」
孝之「あ…ははは…」
苦笑いする孝之。
花梨「孝之くんもそろそろ休んだらどうですか?余り紺詰めすぎると最後までもちませんよ」
孝之「そうですね…」
少しだけブラックサンタの事も、自身のやろうとしていることも今だけ忘れる事にした。そして孝之はある人に連絡をとった。
1条館入口でその人物と待ち合わせする、その人物も今休憩時間の為暇している筈だ。
やがて待ち人がゆるりとした足どりでやって来た。
孝之「おす」
恭子「態々呼び出すなんて何かあったの?」
孝之「いや、別に…、ただ恭子とクリスマスパーティーを廻りたいなぁって」
恭子「………」
孝之「どうした?」
恭子「いや、別に…」
恭子は照れくさそうに孝之から目を反らした。
孝之「じゃっ行くか」
恭子「……うん」
孝之は右手を差し出し、恭子は左手でその手を握った。そして彼等は人混みの中を歩いて行くのだった。
チュロスを食べ歩いたり、アクセサリーを見たり、演劇を見たり、何かと楽しかった。
恭子「こうしてみると本当にクリスマスなのね」
孝之「何当たり前の事いってんだ」
恭子「最近忙しすぎてクリスマスって事忘れてたわよ」
孝之「あー、そういや父さんも忙しすぎて誕生日忘れた事あったらしいな」
恭子「うちのお父さんも」
恭子と孝之の父は今仕事でイギリスに居る、仕事の内容は魔法関係の研究である。
孝之「クリスマスも忘れてたりしねーかな」
恭子「向こうは此方と比べてクリスマスムード一色じゃない、クリスマス終わってもずーと年末まで。加伊は日本と同じで明日から正月ムードね」
孝之「クリスマスに御節の広告出るくらいだからな、其れに朝プレゼント貰ったら其れでクリスマスも終わりって感じがするけどな」
恭子「そう?」
孝之「まぁあくまで一般論だけど」
恭子「私は…夜位迄は続くわね、今日は家族でクリスマスパーティーがあるし」
孝之「そうなのか?ちょっと残念だな」
恭子「何で?」
孝之「俺も今日パーティーやるから良かったら来てもらおうかなって思ってたから」
恭子「そうね…来年は行くわ」
そんな他愛のない話で盛り上がった。
奏「うわああん!辛い!苦い!何これー!」
ロシアンケーキでものの見事にハズレケーキを当てた奏に巴達は笑った。
巴「ハハハ!ザマァ!」
霧恵「そんなに不味いのか?」
奏「うん、なんて例えたら良いか分かんないけど……、スッゴく不味い」
薙「何かちょっと気になるかな…」
そう言って薙は一口食べてみた。
薙「グフハハハハ…」
何故か笑う薙に皆興味深々に食べてみた。
巴「フハッ…」
霧恵「うっ!」
夏実「不味いですね…」
苦笑いする夏実、しかしその味は何処かで味わった事のある味である。
孝之「次何処行く?」
ぷらぷら歩き回り少し疲れた感がある孝之に恭子は何かを察してかこんな提案をしてきた。
恭子「だったら私達のクラスに行きましょ、一番落ち着くし」
孝之「そうだな、そうするか」
足どりを自分達のクラスに向けて歩き出した。
孝之「あっ俺トイレ行ってくるから先行ってて」
恭子「分かった、教室で待ってるから」
そう言って孝之はトイレに向かい用をたしていると隣から声をかけられた。
「生徒会及び臨時風紀委員の活躍によりブラックサンタはほぼ壊滅状態となっている。流石は我が同志千歳孝之よ」
孝之「薄野か…、お前今迄何処に」
薄野「ちょっとした金儲けをな」
孝之「何してたんだよ」
薄野「裏カジノだ!こういうイベント時は良く客が入る。そんなことより千歳孝之よ」
孝之「裏カジノはそんなことか?」
薄野「我々ノエルの悪夢はこれで終わりではないぞ」
孝之「お前まだやるつもりか?てかブラックサンタは全員どっかで拘束されてたんじゃないか」
薄野「本当の悪夢は此れからだ」
そう言って薄野は立ち去った。
