追跡5
あらすじを更新しました。
70000PV。
10000ユニークになりました。
お読みいただきありがとうございます
前日、色々筋肉痛やら料理やらで時間がかかってしまい、寄り道しすぎたことを少し反省した。
だから、今日は雑事を手早く済ませて、進むことになった。
隠れ里からたいして距離が離れていない気がする。
まあ、途中でモンスターに襲われる事を考えなければの話しだが、急いで戻れば一日で隠れ里に帰還出来る距離である。
それにこの二日で少しは旅に慣れてきた隠れ里の六人。
なので、ペースを上げて進む事にした。
陣形は初日に決めた並びで行く。
斥候を先行させて、次に前衛、中衛、後衛の順番で行く。
それから川の上流を目指して進むこと6時間ほどで、ようやく俺達がストームドラゴンに襲撃された渓谷の近くまで戻ってくる事が出来た。
途中で二度ほどモンスターの襲撃があったが、初日に比べたら、戦闘は随分マシになっていた。
まあ、俺とウサ正宗を中心にして撃退したから、隠れ里の六人はいうほど活躍していないのだが、それでも危なげな場面が少なくなったのだ。
ある程度連携して動いたのと、モンスターから後衛をしっかりと守りきり、かつ無理せず攻撃しない様にしたのが良かったのだろう。
俺とウサ正宗ならグレイウルフの群れやグレートアウルごときならばサクサク仕留めていけるから、隠れ里の6人が守りを固めていれば、後は俺らが処理していったのだ。
渓谷に入ると一つ大きな問題があった。
それは崖を登る必要があるという事だ。
俺が意識を失ったのは、滝から落下したせいなのだが、そもそも俺達がストームドラゴンに襲撃された野営場所はそれなりに高所にあるのだ。
だから、どうにかして上に登って行く必要があるのだが、これが俺には難しい。
今までロッククライミングなんてした事ないから、単純に怖いのである。
ラビッター族であるウサ正宗達も、種族的特長として腕力は低めだし小さい手の平である。だから、崖登りに適していないので厳しいハズなのだが、さらっとこういわれた。
「えっ、竜司殿は崖登りが出来ないのですか?
我々は出来ますよ。
ウサ正宗教官が訓練の一環として取り入れていましたので。」
「そうっすよ。
崖登りとかロッククライミングとかいってたっす。
ひたすら上り下りするあの苦行は思い出したくないっす。」
なんとさり気無くこの面子の中で、ロッククライミングをした事が無いのは俺だけのようである。
マジっすか。
ゲーム内じゃあオトモの移動手段は穴掘り瞬間移動がメインだったのに、そんな器用な真似が出来るようになったんかい。
「えーと、みんなマジであの垂直に近い崖を登れるワケ?
俺は普通に怖いんだが。」
みんな普通に頷いた。
高さ30メートル以上はありそーな崖である。
一応足場になりそうな段差などが所々にあるのだが、唯の岩で出来た壁みたいなものである。
「これ以外のルートを取るのは非常に時間がかかりそうです。
ですので、ここを登りましょう。
不安がある様でしたら、ご主人様は最後に登ってきてください。」
そして、この絶壁のような場所を登って行くはめになった。
一番始めにウサ正宗が登って行き、所々にアンカーを打ち付けていく。足場や落下したときの命綱の為だ。そんな作業をしながらウサ正宗は十分くらいで崖の頂上にたどり着いた。
はえーーーー。
続いてジローを先頭にして、スルスルと崖を登って行く。
命綱を着けているとはいえ、ウサ正宗ほど素早くは無い。だが、ジローは堅実に足場を確かめながら登っていった。
ジローに続いてマタタビ、テムジン、ミコ、コゲトラ、ウールの順番で登っていった。
スピードに個人差はあれど、みんな頂上まで独力で上りきったのである。
「これは、行くしかないのか。」
仕方ないから、俺もみんなが登り終えたところで覚悟を決めた。
足場になる場所と手で掴む場所が崩れないか、慎重に確かめながら一歩づつ崖を登って行く。
崖の頂上では、俺が崖をある程度上がる度に命綱を木に巻きつけて固定し直して、万が一にも落下しても平気な様にしている。
体重差が有るから、勢い良く落ちるとラビッター族7人ががりでも、支えられない可能性があるからだ。
そんなデンジャーなロッククライミングを続ける俺。
ビューーーー
時折強風が吹き付ける。
吹き飛ばされる程ではないのだが、ここが高所であるという事を殊更に意識させられる。
「はっ、早く登りきらなくてはヤバイ。」
そもそも、ラビッター族と俺では手足の長さが違うから、ベストな足場や掴むポイントが違うんだよ。だから、余計に時間がかかる。
焦れば手に無意識の内に力が入り、無駄に体力を消耗していく。
しかし、途中で休む訳にもいかない。
崖の頂上まで、まだ残り半分くらいの距離が残っているのだが、腰を下ろして休める場所なんてないのだ。
崖にしがみ付きながら休憩するなんて、そんな高度な事は俺には不可能である。
「仕方有りません。
ミコ、スタミナ無尽蔵の演奏をしてください。」
「わっ、分かりました。
頑張って演奏します!」
そして辺りに響き渡る笛の音色。
「おお、そうか。その手があったか。
グッジョブだ、ミコ!
