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隠れ里1

 ボチャーーーーーーーン!!!!!


 「ごぼっ、がぼぼ。」


 俺は川に落下した衝撃で頭が朦朧もうろうとしながらも、必死に泳ごうともがく。

 まだ真夜中である為に、川の水中はまるでなにも見えなかった。

 なんとか重いシルバーナイト装備を着込みながら立ち泳ぎをして、水面から顔を出す。

 そして頭上を見上げると、俺たちが野営していた場所の崩れた土砂や岩等が落ちてきた。


 「痛で、っでヤバ!!」


 小ぶりな岩とか落ちてきていたのが体に当たっていたが、シルバーナイト装備の防御力の前にはまるでダメージにはならなかった。

 だが、大量の土砂により生き埋めになるのを防ぐ為にアイギスを頭上に展開し続ける。

 それでなんとか生き埋めとか大きな岩とかが、俺に直撃するのは避けることが出来た。


 しかし、この装備ではまるで泳ぐのに適していない。

 川の水は非常に冷たく、更に重い金属鎧で泳ぐのは、とんでもない体力を消耗した。


 「ウサ正宗!!

 無事か!!!」


 なんとか立ち泳ぎをしながらウサ正宗に呼びかけるが、返答は無い。

 川の流れはそれなりに速い為、どんどん落下した地点から流されていく。

 流石にこの状況ではストームドラゴンも俺の居場所を見失ったようである。

 俺はなんとか自分の付近に浮いていた木にしがみ付く事で、溺れるのを避けた。

 俺の胴まわり以上はある木なので、そうやすやすと沈まないだろう。


 それから冷たい川を一時間以上に渡り、流され続けた。


 ゴゴゴゴゴッ


 「ん?

 妙に水の音が大きい?

 まさか・・・」


 暗くてよく分からないが、川に流されて行くと段々大きな水の音がする様になってきた。

 そして、気がつくと、俺は空中に投げ出されていた。


 「うおおおおおぉぉぉーーーーーー!!!」


 どうやら、俺は滝の上から真っ逆さまになった様だ。

 ボチャーーーーン!!

 本日の二度目の落下に、俺は意識を失っていた。









 だんだん意識が戻ってくると、なんだか猛烈に体調が悪い。

 まるで忘年会でしこたま酒を飲まされてしまい、次の日の二日酔いにでもなったんじゃね、って以上に俺の人生で一番悪いかも。

 俺が目を開けると、知らないラビッター族が寝ている俺の傍にいた。

 そのラビッター族は瞳が青色、毛皮の色が茶色で、緑色のベストを着ていた。

 ウサ正宗と比べると、全体的になんだか毛並みがあまり良くない感じがした。

 そのラビッター族は俺が起きた事に気がつくと、バタバタと直ぐに部屋から出て行った。

 改めて部屋の中を確認してみると、天井が高くて囲炉裏のようなものが部屋の真ん中にあった。

 室内は木造の作りで床は木の板だが、なんというか古い日本家屋のような作りであった。


 「ご主人様!!

 お目覚めになられたのですね!!」


 そして数分後に、ウサ正宗が慌てた様子で俺の居る部屋に入ってきた。


 「ああ、おはよう。

 まだ頭がふらつくし、なんだか体がだるくて、調子が最悪な感じだが、一応お互いに無事で良かった。」

 「いえ、本当に心配しました。

 あのストームドラゴンの夜襲から、もう四日も経っているのですよ。

 何時まで経ってもお目覚めになられないので、もう駄目かと思ってしまいました。」

 「えっ?

 あれから四日も時間が過ぎたってマジか?

 どうりで体の調子も悪い訳だ。」


 それから、ウサ正宗がどうやってこの場所に来たのか経緯を教えてくれた。

 俺が滝つぼにダイブするのをウサ正宗は見ていたというか、聞いていたらしい。

 叫び声で俺が空中ダイブしているのに気づいて、ウサ正宗は自分が流されていた川の先に滝があって、自分も同じ空中ダイブするはめになりかねないと思い、どうにか渓谷の川の岸まで泳いで崖にしがみついたらしい。