孝之「彼奴……相変わらずの馬鹿だなぁ」
クリスマスパーティーももう終盤、ブラックサンタの居ない平穏なクリスマスパーティーを迎えることが出来る。
そう思っていた……。
先に教室に戻っていた恭子は西神楽からサービスで出された暖かいミルクティーを飲んで一息ついていた。
西神楽「楽しかったぁ?」
西神楽はニヤニヤしながら聞く。恭子は僅かに微笑んで言う。
恭子「ええ、とっても……」
幸せに満ち足りた表情だった。
東神楽「でプレゼントは渡さなかったの?」
東神楽迄やって来た。
恭子「まぁプレゼントは最後に渡そうかなって…」
東神楽「渡せれるの?」
恭子「渡すわよ絶対に…」
朝の頃とは違いそこに決意のようなものが見えた。
恭子の席から離れて座っていた奏達、恭子が居ることには気が付いていないようだった。
夏実「結構居ましたね」
巴「そうだねぇ、何か居心地が良いって言うか」
薙「昨日よりお客さん居ないですね」
夏実「まぁノルマはクリアしてますし、其れに首謀者が消えちゃいましたし」
そろそろ出ようか等と思っていたのだが奏が何処と無くそわそわしている。
奏「あの…もうちょっとだけ居てもいいかな…?」
巴「ん?まぁでも結構長居してるし」
夏実「何か用でもあるんですか?」
奏「うっうん…」
何か言いたげにもじもじと顔を赤らめて言う。
其れに薙が勘づいた。
薙「もしかして……プレゼント渡したいとか?」
奏はコクりと頷いた。それに夏実以外は気が付いた。
巴「へぇ~、じゃあ待とうかぁ~」
巴、薙、霧恵はスッゴくニヤニヤして言う。
夏実は良く分からず首を傾げた。しかし夏実はふと思った。
夏実「あれ?でも留萌さんこの後聖歌やるんですよね?時間大丈夫ですか?」
奏「えっ?」
改めて時間を見てみると、もう孝之を待っている余裕が無いくらいの時間だった。
奏「嘘っ!?」
巴「あー、本当だ」
奏「どっどどどどどどうしよう!?」
慌てる奏に霧恵が冷静に言った。
霧恵「歌い終わったら渡せば良いじゃん」
奏「そっそうだよね!うん!」
そして奏はふと思い出した。
奏「……プレゼント教室に忘れた…」
取りに行く時間もない薙は気をつかせて言った。
薙「大丈夫、私が取ってきてあげるから」
奏「本当に!鞄の中にラッピングしてる袋があるから!」
薙「分かった、頑張ってね」
奏「うん!ありがとう!」
そう言って奏はそそくさ出ていった。
巴「健気だねぇ」
霧恵「まっ貰ってもらえなかったら慰めてやるか」
薙「大丈夫でしょ…多分」
微笑ましく眺める三人に夏実は少し思う事があった。
夏実「皆さん優しいですね」
巴「まぁ、ぶっちゃけ正直言うと奏にはさっさと彼氏つくってほしいんだよね、私達が彼氏出来ないっつーの」
霧恵「同感」
薙「奏が居ると全部とられるからねぇ」
夏実「あ、あっはははは……」
苦笑いする夏実、だが、巴は話を続ける。
巴「でもね、何かね…、あの子は一途なんだよね」
霧恵「あの惚れた顔……、見てて面白いし」
薙「可愛いじゃん、応援したくなる」
巴「他の男になびかず、ただ一途に一人の男を愛する……、臭い台詞だけど奏には正にそんな感じだよね。だから、今は頑張って欲しいな」
霧恵「まっ難しいんじゃないか?今迄あんな鈍感な男見たことがないし、奏の得意魔法も全く効いてないし」
薙「だから応援したくなるよね」
夏実は良く分からなかったが奏が愛されてることは理解した。
奏が出ていったその何分後かに孝之が戻ってきた。孝之は夏実の姿を捕らえたが特に何の行動もせずそのまま恭子が座っていた席に向かった。
恭子「あら、遅かったわね」
孝之「んまぁな……、ちょっと薄野と鉢合わせした」
恭子「何か言ってた?」
孝之「ノエルの悪夢はこれで終わりではないぞだってよ」