これならいけるぞ。」
スタミナ無尽蔵の効果で、俺の疲れは吹き飛ばされた。
恐怖心はまだ有るのだが、それでも疲れが無くなったのはデカイ。
しっかりと掴む場所や足場を確認しながら、ペースを上げて登っていった。
頂上まで後5メートルも無い途中の所で、グレートアウルとロックバードが二頭ずつ遠くから飛来してきた。
その内の二頭がロッククライミング中の俺に襲いかかって来たのは、冷や汗ものであった。
先ほどの演奏に引かれてやってきたのであろう。
だが俺に襲いかかって来るのは勘弁してくれ。
俺が不自由な状態でも、崖の頂上からウサ正宗が投げナイフで迎撃したり、コゲトラが弓矢で牽制していてくれたお陰で、なんとか登り切る事が出来た。
そこから、俺はPDSからボウガンを取り出して、お返しとばかりにモンスターに狙いを付けて、残ったモンスターを片付けていった。
崖を登る途中に俺に襲いかかって来たグレートアウルは、ウサ正宗の投げナイフの餌食となり、崖下に落下してしまったので回収は諦めた。
残りのグレートアウルとロックバードはちゃんと回収できる位置に打ち落としたので、トドメを刺してからPDSに収納した。
「演奏の音色に誘われて更にモンスターが集まってくる可能性が高い。
俺の所為ですまんが、直ぐに移動しよう。」
それからどんどん渓谷を進んでいった。
途中の道でまた崖をロッククライミングをする必要があったので、マジで泣きそうになったわ。今回は太いツタが崖の頂上から垂れ下がっていたので、足場になる場所が多く、登り易かった。それに今度は演奏無しで登り切ったのでモンスターに襲われなかった。
そして、ようやく俺達はストームドラゴンに襲撃された野営場所付近まで戻る事が出来た。
野営していた場所は、ストームドラゴンのブレスで崩れ落ちているので、そこまで行く必要は無い。
だから、ここからが本番という所か。
前回襲撃された時間は夜間とはいえ、ここがストームドラゴンの縄張りというか、勢力圏内であるのは確かである。
何時襲われてもおかしくない。
ここからは特に気を引き締めて行かなくてはならない。
「皆、ここが前回ストームドラゴンに襲撃された野営場所に近いポイントだ。
異変を感じたり、ストームドラゴンの気配を感じたりしたら、直ぐに知らせてくれ。」
「分かりました。
皆、気をつけていきましょう!!」
「「「了解です!!」」」
それからは陣形を少し変えた。
斥候を前に出すのは変わらないのだが、その次の先頭に俺が入り、他のメンバーは俺の後ろについていく三角形の陣形にしたのである。
こうしたのは、ストームドラゴンからの遠距離のブレスを警戒したからである。
不意打ちの風のブレスの一撃で、全滅する可能性もあるからだ。
重い全身金属鎧でロッククライミングなんてシャレにならないから、ここに辿り着くまで俺の防具はブラックウルフ装備であった。だが、俺はここからシルバーナイト装備に装備変更した。この装備なら即死する事はないだろうが、他のメンツはそうはいかない。
だから、咄嗟の時にアイギスで守れる様にする為に、ある程度密集した陣形にしているのである。
そうして、渓谷を奥に向かって進んでいく。
気分的にはナイアガラの滝とか世界遺産の秘境をくぐり抜けてきた感じだ。
相変わらず不安が満載の丸太橋を渡っていく事になった。幾つか橋が架かっていない場所もあった。丸太橋から転落したら、40~60メートルくらいある高さから川に落下する事になる。二度と落ちたくないものである。
やはり、丸太橋はモンスターの攻撃なんかで落下してしまうのであろうか。
そういう場合は頑張って予備の丸太を使い、橋を固定する作業を一応してから渡った。
それ以外の現実的な移動手段はロープアクションしかないからだ。ロープを伝い向こう岸に渡るのは勘弁して欲しいよ。ウサ正宗は難なく渡れるが、俺にはキツイ。
しかも、チンタラしてるとモンスターの襲撃される可能性もあるし。
そして俺達は苦労して渓谷を抜ける事が出来た。
ようやくストームドラゴンの巣があると思われる、山に入っていったのである。
ここまで辿り着くまでに、休憩を小まめに取っていたのだが、疲労もそれなりである。
隠れ里の六人も、疲労の色が濃い。
「今日はここまでにしよう。
みんな渓谷を抜けるのにかなり体力を消耗した。
これから本番のストームドラゴンの討伐があるんだぜ。
万全の体調で挑まなくちゃ、勝ち目が低くなるだろ。」
「そうですね。
今日はここまでにして野営場所を探しましょう。
夜間の襲撃の可能性があるので、火を使うのは厳禁です。」
それから野営に適した場所を見つけて、トラップを仕掛ける。
そしてPDSから手軽に食べられる食べ物を取り出して夕飯にする。
みんな緊張しているのか、静かな夕飯であった。
疲れもあったのでそうそうに不寝番を決めて、交代で休む事にした。
毛布を被って目を閉じると、些細な事が気になりだした。
この山に入ってから、何だか生き物の気配が静かすぎるのが気になるのだ。
渓谷や隠れ里付近の夜中でも、それなりに虫の音色やフクロウの様な鳴き声なんかがあった。
それはこの季節なら普通の事だと思っていた。
それがこの山に入ってからまるで無いのだ。生き物が全滅してしまったかのように静まり返っている。
風が吹くと木々のざわめきが聞こえるくらいである。
そうして静かな夜は過ぎていった。