 どうやら、あの落ちた川は両サイドの岸が断崖絶壁になっているようだ。その間に川が流れているらしい。

 それから、どうにか迂回して滝つぼ付近まで降りて、俺を捜索してくれたとか。

 全身金属鎧であった為に、あまり流されなかったので発見するのは早かったそうだ。

 見付かった俺は相当な衝撃がかかっていて、どうやら気絶していたので溺死は避けられたらしい。

 だが、それでも水を大量に飲んでいた為、水を吐き出させてどうにか俺の呼吸も復活。

 その後は現在地が不明な為に、朝まで焚き火をしながら待っていたとか。

 焚き火をしたのはストームドラゴンに発見される危険性よりも、川の冷たい水で低体温になっていた俺がかなり危険な状態だったようだ。

 鎧を脱がせて温める事にしたとか。

 それから朝になると、その焚き火を遠くから発見して、様子を見に来ていたラビッター族の里の者に保護されて、この場所まで連れてきてもらったようだ。


 「そうだったのか。

 ウサ正宗のお陰で命拾いをしたか。

 ありがとな。」

 「いえ。

 お役に立てて光栄です。

 今回はかなり危ないところでした。

 出来れば今後この様な事態にならないようにしましょう。」

 「そうだな。

 流石に俺らが夜中にモンスターの奇襲を受けるのは初めてでは無かったが、油断が無いとは言えなかった。

 一歩間違えば死ぬところだった事を考えるともう少し慎重に行動するべきだったか。」


 ストームドラゴンがどうやって俺らの位置を見つけたのか、確定的には分かっていないが、今一番怪しいのは焚き火を使用した事ぐらいだ。

 それでも、木々の間で明かりはそんなに目立たないと思っていたのだ敗因か。


 まあ、他にもあの地形での戦闘はストームドラゴンに有利すぎた。

 事前に仕掛けたトラップは数が少なかった上に、最初の先制攻撃のブレスで潰された。

 暗いからこちらは狙いが付けづらいし、そんなに俺らが走り回って逃げられるほどの土地の大きさも無い。

 しかも、相手は上空から降りて来ない。まあ降りてきて自由にストームドラゴンが動けるほどの地形じゃあないから必然的にそうなるか。

 

 「ウサ正宗。

 あの後、ストームドラゴンはどうなったと思う?」

 「私も川に転落してしまったので、確実にどうなったのかは分かりません。

 ですが、最後に手痛い一撃を加えたので、当分の間はディナントの町まで飛んでは行けないでしょう。」

 「そうだよな。

 とりあえずは引き分けで満足しておくか。」

 「まだ体調も完全に戻っていないご様子です。

 今は安静になさってください。」

 「分かったよ。」


 それから軽く食事を取ると、再び睡眠をとった。


 俺はそれから更に三日程体調が元に戻らなかったが、それからはなんとか動けるようになっていた。

 寝ている間にかなり衰弱していたようだ。

 動けるようになった俺は部屋から出て、ラビッター族の里を見て回る事になった。


 「なあ、ウサ正宗。

 なんだか全体的に里の雰囲気があまり良くない気がするが。」

 「それは仕方ありません。

 この里は、人間から逃げてきた者達の末裔ですから。

 ご主人様にはあまり好意的では無いかも知れませんが、ご容赦ください。」

 「そっか。

 そういえば、絶滅危惧種扱いになっているから金になるんだっけか。

 町でもよくウサ正宗が襲われたもんな。」

 「はい、ご主人様。

 彼らには、私ほどの戦闘力は有りません。

 ですから、こちらを警戒しているのでしょう。」


 それから遠巻きに見ているこの里のラビッター族達の視線を感じながらも、里を見て回った。

 人口は300人にも満たない小さな里のようだ。

 上を見上げると空が見えるが、里の周囲の辺りを岩壁に囲まれている状態だ。

 里の出入り口も非常に小さく作られていて、中腰になって歩くか、ホフク前進に近い形でないと俺は入れないくらいだ。

 その小さい出入り口もラビッター族には適しているのであろう。

 イメージ的には、狭い洞窟を抜けると吹き抜けになっている広い空間に出た感じかな。

 この里には畑が多く作られていて、かなりの面積を誇る。そこには様々な種類の作物が植えられていた。

 枝豆のようなものや、小麦とか、大豆、トマトのような赤い実のなんかも植えてあった。

 そこではせっせと畑仕事をするラビッター族が結構な数が居た。

 ゲーム内では、力の実とか量産しまくったなーーー。

 あっ、蜂の巣箱も見っけ。

 

 「ウサ正宗。

 この里にいるラビッター族はなんだか元気が無いというか、俺という人間が居る理由以外にも、彼らの様子が少しおかしい気がするんだが。」

 「そうですね、後は彼らの食料が危機的状況になっているのもありますね。」

 「はっ?

 こんなに立派な畑があるのに?」

 「彼らはこの地で自給自足の生活をしています。

 人間との関わりを断っている為に、交易等もしていないのです。

 なので、彼らにとってこの地でまかなえないものは高級品になります。

 特に塩はこの里では手に入りづらい様ですね。

 この地は海からも遠く、岩塩の類も以前は山から取れていたのですが、モンスターの所為で発掘しづらくなってしまったとか。」


 ああ、そりゃ人間から隠れていたら、活発に交易とか取り引きなんて出来ないよな。


 「そうか。

 なら、まずは手持ちの塩を放出するか。」

 「よろしいのですか?

 彼らには対価になるような物がないかもしれませんよ。」

 「気にするな。

 助けてもらった恩返しも含めているしな。

 それに、この里の問題はこれだけじゃなさそうだ。」


 よく観察してみると、この里のラビッター族は皆毛並みが悪い気がする。

 それに着ているベストや服なんかは非常に年季が入っているし、農具もボロボロだ。

 ピッケルなんか刃こぼれしまくりだ。

 これは相当追い込まれている気がする。


 まずは俺達はこのラビッター族の里を束ねる長老に会いに行く事にした。 

 


お読みいただきありがとうございます。


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