恭子「まだ何かやるつもりなのかしら」
孝之「さぁ…でもブラックサンタはほぼほぼ捕まえたんだろ?」
恭子「どうかしらね、あくまで私達が把握してるだけの人数は捕まえたって話だからね、それに薄野はノエルの悪夢って言ったんでしょ、ブラックサンタが何かをやるとは言ってないわ」
孝之「と言うことは自ら動くつもりか?」
恭子「かもしれないわね、でももうクリスマスパーティーも終わるわ、留萌さんが聖歌を唄って後は閉会式だけだしね」
孝之「だよな……、そういや聖歌見に行く?確かあれって強制参加じゃないんだろ?」
恭子「ええ、どうするの?」
孝之「かったるい……だろ」
見透かされたように言われた。
恭子「何かムカつくわね」
孝之「何でだよ、実際そう思っただろ」
恭子「思ったわよ、ええ思いましたよ!」
孝之「恭子がなに考えてるかぐらい分かるよ」
恭子「そんな訳無いでしょ………分かってたらもっと進展してるわよ」
孝之「ん?何?」
恭子「何でもないわよ!」
後半何を言っているか分からなかったので聞き返したが答えてはくれなかった。
して暫く経った後、教室に薄野と渓が戻ってきた。
薄野「遅くなったな!」
渓「おいーす!」
東神楽「今迄何処でサボってたのかしら?」
薄野「唐突に失礼だな、これでもこのクラスに貢献する働きをしていたのだがなぁ」
帰って来て早々東神楽がいちゃもんをつける。
東神楽「で何をしてくれたの?」
薄野「二条館、三条館にて販売所を設立しケーキを売っていた!」
渓「以外と売れたぜぃ」
そう言って二人は売上金を東神楽に渡した。
東神楽「……まぁまぁね」
そう言いながらも東神楽は何処と無く満足そうだった。
渓「でさでさ本題なんだけどさ!今から留萌さんのステージ見に行こうぜ!」
西神楽「何かやるの?」
東神楽「聖歌合唱ね、クリスマスらしいけど面白味はないわよ」
西神楽「そうなの?」
東神楽「ええ、それに会場はもう男子生徒でめちゃくちゃね」
西神楽「そうなんだ…、なら行かなーい」
薄野「あいや待たれよ!」
唐突に叫び出す薄野に孝之達は振り向いてしまった。
薄野「確かに聖歌等聞いても何の面白味もない、なら何故こうも男子達が見に来るのか…それは!」
渓「留萌さんを一目見たいからだ!」
薄野「その腐った理由だけで見に行く男子を冷ややかな視線を贈ってやるのも中々趣があるだろ」
恭子「いや無いわよ」
東神楽「なるほど合法的に冷たい視線が出来るわけね」
恭子「誰得よ」
西神楽「それなら面白そう!」
恭子「えっ何処が!」
渓「なら見に行こうぜ!ほら孝之達も行こうぜ」
そう言って渓は離れた席に座っている孝之と恭子に声をかけた。
孝之「えっ?いや行かないし」
薄野「お前は行くべきだ!!」
何故か叱咤される。
孝之「いや、だってかったるい」
恭子「そうねかったるいわね」
めんどくさそうに言う二人に薄野は言う。
薄野「まぁ無理にとは言わんが……後悔するぞ」
ニヤリと不敵に笑みを浮かべる薄野に孝之と恭子は何かを感じた。そしてあの言葉を思い出した。
『ノエルの悪夢はこれで終わりではないぞ』
恭子「しょうがないわね…」
孝之「行くか」
東神楽「急にやる気出してきたわね」
西神楽「それじゃイコイコー!」
そう言って五人は会場となる体育館に向かっていったのだった。
ブラックサンタが収容されているレンガ館地下室に一人の女子生徒が扉の前までやって来た。
生徒会室からくすねてきた地下室の鍵で扉を開けて中にいたブラックサンタ達に言った。
「最後のフィナーレをどう面白くしてくれるのか……楽しませてくれたまえ」
祭り好きは薄野だけじゃない、生徒会役員の中において面白さを追い求める女、釧路雅が優雅に扇子を扇いでブラックサンタが解き放たれているのを眺めるのであった。




